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新コンペの公平性

まず昨日は地下1階の一致度の高さについて書いたが、本日は両案の類似性を端的に表していると言える上中段スタンドの重ね合せを再掲する。

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一見しただけでソックリだと分かるが、更に考察してみるとこの一致により、座席設計のみならず、付随する手すりや柵、更には例えば誘導灯の配置・配線などの細々した情報まで使えることになる。多くの情報を流用するためには出来るだけ設計を一致させるほうが有利だから、通路の数や形状まで同じにしていることが推察される。
このようにして設計流用効果を考えてみると、当方直感的には設計期間として少なくとも半年、流用度合いによってはそれ以上も短縮効果が有りえるのではないか(屋根部は新規なのでその分の設計期間は別)。ザハ案の検討済み情報の使用は、非常に大きい影響を生むことになる。

これらの情報が何処に帰属するかと考えれば、ZHA側も著作権保有するとしても設計情報の一部となり、全体は設計費用を支払ったJSCが第一義の帰属先になると想定できる。つまりJSCの保有情報だが、それが片方のチームだけに使用されてコンペに応募されたことになる。

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情報ルートとしては、JSCの保有情報(ザハ案)が結果的にJSCに戻るだけ(笑)とはいえ、コンペの基本である「公平性」が著しく阻害されていることになる。なお、JSCは自らの責任にもなるから、この情報の流れに直接加担していることはないと推測(後日追記:1月14日テレグラフ紙報道で可能性出てきている)。
結果的に、どうしてこの様な事になったのか不思議であり、出来レースとしても想像を超えている。だが単に予想外だけでなく、実際にも大きな問題となる。新国立競技場では解体工事の入札で以下記事のような事態が起きている。
<二〇二〇年東京五輪パラリンピックの主会場として建て替えられる国立競技場(東京都新宿区)の解体工事の入札は「公正性を欠く手続きがあった」(内閣府の政府調達苦情検討委員会)として、十一月にやり直す異例の事態となった。>
この時は失格理由を明確にしなかったようだが、新コンペでは「公平性阻害」がこれまで示してきたように図面で確実に証明可能。(詳細な制度的仕組みは未把握だが)上記の「政府調達苦情検討委員会」に異議申し立てなどすれば、当選無効となって次点繰上げで竹中チーム当選になることが想定される。コンペやり直しの可能性は有ったとしても、実質的に再応募可能なのは詳細提案書作成済みの竹中チームだけになるだろう。

このように竹中チームが訴えたら容易に逆転受注できるにも関わらず、そのような動きは無いようである。ここで重要な事は、ZHAの調査結果やそれによって類似性指摘や賠償請求・提訴などが行われるかどうかは二義的な問題ということ。流用はZHA側調査によらずとも明白であり、竹中チームが提起するだけで審査結果をひっくり返せる。
しかし、伊東氏は「ザハから訴えられるかも」とは言っているが、自らや竹中チームの動きについては全く言及なし。
伊東豊雄氏が都内の事務所で会見。A案が、見直し前のデザインを手掛けた英国の女性建築家ザハ・ハディド氏に近いことを指摘し「訴えられるかもしれないですよ」と話した。 >
もしかすると伊東氏はザハ案の詳細をご存じないかも知れないが、竹中や日本設計は旧計画に参加しており充分に把握していると見てよい。それで提訴の構えも全く見せないのだから、「出来レース」の証明ということにもなってくる。ただし、前述のようにザハ案流用でA案の設計完成度は想像以上に高く、逆に見るとB案は技術提案書ではA案を多くの項目で上回る良いものを出せたが、実際の設計完成度を考慮したらA案に遠く及ばないかも知れない(工期面で27点差どころではないだろう)B案の次点繰上げも相当なリスク含みということになってくる。非常に難しい状況。

結局のところ、政府も含めて各立場で色々な事情は有るだろうが、やはり新コンペの仕掛けには無理があったのではないか。ザハ案が続行困難という事態が明らかになった時点で国民に率直に事情を説明し、ザハ案からキールアーチを外して流用することも明言した上で、ラグビーW杯に間に合わせるという目標で一丸となって取り組めなかったのだろうか。ただ、ここまで進んでしまったからには、今後どのように決着が付けられるのだろうか。少なくともザハ案の白紙化経緯を今からでも説明すると状況は変わると思う。
またこれだけ明白な問題に対して、ZHA側調査を待つ必要もないのだからマスコミ等がどう報道するかも重要だが、このままスルーを続けるのだろうか。政府側がザハ案白紙化経緯公表の踏ん切りが付かないなら、マスコミが背中を押したり、道を付けることを考えて頂きたい。

以上