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評価すべき内容と審査体制

まず表題の件の前に、昨日書いた当方仮説としてのベスト体制案は「ドリームJV」であるが、それについて再度整理。以前にも述べたが、両社はそれぞれ次のような意向を持っていると考えられる。
 ・大成…自社が手がけた旧国立競技場の改築工事を何としても取りたい、社長を先頭に強い意欲を示している
 ・竹中…日本最大になるスタジアムの屋根工事は是非取りたい(特に開閉屋根の時は他社に渡したくなかった)

仕事を遂行して成果を出す力を「仕事力」とすれば、”仕事力=能力x意欲”と思っている。技術提案内容は両社とも水準に達しているとすれば、ここで意欲の強い大成を落とすのは得策とは思えない。また開閉屋根が無くなった仕様では、旧計画においてスタンド工区で準備を進めてきていた大成にアドバンテージがある。よってどちらかを選ぶなら大成にすべきと思う。
しかし、屋根に関する竹中の能力とやる気も落としてしまうのはもったいない。開閉式では無いが、観客席上空部分だけでも規模は大きく屋根の技術は重要。A・B案どちらを選ぶにせよ、両社でJVを組むのがベスト。オールジャパンでやって貰いたいプロジェクトでベストの選択が出来ないだろうか。やることが決まったら一丸となって協力し合える日本人の特性を活かせないか。

なお、先日も書いたが工費縮減が更に出来れば、座席空調復活は考えてみるべきと思う。どれ位効果があるか体験していないから本来は何とも言えないのだが、日本の夏を考えると考慮必要な設備だろう。「アスリートファースト」が新計画の基本コンセプトだが、お金を払って見に来てくれるのは観客。個人的には「アスリートも観客もファースト」で考えるべきと思っていて、観客席の快適さは重要項目。座席空調のサンプル装置はあるのだろうか。無ければ早急に作ってでも効果を検証すべきではないか。最後に総理の一存で決めるような事柄では無かった。旧計画の開閉屋根もそうだったが、技術と効果の評価を事前に行ってから仕様を決めるという思考が根本的に欠けている。施設を利用する人の事を考えて、事前評価の充実は今後も考えるべき課題と思う。

ここで表題の件になるが、利用者からの評価にも繋がる運営面からの検証ということで、既に見られた方もおられると思うが以下のような記事が出ていた。

内容は色々示唆に富んでいる。ただ本日は<私はあまり外観には興味がありません。外観のデザイン性を重視するあまり、施設内部の空間を犠牲にして、狭いものにしたり、使い辛い構造にしたりすることが、往々にしてあるからです。個人的には何ら評価の対象とはしません。>と書いてある点について考えてみる。
このような観点の方も当然おられるわけで、主張をきちんと吟味すべきと思う。しかし今回の審査員はほぼ建築関係者のみと言えて、しかも意匠に強い専門家さえもいなくて、「国交省官庁営繕部」人脈で固められた非常に偏った人選。もっと観客の立場で考えられる人なども入れるべきだった。(人選詳細は9月21日記事参照)

当方だけでなく多くの皆さんも旧計画の国際コンペと余り変わらない募集期間では、提案書がここまでの内容になるとは予想しておられなかったのではないか。また見直し経緯からも工期・工費を重視した建築面からの評価が主と想定されたと思う。しかし、実際は観客やアスリート、環境など多くの観点からの評価が可能で、かつ詳細に検討できる提案内容になった。それに対して審査員の人選はミスマッチで、この審査は茶番でしか無くなったと思う。

国民アンケートではA案優勢で、例えば次のような記事も出ているし、Yahoo意識調査も似たような状況。他も含めて概観すると、日経調査と同じくA・B案が大体6:4ぐらいか。
ただし、Yahoo調査は時系列で見たら、当初A案が50%を超えていたが、その後50%を切っており、B案も盛り返している。もちろん、このような調査が全てではないが、国民の傾向に反するより合わせた方が説明はしやすい。A案がこのまま優勢を保って行ったら、前述した「大成は外すべきではない」という方向とは、すんなり合致する。だが、元々旧計画で共同作業に入っていた大成と竹中を分断して、片方を取るのではやはり成功とは思えない。

さて、ここで話は変わって独自情報ネタ。以前から何故サッカー協会が8万人収容に強くこだわり続けるのか不思議に思ってきた。サッカーW杯招致の条件になることは理解するが、2002年に開催しており、他にも開催を望む国は多々あるから、いつ次が来るのか分からない。その状況で8万人に拘る必要は少ないのではないか。しかも現計画でも球技専用ではないし、これまでも陸上競技場とは別に湾岸エリアに8万人収容の球技専用スタジアムを建てればよいという議論もあったぐらい。
それでも可能性があるとしたら、2022年カタール大会が返上される場合ぐらいと思っていた。最近たまたまサッカー関連商品販売大手の幹部に話を聞くことが出来たので、新国立競技場の話は出さずに「2022年W杯の可能性」だけを聞いてみた。そうしたら、「可能性はあると思っている」とのこと。商品販売の会社だから日本に来て欲しいという願望があって当然だが、「まだ来るわけがない」と笑い飛ばされることを考えていたから意外だった。単にそれだけの話だが(笑)、もし2022年に何がしかの望みがあるとすれば、その先の招致活動を主に考えつつも、万が一に備えて2022年における8万人収容だけでも満たしておくということなら、サッカー協会の主張も意味は有ると思った次第。

以上
[追記]
昨日の木材使用の流れに関する補足。「業務要求水準書」の中に次の記述がある。
<木材利用」
 「公共建築物における木材の利用の促進に関する基本方針」の趣旨に則り、木材利用の促進を図り、製材、CLT 等の集成材、合板等の木材を可能な限り利用する計画とする。>

この基本方針の内容は以下にあるが、基本的に「低層建築物について木造化を求める指針」であって、今回の巨大スタジアムは掛け離れており対象外と考えられる。それでもA・B案とも構造部まで木材使用で揃ったのは単に偶然だろうか。やはり事前調整があったと考えるほうが妥当なように思える。
<3 積極的に木造化を促進する公共建築物の範囲
公共建築物の整備においては、1の木材の利用を促進すべき公共建築物のうち、建築基準法その他の法令に基づく基準において耐火建築物とすること又は主要構造部を耐火構造とすることが求められていない低層の公共建築物において、積極的に木造化を促進するものとする。>

追記以上