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木材使用への経過、「ドリームJV」

まず、木材使用についての以下記事について。
<とくにB案は、72本の巨大な柱を立てるが、これは大断面集成材だ。だが、現在の集成材の多くが外材製である。国産材で集成材をつくっている工場はそんなに多くないし、生産規模も小さい。 >
巨大柱に関してはB案提案書の中に以下の記述がある。つまり、竹中は国産材を使用すると宣言している。調達については竹中にお任せということになるでしょう。
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さて、木材使用について、A案は屋根を木材と鉄骨のハイブリッド、B案は72本の巨大柱を構造材として使用ということで、相当大胆な木材活用になっていると思う。納期厳守で更に短縮も求められている我が国では前例のないレベルの巨大スタジアム建設において、重要構造部分への木材使用をよく決断できたものだと感心する。表面を装飾するような使い方だけでなく、構造材としての採用に踏み切ったのは、新計画では木材使用と和テイストの重要性が予想以上に高いと云うことを、両者ともよく知っていたからではないか。
「7月17日の白紙見直し表明から11月締め切りまでの期間で、よくこれだけの提案が出来た」と書かれた報道も見たが、総理の表明には「木材使用重視」の意向は出てこない。その後に関係閣僚会議や審査委員会で検討が行われ、9月1日公募開始、11月16日技術提案書の募集締め切りだった。木材使用関連の流れをまとめてみた。
----木材利用を打ち出した流れ----
①8月14日関係閣僚会議
和泉補佐官から「再検討に当たっての基本的考え方」の説明があり、その中に次の一節があった。
<(5) 周辺地域の環境や景観等との調和を図るとともに、日本らしさに配慮する。

②8月26日技術提案等審査委員会(第3回)での「業務要求水準書(案)」
第1節. 新国立競技場整備の基本的考え方
○ 周辺環境と調和し、最先端の技術を結集し、我が国の気候・風土・伝統を現代的に表現するスタジアム
 ・日本の伝統的文化を現代の技術によって新しい形として表現する。
「木材利用」
 「公共建築物における木材の利用の促進に関する基本方針」の趣旨に則り、木材利用の促進を図り、製材、CLT 等の集成材、合板等の木材を可能な限り利用する計画とする。

③8月28日関係閣僚会議
・新国立競技場の性能(スペック)
 「特に配慮すべき事項」
 日本らしさ…わが国の優れた伝統や文化を世界中に発信し、内外の人々に長く愛される場にするため、日本らしさに配慮した施設整備を行うとともに、木材の活用を図る。
安倍総理会見
 『世界最高のユニバーサルデザイン』や『日本らしさ』など、2020年のオリンピック・パラリンピックのレガシーの方向性を打ち出せたと思います。
----流れ記述以上----

以上のようなざっくりした話だけで、例えば「構造材まで使用が望ましい」というような踏み込んだ指示は無かった。それなのに何故両社とも相当大胆に木材を使用してきたか。
そこで、8月末の公募要項決定や7月の総理表明などより、もっと早くから和泉氏が仕切って新計画の基本方針が決められ、大成と竹中の検討が行われていたのではないか、という当方推測がまた出てくる(笑) 現時点においても、和泉氏と国交省営繕部人脈で固められた審査委員会は、様々な評価はあっても最終的には当初から決めていると思われる大成を選定するのではないかと推測している。

なお、それとは別に新コンペ提案を見た現段階で考えているベスト案について書いてみる。当方なりに最適解を探してみるための仮説として捉えて頂ければと思う。
まず、これまでの記事で書いてきたように伊東氏のB案の方を推したい。デザインとして、すっきりしているし、柱列によって屋根が空中に持ち上がっている造形の面白さも感じる。地上でも72本もの大きな木柱が並び、分かりやすいインパクトが有りそう。
(ただし、下図のように張り出した屋根の後端を支える部材(支柱)が木柱の外側に並ぶので、実際に見るとシンプルさや浮遊感が薄れるかもしれない。フィールド側の屋根前端において仮設支柱を不要にしているメリットが打ち出されているが、その代わり外周全体に支柱が立つということは、どれぐらい注目されているだろうか。例えば「ワイヤーアクション」のワイヤがよく見えるような状態にならないか。しかし、今は実際の見え方が分からないので懸念はあってもB案推しとする)

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また基本的な話だが、木材使用だと後々汚れが出やすいのではないかと思われ、個人的には余り賛成ではない。その点でもB案の木柱は直接雨に濡れない位置にあると想定され、耐候性を含めて有利と思う。逆に一番環境条件が厳しくなる屋根に、ハイブリッド構造とはいえ木材を使用するA案は長期的に考えて上手くいくか疑問がある。

これらを総合してベストな案と推進体制は以下になる。
  ①技術提案はB案を採用
  ②施工体制は大成建設竹中工務店のJV
  ③工期を2019年11月末から更に短縮してラグビーW杯に間に合わせることを目指す
  ④内装は隈氏にも日本調でお願いする(伊東氏の内装と分担するとか)
  ⑤組織設計事務所も梓設計と日本設計のJVとする

これでの問題は、まず竹中が現在組んでいるJVを解消する必要がある。3社JVに更にもう1社加えるのでは多くなり過ぎ。大成と竹中の2社なら両社でザハ案を中止させた同士で、検討も水面下で連携してきた可能性もあり、JVを組んでもメリットの方が大きくなると思われる。ただし、それがベストでも公募制度において実現出来るかという問題はあるだろう。だが、国交省大物OBの和泉氏が菅官房長官等の力を借りて何とか出来ないだろうか。

これまでの経過としては、大成と竹中が組んで新コンペに応募すると、他は入札する気が失せて成立しないし、ザハ案に参加していた2社が新計画を受注するのでは、ZHAや海外向けには刺激の強すぎる事態になるから、両者を分離するのはやむを得なかったと思う。しかし、2019年11月末まで短縮できるということなら、更にベストな体制にしてラグビーW杯を目指して欲しいという気持ちが強くなる。組織設計事務所2社もZHA案で経験があるからJVを組んで参加してもらって、両設計家にも内装等を分担してもらえば和の大家の能力も活かせる。

ザハ案の設計参加者から虚偽ダンマリ体質の3社を除外すると、「大成・竹中+梓・日本設計」が残り、そこに日本の両大家が入って、謂わば「ドリームJV」ラクビーW杯に間に合う完成を目指して貰えないか。それがオールジャパンでのベストな取り組み方になると思う。両大家以外は元々新国立競技場で2019年竣工まで仕事の予定を立てていたわけだし、現実的にも決して不可能な話では無いと思うので、ここで単純に大成か竹中(JV)を選んで進めてしまうのでは禍根を残すと思う。何とかなりませんか、和泉さん。

以上