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(続)アーチタイとプレストレストコンクリート

昨日記事の補足で、結論は無いが当方メモとして記載。

西川氏記事を再考してみると以下の記述がある。
 (1)<プレストレストを導入しなければ十分な剛性を確保できない>
 (2)<梁の中のPC鋼材はアーチ両端部で固定する>

これからすると、PC鋼材を2つの用途で使用することを想定しているように受け取れる。
 ①プレストレストコンクリート(PC)用 … PC鋼材本来の使用方法
 ②アーチタイ用 … キールアーチの両端をつなぐ「タイバー(タイケーブル?)」として使用

しかし、①と②ではテンションが作用することは同じでも、①はコンクリートへの圧縮力になり、②はキールアーチのスラスト力に対抗するものになる。この2つの用途で共用は出来ないのではないか。
PC鋼材を②用に使ってしまうと、①用のポストテンションをコンクリートに与えることが出来なくなるだろう。これを解決しようとすると、例としては①と②の用途で別々にPC鋼材を使用することが考えられる。概念図にすると以下になり、上側のPC鋼材が①用で下側が②用になる(下図は一本ずつだが実際なら両方とも複数本になる)。

イメージ 1

更に具体化しようとすると接続方法など課題は多々出てくると思われる。当方が検証できるのはこの辺までになるが、これを検討メモとして残す。根本的懸念は「(長大さも含めて)このような構造は初めて」と云うことだろう。初めてやることはどうしても問題が多くなり細心の注意が必要だが、それにしては実施設計のアーチタイ図面は簡略すぎて説明も全くなく完成度が怪しい。
専門家がいつ登場してくれるか。また上記は図が入っていなかった日経アーキ記事から当方が推定し更に検討を加えたものであり、西川氏が実際にどのように考えておられるか、続報も期待したい(同誌は専門誌として相当な内幕情報を持っていると思われ、本当はもっと真相を明らかに出来ると推察されるが、何故か「小出し感」(笑)がある)。

なお、同じく感想メモで書いておくと、新国立競技場問題を検証する中で感じたのは、「建築家は基礎の話を余りしたがらないのではないか」ということ。逆に当方の従来イメージは「建築物は基礎が重要だから、建築に携わる人達はすぐ基礎を見るのではないか」と(勝手に)思っていた(推測だが世間でもそう思う人は多いのではないか)。そこに「杭」の問題も重なったが、特に建築家の世界は観念論が先行しすぎているように思う。当然異論もあるだろうが、構造的に「建てられるかどうか」という根本問題を置き去りにしたままコンペの問題などを論議するわけだから、観念論先行は実証されていると言えるのではないか。ただし、観念論先行もメリット・デメリットがあり、一概には決められない問題と思うが、建築物は今回のみならず国民生活にも広く影響を与えるものであり、「上滑り」にならないようにして頂きたいと思う。

以上