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アーチタイとプレストレストコンクリート

昨日記事で紹介した構造専門家の西川氏は<全長350m以上で5〜8m角の断面の梁となると、プレストレストを導入しなければ十分な剛性を確保できない。>と述べておられる。後日「登場者検証」の続きで「構造専門家の方々」について書こうと思っているが、その前段階として当方が構造面の最重要論点と考えるアーチタイについて、「プレストレストコンクリート(PC)」との関係を検討してみる。
PCについてはネット上で参考資料が色々見られるが、例えば以下の会社の資料がある。
株式会社PSPCとは?” 
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(1)プレテンション方式
プレテンション方式とは、設備のあるPC工場でのみ製作が可能なもので、PC鋼材をあらかじめ所定の力・位置に緊張しておき、これにコンクリートを打込み、硬化した後に緊張力を解放してプレストレスを与える方式です。
→当方注:仮に工場で製作できたとしても、長さ約370mも有ったのでは運べないと思うので、次項(2)の方式になると想定される。ちなみに新幹線16両編成は約400mで15両分ぐらいの長さになるから、とても外苑の敷地に運び込めないと思われる。

(2)ポストテンション方式
ポストテンション方式とは、コンクリート部材が硬化した後に、その内部に設けられたダクト(シースと呼ばれます)に配置されたPC鋼材を緊張するもので、緊張力の保持はPC定着具を使って行われます。
したがってポストテンション方式はプレキャスト部材のみならず、工事現場で打設する構造物にも容易に適用でき、その上緊張力の大きさも幅広く選定できる特徴を持っています。

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→当方注:前述のように長大すぎて運べないのは当然だが、現場でも施工できるのか疑問ではないか。前例が無いと思われ、例えば十分なテンションを与えるためには、引っ張り装置の開発から必要になるようなことも考えられるだろう。
その上で、キールアーチとの接続が必要になる。西川氏は<梁の中のPC鋼材はアーチ両端部で固定する。仮にPC鋼材が25本だったとすると、その両端の合計50カ所を固定することになる。>としているが、この「PC鋼材」が「鉄筋」を指すのか上図ポストテンション用の「PC鋼材」を指すのか? 仮に「PC鋼材」という言葉で同じものを指しているとすると、西川氏はポストテンション用鋼材をキールアーチに接続する想定であると考えられる。
そうなると、「テンションが掛かった状態を保ったままPC鋼材をキールアーチに接続する」と云うことだろうか。単に接続するだけでも難しそうなのに、引っ張った状態を保って多数の鋼材を確実に精度良く接続可能だろうか。また、上図で「定着具」必要だが、キールアーチと接続する際に付けたままで出来るのか、外すとしたらテンションはどうするのか。
西川氏は<しっかり固定しているところと、固定の甘いところとにばらつきがあると、コンクリートの梁にどのような現象が発生するか分からない。>とも述べておられるので、この接続の困難さを言っておられる可能性は考えられる。
また鉄筋の方をキールアーチに接続するにしても、その場合はキールアーチによるテンションを鉄筋及び接続部が受け止められるかという構造検討や計算が必要になるだろう。日建設計の対処はどうなっていただろうか。

建築専門家等の方々で、どなたか「実施設計のアーチタイがキールアーチとの接続も含めて、実際に作れたかどうか?作成可能としたらアーチタイ部分だけでも工期・工費の見通しはどれぐらいか?」を概略でも良いので検証して頂ける方はおられないだろうか。

以上
[追記]
参考用として、上図と内容は同様だが「シース」の役割が分かりやすいと思われる説明図も添付。(株式会社PS三菱

「ポストテンション方式」
打設したコンクリートが固まった後、あらかじめ設置しておいたシース(PC鋼材を通すための円筒断面形のさや)に配置したPC鋼材を緊張して、プレストレスを導入します。PC鋼材を自由な形に配置することができ、大型構造物への適用が可能です。
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追記以上