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「JSC・大成建設劇場」の可能性

昨日記事で車道の廃止は関係大臣等で調整すべき事項と書いたが、その他でも新整備計画進行において様々な調整が必要になってくる。その際には省庁横断で強い権限を持つ調整役の存在が必須。和泉総理補佐官がそれを努めて、「和泉劇場」が今後本格的に始まるというのが当方の見方だった。

ただし、文科省から大事業(新国立競技場建設)を実質的に取り上げて国交省管理にすることであり、官僚の権限保持意識からしたら異例の出来事だろう。文科省にとっては大変な問題であるが、国民世論の大批判を浴び安倍総理まで巻き込んでの「白紙見直し」になったことで、大人しくせざるを得なかった。
しかし、規定路線であったとはいえ下村文科大臣と河野JSC理事長が退任し、馳大臣と大東理事長になった。JSCの新体制は10月1日に既に発足している。

日本スポーツ振興センター(JSC)の理事長に就任した大東和美氏は1日、JSC本部で記者会見し、新国立競技場の整備について「検証委員会の報告にあるプロジェクトマネジメント機能の強化、推進体制の強化、情報発信体制の強化に向け、速やかに改善を図る」と体制強化に取り組む考えを強調した。新たに新国立競技場整備のプロジェクトマネジャーを置くほか、外部からの専門知識を持った職員を招き、プロジェクト推進体制の強化を図る考えを示した。
  大東氏は、新国立競技場について「個人的には、神宮外苑の環境にマッチしたスタジアムになってほしい。コスト、工期も大事だが、プレーヤーや観客の目線に立ち、ピッチコンディションにも配慮したものを造ってもらいたい」と希望を述べた。
  整備事業推進に向けた3点の改善事項のうち、プロジェクトマネジメントについては、同日付で就任した池田貴城(たかくに)理事(50)を新国立競技場整備専任の役員とし、新国立競技場設置本部長を兼務させる方針を示し、「池田理事がすべての権限を持ってプロジェクトマネジャーを担当する」とした。
  推進体制の強化については、「大きなプロジェクトを経験したことのないメンバーが多い。外部の方にお願いして現在の体制を強化したい」と述べ、国土交通省や民間コンサルタントなどから専門知識を持つ人材を招き、現在の30人体制から10人程度増強する方針を表明。新国立競技場設置本部内に競技場整備に特化した広報部門を設け、随時情報発信していく方針も示した。>

今度は担当理事と設置本部長が兼任になるから池田氏の役割が重要になる。同氏は技官ではなく文科省の財務畑のようである。
霞が関ふるさと記[群馬県・下]”2014年09月16日 現代ビジネス
文部科学省では、初等中等教育局財務課長の池田貴城氏(早大政経89年文部省)が高崎市の出身で高崎卒。>

池田氏の人となりはまだ分からないが、普通に考えてみると新体制でJSCと文科省の巻き返しが始まるように思える。そうなった時に和泉氏がどうするかというと、これも普通に考えたら本来の担当部門である文科省側に任せる可能性が出てくる。和泉氏は補佐官として他にも担当を持っており、やることは多々ある。JSCが専門家を外部招聘して体制強化することも併せれば、和泉氏と官邸の国交省ラインは新コンペで施工者(大成建設)が選定されるまでを実質担当して、後は又JSCと文科省に戻すことが考えられて来る。

ただし、JSC・文科省は旧計画で懲りているから、国交省(出身者)を頼りにするようにも思える。しかし、新計画では設計会社ではなく、ゼネコンに一括発注することの影響が大きくなる。受注者になると想定される大成建設にお任せという手法が使える。大成も社を挙げて対応するから、発注者側のJSCから見たら「任せておけば大丈夫」と思えてくる。

結果的に「和泉氏と国交省に頼る必要はない」となるのは、十分考えられる展開。また国交省出身者は建築には強くてもスポーツ行政をよく知らないから、国交省ライン主導で進行しても課題は色々出てくる。結局どちらがやっても難しいことになり、それなら発注者であるJSCを中心にした体制に戻る流れが考えられる。もしそうなると「和泉劇場」から「JSC・大成劇場」に変わることになるが、その体制イメージを示す。
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これで「約36ヶ月」と厳しくなった工期内に完成させられるか。大成建設は間違いなく頑張るが、時間が無くなってくると自分たちの主任務である建設ばかりに目が行って、設備・内装等の後工程への配慮が不足してくる可能性もあるだろう。特に今回はバリヤフリー・テロ対策・ドーピング検査設備・VIP対応など、後工程での課題が山積している。
十分な完成度を持って間に合わせられるか。当方個人的には非常に危惧され、やはり五輪までには建てない「ゼロ」を選択する勇気を政府関係者にはお持ちいただきたいと思うが、やり始めたら成功していただきたいということも強く思う。
まずは来月公表予定の新コンペ案と、JSCの広報体制強化により情報がどれぐらい出てくるか注目したい。

以上
[追記]
旧計画での大成と竹中の工区間調整は、もし実際に工事が行われたとしたら、課題は多くても双方の努力で克服して協働出来たと思う。しかし、官僚同士である文科省・JSCと国交省による対等に近い立場での協働は果てしなく困難ではないか。どうしても「主導権をどちらが持つか」という話になり、少しでも「従」の立場になった方は「お手並み拝見」となるだろう。担当を明確に分けられれば良いが、建築するものは一つだからそうも行かない。結局全体リーダーは誰かということになり、もし和泉氏でなくなれば文科省側になるだろうが、JSC池田氏なのか、或いは又省内上下関係を中心とした集団意思決定システムになるのか。さて実際にはどうなるか。

追記以上