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内藤廣氏研究2 「国際コンペ審査での順位付け」

「またろ」氏から詳細なコメントを頂いた。ありがとうございました。大変参考になります。
(遠隔操作事件の際に荒らしコメントがあって承認制にしたため公開遅れて失礼しました)

昨日記事を途中から改題して「内藤廣氏研究」を行うことにしており、それと「またろ」氏コメント内容が重なってくる部分があるので、明日以降この研究と併せながら当方の再見解を書かせて頂く予定。
さて本日は国際コンペの第3回審査委員会=第2次審査の議事録(昨日紹介)に関して、更に黒塗り部分を読み解き1次・2次の評価結果一覧に推定委員名を入れたのでご紹介。
特に安藤委員長と内藤氏を分かりやすくしてみた。当方が注目したのは、内藤氏がZHA案を1次・2次とも第2位にしていたことと、安藤氏が1次でSANAA案を第1位にしていて最初は日本人建築家の案を推していたこと(2次ではZHAが第1位)。
イメージ 1

2次審査は僅差になっており、各案を第1位にした審査員数は「ZHA…4名、Cox…3名、SANAA…3名」だった。その後各委員から「委員長判断尊重」の意見が出ている。
 ・もし議論で決まらない時は委員長の判断で決定でしょうか
 ・コンペの判断で票が割れた時は、委員長の1票は2票か3票に重みがあると判断すべき…
 ・委員長を2票としていいのではないでしょうか

これを受けて安藤委員長は以下のように述べた。( )内は当方注。
<私は、日本の技術力のチャレンジという精神から17番(ZHA案)がいいと思います。ただし、Zahaと相当話し合わなければならない。例えば芝生の問題があります。高さは10m高い(実際は5m?)。そういう問題も含めてチェック事項がたくさんありますが、17番がいいと思います。どうでしょうか。>

異議はなく、河野理事長が次のように確認して決まった。
<確認します。1位は17番、2位が2番(Cox案)、3位が34番(SANAA案)。17番については先ほど指摘部分の変更(首都高と鉄道を跨ぐ部分の変更)に対応することを条件として1位になります>

この結果が第3回有識者会議に「最優秀…ZHA案、優秀…Cox案、入賞…SANAA案」として報告され、ZHA案が了承された。当該有識者会議議事録が後日公開され「黒塗り」があるということで、野党民主党やマスコミ、そして自民党河野氏なども問題視して以下のような記事も出た。
”【新国立競技場】森喜朗氏発言を削除 コンペ結果の議事録、どこが黒塗りに?(全文)”The Huffington Post  執筆者: 伊藤大地   投稿日: 2015年08月10日 ”
<建設計画を進めた日本スポーツ振興センター(JSC)は、コンペの審査結果を発表した議事録を情報公開請求で公開するために、一部修正したことが民主党の提出した資料で明らかになった。>

しかし、各分野専門家が入って技術調査や1次2次の討議を行った審査委員会による順位付けを、建築専門家が安藤氏だけの有識者会議が受け入れるのは自然の成り行き。審査委員会議事録の方がずっと重要で、非公開と黒塗りを問題視するならまずこちらの方だっただろう。そして審査の議論は真摯に行われていたし、ZHA案の指摘部分変更も了承されていた。

内藤氏に関しては、1次も2次もSANAA案が第1位でZHA案が第2位だったと云うことが分かった。また、審査が公平に行われていたという主張も改めて裏付けが取れたと個人的には考えている。
ただそうなるとまた疑問も出る。内藤氏は2013年12月に発表された「建築家諸氏へ」の見解の中で以下のように述べておられる。
スペイン北部の街ビルバオに、フランク・ゲーリーの設計によるグッゲンハイム美術館が出来て二年ほどした頃、近くのサンセバスチャンで会議があり、次の日に訪ねたときのことです。夜になって、地元の建築家たちと会食になったとき、あの建物に対する印象を訪ねてみました。あの建物のことが好きか、というわたしの問いに対して、「好きなわけがないだろう。大嫌いだ」。その後に続けた言葉が面白い。皮肉っぽい笑みを浮かべて、「でも、大成功だ」、と言ったのです。知っての通りビルバオは、いまだにスペインからの独立運動が燻るバスク民族の主要都市です。ゲーリーの奇妙な建物が出来たことにより、世界中から人が来るようになり、そのことはバスクの存在を世界に発信することになった、というのです。好き嫌いを越えた戦略的な発想だと感じました。われわれもこれに習う戦略的な賢明さを持つべきではないでしょうか。
 そのためには、ザハに最高の仕事をさせねばなりません。決まった以上は最高の仕事をさせる、ザハ生涯の傑作をなんとしても造らせる、というのが座敷に客を呼んだ主人の礼儀であり、国税を使う建物としても最善の策だと思うのですが、どうでしょう。>

好き嫌いはあっても「ZHA案で建てればグッゲンハイム美術館のように世界に発信できるものが出来て大成功するかも知れない」とおっしゃっていることになると思うが、その根拠が<決まった以上はザハに最高の仕事をさせる>と云うことなのだろうか。他の部分を見ても<あの案の中にある生命力のようなものを高く評価することでまとまりました。>ぐらい。内藤氏の審査評価からすれば第1位のCox案ならもっと発信できるということにもなる。
「戦略的発想」とは程遠いように思われるが、これが東大教授から副学長までつとめられた大家の論理なのだろうか。見解が本心からのものとしたら、そうなってしまう。
当方としても半信半疑の状態が続いているが、更に不可解な点が出てきているので検証続行する。

以上