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由利氏記事再検証4 「ザハ・ハディドの影響力」

文藝春秋9月号記事と考察続き。
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 ここまで経緯を検証すると、ひとつの拭い切れない疑問にたどり着く。なぜ、難題山積のザハ案にここまで引きずられてしまったのか──。
デザインを決めた国際コンペで審査委員長を務めた建築家・安藤忠雄氏は、七月十六日に記者会見を開き、こう明かしている。
 「非常にダイナミックで、流線型で斬新なデザインでした。何よりもシンボリックでした。(招致で東京に)勝ってほしいなあという気持ちの一部が、あの案を選ばせたのかも分かりません」
動機の一端を、安藤氏はいみじくも告白している。JOCの審査メンバーの話。
 「一二年ロンドン五輪で、ザハ氏は水泳競技場を提案して採用され、IOCに注目されました。ただし、この会場も当初予定の約百七十億円から三倍の約五百二十億円に総工費は膨れました。それでも安藤氏は、ザハ氏のIOCへのアピール力に目を付けたんです
 東京が招致に成功すると、ザハ氏はデザイン案採用だけにとどまらず、JSCに「設計にも関与させてほしい」と要求を突きつけたという。
 JSC広報室が説明する。「ザハ・ハディド・アーキテクツより基本設計を行いたいと申し出があったのは事実です。しかしながら公募型プロポーザルで選定することが決まっており、直接随意契約することは困難なためお断りしています」
 ところがそれでもザハ氏は納得せず、結局、JSCと基本設計の「デザイン監修業務」を契約することに成功する。これが、設計段階でいくら難点が顕わになっても、ザハ案が維持され続けた大きな理由だ。
さらにもう一つ、仕掛けがあった。前述したロンドン五輪水泳競技場をザハ氏と共同設計した会社の存在である。ザハ氏も拠点を構えるロンドンに本社を置き、三十七カ国に事務所を構え、従業員一万一千人を抱える世界最大の土木建築総合コンサルタント会社、オーヴ・アラップ・アンド・パートナーズ(以下アラップ社)である。実は同社も、新国立競技場の設計JVに組み込まれ、構造計算を手掛けていた。前出の審査メンバーが明かす。
 「ザハ氏側から『うちのデザインを生かすには、アラップ社の優れた構造計算の力が必要だ』と口添えがあり、設計JVに組み込んだ経緯があったんです。『十分な構造計算を行った』と自負するアラップ社を前に、もはや日本の設計事務所は口出しできなかった」
 キールアーチは露と消えたが、ザハ氏側にはデザイン監修料の一部としてすでに十三億円が支払い済み。今後、突然の契約不履行による損害賠償請求訴訟を起こされる可能性もある。
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⑪<安藤氏は、ザハ氏のIOCへのアピール力に目を付けたんです
→これはどのようなアピール力なのだろうか。スポーツ機関も特に欧州が仕切る組織はFIFAで露呈したように金権体質が根底にあるようで、IOCも以前に招致で不祥事があった。単なるアピールだけでなく、お金が絡むと話は複雑になるが、仮にもし裏で何かあっても表には出て来にくいだろうとは思う。

⑫<結局、JSCと基本設計の「デザイン監修業務」を契約することに成功する。これが、設計段階でいくら難点が顕わになっても、ザハ案が維持され続けた大きな理由だ。
→「そういうことも有りそうだな」とも思えるが、ザハ案維持をZHAが強硬に譲らなかったとしたら、例えばこれまでの検証で明らかにしてきた基本コンセプトの変遷と矛盾する。基本設計をちゃんと監修していたら、コンセプトと真逆になる「スタンドが屋根を支える構造」は阻止するはず。しかし,その構造で基本設計書が完成し有識者会議にかけられて了承された。「並行工事メリット」のコンセプトを放棄してもザハ案は維持されると、ZHAはその時考えたのだろうか。或いは監修者という名前でお金だけ貰えば良いという考えだったら余り見てなかったかも知れないが、ZHAは積極的に色々やりたがる傾向があるぐらいで真逆の構造を見逃すとも考えにくい。
その上に先日紹介した「日経アーキテクチュア10月10日号」記事の「基本設計の初期段階でアーチタイを採用する方針となった」との記述も出てきて更に混沌としてきた。

⑬<「ザハ氏側から『うちのデザインを生かすには、アラップ社の優れた構造計算の力が必要だ』と口添えがあり、設計JVに組み込んだ経緯があったんです。『十分な構造計算を行った』と自負するアラップ社を前に、もはや日本の設計事務所は口出しできなかった」
→アラップ社は設計JVに入っているが、役割があまり良く分かっていなかったと思う。その中でZHAビデオでは冒頭の「確かなチーム」という項目で<ZHAとアラップスポーツは2020年東京オリンピック・メインスタジアムとなる新国立競技場の国際デザインコンペで最優秀賞となりました>と言っているため、コンペ案にアラップスポーツ社が参画したことだけは分かった。
それでも日本側設計JVにおける役割は分からないままだったが、前述の「日経アーキテクチャ」記事中にザハ案設計チームの体制説明があった。
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何とアラップ担当分に「屋根構造」がある。構造設計は当然日建設計と考えていたが、この体制からすると「屋根構造はアラップジャパン」になる(屋根にも分担は有るかも知れないが上記記述以上は不明)。
しかも以下記事を見ると同社設立は構造設計からスタートしたとのこと。設計JVの中心にも構造設計に強い日建設計がいて、結果が弥縫策の構造設計になったのは一体どういう経過が有ったのだろうか。ちなみに日建設計以外の設計JV参加会社はヒアリング対象になっていない。

以上