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 新コンペ検証2「(競技関係以外の)機能」

まず昨日書いた内容で由利俊太郎氏記事の背景に、外苑再開発を巡って「産経グループ対読売グループ」の構図は充分可能性有りと思える。ただし、自己コメントでも書いたが、産経グループが由利氏記事にある深刻な技術的問題の情報を持っていたなら、それだけでもスクープとして価値があるから何故産経新聞等で出さなかったのかという疑問は出てくる(取材開始は昨冬だからスクープ記事にするタイミングは幾らでもあった)。由利俊太郎氏の正体は今後も明らかにならない可能性が高いとは思うが、成り行きを注目していきたい。

さて、新コンペの方であるが、外観デザインの配点が少なすぎる件以外にも課題がある。「アスリート・ファースト」の美名のもとに競技と競技関連以外の機能はごっそり削られている。「新国立競技場整備事業の技術提案等審査委員会」の見直し資料(官邸提出)を示す。
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デザインが変わるので「立体通路」の取りやめは自然だが、「スポーツ振興機能」とされていた”フィットネス事業、コンベンション機能、博物館・図書館機能、物販・飲食事業”などが全て取り止めになった。
「フィットネス事業」は施設内容にもよるが、その他は全部取り止めで良いのだろうか。「コンベンション機能」は、立地の良さを活かしてスポーツ振興を始めとする各種会議・打合せの場所として今後更に重要性を増すだろう。「物販・飲食事業」は収益を生む可能性がある。以前書いたように、イベントがない日もスタジアムは存在し人も来る。「スポーツ振興」以外にも対象分野を広げれば、更に収益力は高く出来るだろう。「博物館・図書館機能」も、こういう格調高い分野こそ外苑に相応しい機能では無いのか。

2020年代の幕開けを飾る最新のスタジアムが、工期・工費最優先とはいえ、このような簡素一辺倒で良いのだろうか。国交省主導になると文化面が弱くなるのではないかと危惧していたが、それが早くも出て来ているようである。

なお、取りやめにはならなかったが縮減されたVIP関連機能についても明日考察予定。

以上
[追記]
 JSCから出ている「業務要求水準書」を見てみると「本当にこれで入札公募できるのか?」と疑問になる。ごく基本部分しか仕様を決めてないから、応札者の裁量部分が非常に多い。それで落札すれば建前上は入札した仕様通り作ることになるだろうが、実際は落札後に発注者(JSC)との打合せで詳細仕様を詰めていくことになるだろう(当方経験上そうだった)。

しかしそれが出来るのは落札者が協力的な場合になる。発注者の要請に応えた変更でコストアップがあっても、落札者側で負担してもらえれば工費は変わらない。だがコストアップ分の負担を拒否されたら、またコストアップしなくても変更の手間を掛けたくないと言われたら、発注者の意向と乖離する部分が多い入札時仕様のままで作られることになる。発注者側は設計していない状態だと公募仕様書に詳細を書けない部分が出て来て、どうしても相違は生まれる。また入札された資料を見て初めて気が付く問題点などもあるだろう。
だから、これだけの大型案件はもっと設計を詰めてから施工の公募にすべきだった。つまり前回のやり方だが、それが失敗したために今回は工期・工費最優先で設計・施工一体の入札にしたら、また大きな問題を抱え込んだことになる。政府の当事者能力が疑われる事態。

これで危惧されるのは仮定として、どこかの国が嫌がらせをしようとしたら、自国業者或いは日本の業者とのJVなどにして安値で落札してしまうことが可能。その後は業務要求水準書等の規定に明らかに反する場合などを除いて、発注者側からの変更打診をことごとく拒否することが出来る。そうなると安さだけで設計した仕様で建ってしまうことになる。或いは途中で発注者側と落札者側の話し合いが決裂することも考えられる。その場合五輪に間に合わないし、落札者側は「入札時仕様を変えさせられるのは契約違反」と主張できるから違約金も取れない。
これは極端な場合で現実には有り得ないレベルの話だが、「落札者側が無理を聞いてくれることを前提にした詰めの甘い入札公募仕様」になっていることに注意を喚起する意味で記した。

ちなみに入札意思を明らかにしている大成建設なら、無理を聞きつつ、やる積りでしょう。その大成でもギブアップしたのが前回の「ザハ+日建設計中心JV」の設計だったことも忘れてはいけない要素(明日の検証委員会報告書でどう記述されるか)。
なお大成は旧国立競技場を手がけたことが喧伝されるが、実は絵画館も施工は大成。外苑には会社として思い入れがあると予想され、どうしてもやりたいという姿勢で入札に臨むことが考えられる。

追記以上