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 新コンペ検証1「デザイン」

昨日記事でZHAビデオから、デザインと機能(競技関連以外)を論点に検討してみたが、それを受けて新コンペではどうなるかを見てみる。
まず本日はデザイン。新コンペでデザインに関する規定は以下の資料中に「景観」の項目がある。
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”「新国立競技場の整備計画 平成2 7 年8 月2 8 日 新国立競技場整備計画再検討のための関係閣僚会議」 (別表1)”抜粋
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「③景観・地球環境」の中で「景観」に関する要求は<明治神宮外苑地区の景観や環境と調和を図るとともに、スポーツクラスターの中核にふさわしい景観の形成を図る。>としている。
なお、「②日本らしさ」では、<日本らしさに配慮した施設整備を行うとともに、木材の活用を図る>となっており、これは主に内装を意識した要求と解されるから、外観は③の方になると思われる。
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それで新コンペの審査はどうなっているかというと、まず審査体制はJSCが委員会に委託している。
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[新国立競技場整備事業の技術提案等審査委員会]
発注者は、技術提案書の審査について、学識経験者により構成する「新国立競技場整備事業の技術提案等審査委員会」(以下「審査委員会」という。)に委ねる。審査委員会は、中立かつ公正な立場で技術提案書の審査を行い、その結果を発注者に報告する。 審査委員会の構成は、次のとおり。 
  委員長 : 村上 周三 東京大学名誉教授 
  委 員 : 秋山 哲一 東洋大学教授 
       ・・・
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審査基準は以下のようになり、必須項目(施設規模や工期、事業費等)を満たしていれば、評価項目が点数制で審査される仕組み。
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結果的に、デザイン(外観、景観)は「環境計画」の項目になって配点は全体140点中の10点。しかも、「環境計画」には「環境負荷軽減」も入っているから、実質的に「外観・景観デザイン」は140点中の5点程度ということになる。

唖然とするが、このような入札条件で本当に良いのだろうか。工期・工費優先(両方併せて60点)も理解できるとは云え、よくここまでデザイン軽視にしたものだと恐れ入る。工期厳守で和泉補佐官がOKしたか。
「必須項目」はどの応募者も満たすことは確実だから、後は上表の「評価項目」点数での争いになる。デザインの5点を軽視したとしても、配点が遥かに多い工期短縮・工費削減(計60点)で点数を稼げば圧倒的優位を得られる。「早い・安い・デザイン大したことない」でも落札可能になる。(さすがにゼネコンが「悪い」というレベルのデザインは出してこないとして)
工期と工費で一番の条件を出した入札者のデザインが、多くの国民に受け入れられる幸運を期待するしか無いか。

また、これだけ話題になった案件で、デザインが全く決められていない状態から工期・工費最優先で設計し、結果的に国民から「デザインが悪い」などと云う評判が出たら、応札会社の世間的評価にも関わる。そのようなリスクと共に工期・工費実現にも難関が待ち受けていることは間違いなく、どれぐらいの応札者が出てくるかも課題になりそう。

その点「ZHA+日建設計」は早々と入札参加表明し、ザハが入ると或る程度のオリジナリティを持ったデザインが出来るのも確実だろう。ゼネコンと工費の話がつけば、政府も対応に苦慮するかもしれない。
結局新コンペでZHAが落札しても落選しても、対外的も含めて、ややこしいことになりそうである。キールアーチ支持構造の欠陥を長く引きずってしまった関係者の大失策が、これからも尾を引く事態になってしまった。

以上