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ZHAビデオ論点5,6 デザイン、機能

本日はZHA反論ビデオ検証で、新規ニュースが多々あって延びていた分を掲載。
以前から述べて来ているように当方はザハデザインを評価している。しかも同デザインではコンペ案を評価して修正案を劣化と捉える向きも有るが、個人的には修整案の方がコンパクトにまとまっていて日本向きではないかと考えている。またJSCが提示した前回コンペにおけるコンセプトに関しても評価したい面がある。ZHAビデオを元にデザインと機能コンセプトを論点にして述べる。
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論点5:デザイン
ZHAビデオは<鍵となるモチーフには日本の伝統的景観が活かされている>と主張し、キールアーチ採用についても<日本の伝統的橋が持つシルエットと同じ目的からくる類似性>と述べるなど、日本の伝統を活かしたデザインの優位性を強調している。
デザインは各個人で好みが分かれるので絶対的結論は出ないが、当方としてザハデザインを評価するポイントの中で、「夜の佇まい」は趣きもインパクトもあって特に良いと思う。同ビデオも<夜にはスタジアムの光が夜空を照らすようになっており、日本の伝統的な照明が持つ効果と重ね合わせる狙いがあります>と紹介している。
イメージ 1

北京スタジアムの夜景と並べたが、五輪ではまず開会式が有り、開始前にはヘリが多数飛んで空撮がお約束のシーン。北京では夜の闇に浮かび上がる「鳥の巣」スタジアムから派手に花火が上がっていたと思う(道程の足跡はCGだったようだが)。
東京五輪開会式は夜8時からだそうで、徐々に日が暮れていく中で飛び交う報道各社ヘリからの空撮映像がTVの前で待ち構える多くの国民の目を捉える。世界の人々も見る。
当方はこの夜景に注目しており、最初の映像インパクトで世界中に「さすがTOKYO」と印象づけて、「掴みはOK」となって欲しいと思う。(なお、当方は以前から述べて来たように五輪を目指しては建てない「ゼロ」の考え方を今も持っているので、もし建てる場合の話)
「空からの様子は普段は見えない(ので余り意味が無い)」という声も有るが、前述のように空撮、特に夜景はイメージとして頭の中に残る。それが下から見るときも意識の中にあって、「これがあの時見たスタジアムか」と云うことになる。近所で毎日見慣れるような人は別だが、五輪後東京に訪れる人達には間違いなく観光名所の一つになるだろう。今度のコンペを経て、もし建てる場合は開会式の夜景空撮にも映えるデザインを期待。

論点6:機能
JSCはコンペにおいて、VIPルームや商業施設など競技以外の機能面も充実させるコンセプトを打ち出していた。
それに対応してZHAビデオにスタンド断面図があり、VIPルームや各階施設のイメージCGがあった。
イメージ 2

一般的にスタジアムは観戦が主目的で作られていて、飲食物は観客席裏のスペースに設置された簡単なスタンド形式の売店で購入して席に持っていくか、売り子からの場合が多い。そのような中で近年はヤフオクドームがラウンジやスーパーボックス(貴賓席)など充実した施設をもつスタジアムとして先鞭をつけた。ヤフオクドームも福岡の中心部からそう遠くないが、国立競技場は首都東京の都心にあって利用できる駅も5つぐらいは有り、立地の良さはヤフオクドームを遥かに凌ぐ。

「アスリート・ファースト」は分かるが、スポーツやその他イベントでの稼動日より稼働していない日数(準備中含む)のほうが遥かに多くなる。そのような時でもスタジアムはずっとそこに有る。神宮外苑は国立競技場だけでなく、他のスポーツ施設や公園もあり、土日は言うまでもなく平日でも人はやって来る。五輪後は更に東京名所として認識されるだろう。

前コンペ設定の床面積設定が広すぎると云う批判があったが、更なる東京名所となる外苑にはもっと広いスペースを求めたい。新国立競技場が備えるはずだったVIPルームや他階も含めたスペースは実質的に外苑の有効面積を増やせた。ただしVIPルームの有効性はもっと検証してみないと分からないと思うが、そのスペースや他階にも来苑者のためのカフェ・レストラン・スポーツ関連等物販なども入れて採算が取れないのか。建設費が高いから、賃料が高くなりすぎるということなのだろうか。

だが地価が高い東京の一等地であっても、どこに行っても立派なビルが有り、その中に多くの店舗も有る。国立競技場内だけがビジネスとして成立しないことが有るのだろうか。しかも現在の外苑内や最寄りの千駄ヶ谷駅前には競合店舗は殆ど無いと云う有利さも有る(今は店舗が余りにも無さすぎるぐらい)。客観的に投資対効果比の計算を行って、要否を決めるべきではないかと思う。

またスポーツ博物館も無くしてしまったようだが、展示内容等を新たに工夫すれば国の施設として充分存在意義が有るのではないか。スポーツジムなども、施設内容と採算性にもよるが近隣の人々のためにも、あっても良いと思う。五輪後の公設民営化の構想も考えれば、或る程度色々な種類の施設集合があった方が集客力につながるのは当然だろう。

建設費が高いと批判されたら急に逆方向へ振れすぎて、「アスリート・ファースト」を隠れ蓑に、あるべき施設まで削って費用への批判だけかわそうとしているのではないか。その点ではザハ側の言う「デザインこそが(スタジアムと云う)特殊なマーケットで価値を生み出す唯一のものである」と云う主張は、唯一かどうかは別にして、デザインの重要性を強調した主張として理解できる。

他にも、以前記事で書いたように「スカイブリッジ」も回遊性向上の機能アイデアとして評価できる。スカイブリッジ以外の手法でも良いが、新コンペ案でも外苑全体を楽しめる回遊性への配慮が必要と思う。
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このように新スタジアムについて考えるべきことは多々有り、ザハ側主張の「(やり直し入札から業者決定までの)5ヶ月では見直し案の検討期間が短すぎる」という点はもっともな指摘。
神宮外苑は過密都市東京の貴重なスペースで、面積はニューヨークのセントラルパークの10分の1ぐらいと思われるが、国土の広さの違いから考えたら「日本のセントラルパーク」として位置づけても良いぐらいの場所ではないかと思う。

その中で大きな面積を占める国立競技場が新しくなる。ニューヨークとも違う「日本のセントラルパーク」にする街づくりから考えてみてはどうだろうか。そのためには5ヶ月では到底無理だから、一旦「ゼロ」にして五輪日程に縛られず、国民・都民・住民、アスリート・スポーツ愛好家・散歩好き、建築/都市計画/景観等専門家・市民運動家など、多くの参加で意見を出しあって論議しながら考えられないか。その場合、普通にやったらまとまらないので、早くから「ゼロ・オプション」を唱えていた河野議員に取りまとめをやってもらったらどうかという当方見解は変わらない(最近この問題での河野氏ブログ更新がないが)。

ただ、そのようなことをしなくても、政府が責任を持って遂行するということで、五輪日程最優先の整備計画進行を国民が受け入れるなら「国民意思ファースト」としてやっていくことも有り得る。
まずはこれだけ迷走したのだから、検証結果報告に国民がどう反応するか。文科省から9月16日(水)午後第4回会議開催が公表され、議題は「検証報告書(案)」。同会議でほぼ了承され迅速に公開されると思われるが、しっかりした内容の報告書ができているのだろうか。由利氏記事との比較が注目される。

以上