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由利俊太郎氏記事のターゲットは読売?(文藝春秋9月号記事検証4)

<由利俊太郎氏記事の中心情報は文科省内部からのリークが多いような気がします>と云うコメントからインスピレーションを得て、別観点から同記事を見なおしてみた。
まず、冒頭段落の内容(安倍総理の決断は英断と言えるものではなかった)は当ブログ9月6日記事で紹介したが、その次の第二段落についても以下に引用する(前半、後半などの説明を入れた)。
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[党幹部に責められる副大臣
白紙撤回」の二日前、七月十五日のことだ。都内某所のある会議室で、内閣府と東京都の五輪担当者がいつものように顔を合わせ、事務折衝に入ろうとしていた。だが、これまでとは明らかに雰囲気が違う。都側の出席者に、事務当局の責任者がいたからだ。理由はほどなく明かされた。
東京都から追加の五百億円をお出しすることは絶対にできません
従前から難色を示してきた舛添要一都知事の〝最後通牒〟が伝えられた瞬間だった。会議室は瞬く間に騒然となり、内閣府の担当者から即座に総理官邸に報告が上がった。
「ダメです。都は全面拒否です」
この日を境に、雪崩を打ったように「計画見直し」へと流れが変わった。都庁幹部が打ち明ける。
「そもそもの経緯の不透明さもさることながら、総工費が二千五百二十億円と判明判明した直後に下村博文文科相が『五輪後は、新国立競技場の運営を民間に委託することも考えている』と発言したことにも舛添知事は批判的でした。『民間に貸し与えるようなものに多額の都税を投入するなどとんでもない。大義がない!』と怒っていました」
舛添知事にごく近い人物も「巨人軍の久保博社長を父に持つスポーツ報知の記者が、三年後に築三十年を迎え、老朽化が進む東京ドームから新国立への本拠地移転か、などと観測記事を打つのを知事は苦々しく見ていた」と認めた上で、「下村大臣はとにかくいい加減で思いつきの発言ばかりだと愚痴をこぼしていた」と明かす。
安倍首相は二日後の十七日、白紙撤回宣言の折に、「ひと月前から検討していた」と説明したが、その言葉を額面通りに受け取ることはできない。ザハ氏のデザイン案で強行突破しようと、ギリギリまで都側の五百億円支援に一縷の望みをつないでいたのだ。だが、十五日を境に、虫の良い思惑は行き場を失い、政府や与党は混乱を極めていく。
(前半は都庁関連)

(後半は自民党内幕)
自民党議員がこんなエピソードを打ち明ける。同じく十五日、自民党幹部のもとを訪れたのは、五輪問題を担当する丹羽秀樹文科副大臣だ。「新国立を何とかしろ。もう政権がもたんぞ」二階俊博総務会長がそう凄むと、隣にいた谷垣禎一幹事長も深くうなずいた。
丹羽氏はこの時点では、まだこの事態がどう決着するのかまったく見えていなかった。「いまさら無理です。ザハのデザイン案以外にありえません」
こう抵抗すると、居並ぶ党幹部たちは口をそろえた。「それを考えるのが君たち文科省の仕事じゃないのか!」
丹羽氏は、下村文科相から五輪担当を命じられ、新国立競技場の事業主体「日本スポーツ振興センター(JSC)」を直接指揮する立場にある。その当事者ですら、白紙撤回二日前の時点で代案を持っていなかった。安倍政権はビジョンを持たないまま、急落する支持率の前で突如ちゃぶ台をひっくり返したのである。

(以下は「重大な欠陥」として、第三段落以降の詳細な暴露を予告)
しかもザハ案は、予算増加以外にも「重大な欠陥」をはらんでいた。にもかかわらず、政府は見て見ぬふりを決め込み、建設着工は強行されようとしていたのだ。ひた隠しにされてきた真相を明らかにしたい。
(第三段落以降はKindle版でお読み下さい)
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これをよく見てみると、前半と後半の違いは都庁関連か自民党かの違いだけでないことに気付いた。舛添知事や都庁役人は「国からの無理な要求を突っぱねて見直しの流れを作った」ように書かれているが、自民党や内閣の内幕は「やっぱり無責任な押し付け合いか」という描写になっている。
更に第三段落以降ではザハ案の「重大な欠陥」による他の関係者(JSC/文科省、設計JV、ゼネコン等)の右往左往ぶりを暴露をしている(ゼネコンも昨冬には分かっていたのだから結果的に対応は遅れた)。
つまり、舛添知事と都庁関係者以外はダメージとなる記事。

しかし、前半部(都庁関連)は当方調査によると事実とは違うと思われる。記事では「都側の最終的な負担拒否表明があった15日を境に流れが変わった」と云う趣旨で書かれているが、実際には見直しは7月15日に既に決まっていたと考えられる。15日夜や翌日からすぐ動いたとしても17日に白紙見直しの大転換を総理が表明するのは困難だし、実際に「政府の計画見直し案浮上は15日」と書かれた産経新聞報道がある。由利氏記事の<当事者の丹羽文科副大臣でさえ白紙撤回二日前(15日)の時点で代案を持っていなかった>とは明らかに違う
今月15日に政府の計画見直し案が浮上した直後、舛添知事は報道陣にそう繰り返した。
もっと公式には次の資料もある。
7 月15 日に政府が設計見直しの方向を打ち出したことは時機を得た決断であると考えます。>

他に朝日新聞などの報道もあり、政府の見直し決定は7月15日で確定できると思う。では何故他の部分では非常に正確と考えられる由利氏記事がこの部分だけ事実と違っているのか。
ここからは当方の憶測が入るが、まず都側に良く書かれているのだから、「誰得」で考えたら「都庁関係者からのリーク」の可能性が高くなるのではないか(由利氏の個人取材なら話は違ってくるが、それはほぼ無いように思える)。

なお、舛添知事も良く書かれていることになるが、舛添氏は望外の幸運で都知事にまでなれたのだから、そこまでやらないだろうと考えておく。
また、都側負担の件で舛添氏は最終的に出すつもりでいたことも、由利氏記事該当部分の否定要因になる。なぜ出すかというと、五輪は東京都主催ということも有るが、舛添氏は自民党から飛び出したのに都知事候補にしてもらったという背景がポイントになる。同氏は今やバックに政治勢力を持っておらず、都議会運営は自民公明の与党頼み。また五輪を知事で迎えたいから、再選には自民党の協力が不可欠。

最終的には災害避難場所等で都民の恩恵も有るなどの理由を付けて、都側も出すことは既定路線だった。出来レースだったからこそ森氏は文科省を通じて下村大臣を動かして舛添氏に挨拶に行かせた。しかしその場で存在感を示したいだけの舛添氏の負担拒否発言に、下村氏が慌てふためいて色々仕様変更などを言ってしまって、そこから混乱が始まったという流れ。下村氏が出来レースを読めない人物だったので、水面下で話をつけた森氏からも、最後は話に乗るつもりだった舛添氏からも批判されている。
都側負担の経緯は当方も重点的に調べたので、大筋では合っているのではないかと思う。なお、猪瀬氏が「負担の約束はなかった」と言い出している件は追記で取り上げる。

結果的に「都側に有利なように話を盛って、そこに真実の技術情報を入れた都側関係者のリークではないか」と云うのが当方の現段階推測。しかし、まだ「誰得」が足りないのではないかと云う気がする。そこで注目されるのが次の部分。
「巨人軍の久保博社長を父に持つスポーツ報知の記者が、三年後に築三十年を迎え、老朽化が進む東京ドームから新国立への本拠地移転か、などと観測記事を打つのを知事は苦々しく見ていた」と認めた>

この記者身元は充分意図した暴露ではないだろうか。確かに報知が5月に記事を連続して出していた。
 ”新国立競技場、プロチーム誘致で収益改善へ”2015年5月16日 スポーツ報知
その後自民党の議員も応援団的に動いていた。
 <五輪後の収益確保こそが課題、建設費と運営費を回収するには、新国立にプロチームを誘致する必要がある。>
下村大臣まで公言。

これら以外にも色々報道があり、「火のない所に煙は立たず」で或る程度の動きがあったことは間違いないと見て良いだろう。そして五輪後の2020年以降に「神宮外苑再開発」が予定されていることも重要になる。
これらを総合して、現時点での当方が考える「由利俊太郎」の正体と目的推定。

 (1)正体は都側関係者によるリークで、それをライターか文藝春秋がまとめた
 (2)文芸春秋には都側関係者のバックに居る人やその意を受けた政治家などが話を付けた
 (3)バックに居る人たちは神宮再開発への「読売グループ」参入阻止が目的
 (4)読売グループであるスポーツ報知の巨人軍縁故記者が誘導記事を書いている実態を暴露
 (5)目的を紛らわせるために、都側関係者が例えば旧知の設計JV関係者から詳細な技術的情報を得てリークに入れた

技術面を主に追っていた当方などからすると由利氏記事の影響は仕掛けた人達の思惑よりは少なかったのではないかと推測していたが、記事後に以下のような報道も出ていて目的は或る程度達成されているのかもしれない(これらも書かせたのかも知れないが)。

結構壮大な推理になってしまった(笑)
合っているかどうかは全く不明だが、皆さんそれぞれがお考え頂く際の参考情報になればと思う。

以上
[追記]
猪瀬前知事発言。
<今年5月、下村博文文部科学相(61)が、13年12月に猪瀬知事(当時)から「内諾を得ている」などとして、都に新国立建設費の一部負担金500億円を要請した。だが、猪瀬氏は、この下村氏の発言を否定する。
 「当時は(新国立の)周辺整備費について『372億円を負担してほしい』ということだった。都議会でも、私は新国立競技場の本体工事部分を負担しないと明言している」
 猪瀬氏は、372億円が適正な価格か検証するための専門委員会を設置を検討していたという。だが直後に、徳洲会から都知事選の資金5000万円を借用した問題が発覚し、招致決定からわずか3か月後に辞任を余儀なくされた。>

見ていただければすぐ分かるように見出しはミスリードで、「500億円の話はしていないが、372億円は妥当性検証委員会設置まで予定していた」段階だった。もし猪瀬氏が知事を続けていても舛添氏と同じく東京都が主催する五輪は絶対成功させなければいけないし、当然再選狙いもあって自民党とは表面的にはともかく水面下では密接な関係になる。その結果、全体金額が上がっていたのだから、372億円が500億円になることは十分考えられた。
マスコミに惑わされないようにしないと真相が見えなくなるという典型例。(この報道もスポーツ報知である点は未考察)

なお、由利氏記事題名は<遅すぎた「白紙撤回」>だが、安倍総理の17日会見を確認すると「撤回」とは言っていなくて「白紙に戻してゼロベースで見直す」と述べている。結果的に「撤回」は間違いなのだが他のマスコミも含めて恣意的或いは無意識に使われてしまって、「撤回と言ったのに撤回になっていない」などの批判が出る。折角の特ダネ記事のタイトルが間違いではもったいない。

追記以上