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槇氏初回提言(2)「絵画館前広場」

槇氏提言において、昨日ご紹介した聖徳記念絵画館前広場に関する2回目の言及は"結びの言葉"「最後に、私は今まで述べたどのシナリオになろうと・・・」になっている。読解的にも文章全体で一番言いたかったことと受け取れるのではないか。

新国立競技場計画案に関しては五輪招致成功の場合について以下のように述べておられる。
<私はまず新しいプログラム作りを提案したい。そしてその新しいプログラムは次の2つの目的を充足するものでありたい。第一に、50年後の東京のこの地域にふさわしいスケールと内容を持った施設、第二に17日間の祭典を充分満足する機能を持った施設であることが求められる。まず第二の祭典には8万人収容の規模を持つことが最近の一つの標準であるならば、それは満足する必要があるが、同じ規模のものが恒久的にそこに居座る必要はない。むしろこの狭小な敷地と地域の特性を考えた時には、今より大きくない方がよい。そのためには恒久施設は5.5万人を収容し、仮設のスタンドで2.5万人収容すればよいのではないか。>

五輪での8万人収容も満足させた上で、その後の仕様縮小を考慮した設計で建設することを提案しておられる。また「50年後」を見据えるということで「レガシー」も重視されている。全天候式屋根や可動式座席は無くなるが、現実的で順当な提案だった

それに対して「絵画館前広場」への提案は、本来外苑の主役施設である絵画館の景観に対する思いが込められ、かつ長年使用されてきた軟式野球場等の撤去も伴うから、相当過激なメッセージになっているのではないだろうか。
しかし、昨日も記したように槇氏が提言で2度も言及して強調したにも関わらず、結局絵画館前広場への提案の方は今に至るまで識者もマスコミなども取り上げていないようである(少なくとも当方が見たり検索した範囲では無かった)。

なお、野球場があの場所に出来た経過を調べてみると、戦後占領軍が外苑一帯を接収していた時に米軍用野球場が設置された。それが占領解除に伴って返還された際に、元の状態に戻さず野球場を存続させてしまっている。接収解除後に野球場存続の条件が付いていたとは考えにくく、管理者の明治神宮による判断と想定される。聖徳記念絵画館は「明治天皇昭憲皇太后の御聖徳を永く後世に伝えるために造営された」という経緯があるのに、明治神宮自体が景観破壊継続を選択したことになる。その理由は不明だが明治神宮の年表では<1952年(昭和27年)3月31日接収解除 米軍施設を引き継ぎ、中央広場を軟式球場として公開(当初2面)>となっている。

当方は絵画館前広場の現状について槇氏と同様の見解を持つ者であり、提言を読み経過も調査して、改めて「このままにすべきではない」と強く感じた。
槇氏は結びの言葉の一番最後で次のように書いておられる。
大正12年(1923年)の関東大震災では7万人余の尊い人命が失われた。その頃造営に着手していたこの絵画館と前庭の計画は、その3年後に完成する。私は冒頭「歴史的遺産として貴重」という言葉を引用したが、更にここの歴史を振り返る時、それは大震災で亡くなった人々に対する鎮魂のみちにも見えてくる。 それが平成の都民が未来の都民に対して、また大正の市民に対するささやかな贈り物なのではないだろうか。>
このような諸々の思いもあって「絵画館前の広場を大正15年に完成した当時のデザインに戻す」と云う提案をされたことになる。

以下写真(昭和12年戦前東京オリンピック招致決定頃)にある当初意図された見事な環境が、昨日ご紹介した写真のように「景観への冒涜」と言っても過言では無いような状態のままずっと続いてきた。
今まで以上に多くの外国の方々が五輪で日本に来られて外苑に足を運び、特に西洋庭園に慣れ親しんでいる欧米の方々が絵画館前の状況を見たらどう思うだろうか。少なくとも肝心のいちょう並木側から立入禁止になっていることには驚くだろう。
イメージ 1

実際には五輪期間中サブトラック仮設予定であり広場の状態は分かりにくくなるが、終了後は槇氏の提案を真摯に受け止めるべきと思う。そして槇氏がされたように、新国立競技場の外苑景観への影響を語るのであれば、同様に「絵画館前広場の現状にも目を向けていただきたい」と切に思う。
(明日に続く)

以上
[追記]
昨日の追記で書いた遠藤大臣の「2000億円を下回る」発言記事を追いかけるように以下の記事が出た。1500億円台を上限設定しておいて、後は公募で1300億円台の入札を期待するという思惑か。ゼネコンとも内々に大筋での話は付いているのかもしれない。また、他の記事では1600億円~1700億円という数字も出ている。しかし、いずれにせよ検証委員会の報告が出ないうちに計画策定・公表すること自体が既に問題で、批判を招くのではないか。
新国立は6万人収容で1500億円”2015年8月23日6時0分  スポーツ報知
<政府は2020年東京五輪パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場の整備計画に盛り込む総工費の上限を1500億円台とし、収容人数を6万人規模とする方向で最終調整していることが22日、分かった。>

追記以上