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槇氏初回提言(1)「もう一つの大事なこと」

これまで技術やデザイン面などを主に検証してきたが、それらと並んで重要な要素である景観問題を取り上げる。
新国立競技場問題がクローズアップされたのは、著名な建築家「槇文彦」氏による「都市景観」と「神宮外苑の歴史」という観点からの提言が大きなきっかけとなったのは皆さんよくご存知のとおり。
まず最初にこの提言記事の中に掲載されている写真を示す。説明は後述。
イメージ 1

その上で、提言文章は分量が相当あるので一番重要なメッセージは何かと考えてみる。文章の後に編集長古市氏のインタビューがあり、次のようなやり取りで槇氏自らが「一番大事」と考えることを説明しておられる。
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古市●このエッセイでの一番大事なメッセージを、もう一度教えていただけますでしょうか。
槇 ●一貫したメッセージはこうした場所における巨大建築を様々な角度から検証していることです。したがって一番大事なことは、この計画案はまだ計画の初期の段階のものです。しかし時間はありませんから、なるべく早い段階に、そのプログラムを根本的に見直すことだと思います。・・・
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「巨大さ」を検証して「見直し」が大事である事を訴えた槇氏の提言に多くの人が共感した。そこに当初設定工費からの大幅値上がりと乱高下が加わって、最終的に総理による「白紙見直し」表明という劇的な事態に至った。(ただし、白紙化ついてはもっと根底に主としてキールアーチに関連する深刻な技術的問題があって、着工不能な設計になっていたことはこれまで示してきたが、それは今は置いておいて進める)

この流れは皆さんもご認識しておられると思う。大御所の提言はまず関係者の注目を集め、更に広がって国民みんなの財産である競技場建設に対する議論の活発化を促したのは大きな功績。
ただ、提言文章を客観的に読解を考えながら読んでみると、同氏は他にも重要な提案をしておられることに気づいた。「大事なことだから二度言います」と云う伝え方があるが、実際に二度繰り返している論点が存在する。

1回目青山通りから見た絵画館の美しさも、次第に絵画館に近づくにつれて失望に変わっていく。何故なのか。広い芝生の西側には仮設かと見まがう粗末な建物が幾棟か立ち並び、絵画館の前面道路は屋外駐車場になっている。>
2回目<最後に、私は今まで述べたどのシナリオになろうと、少なくとも絵画館前の広場を大正15年に完成した当時のデザインに戻すことを強く提案したい。先に触れた西側の建物を除去し、もしも駐車場が必要とあれば地下駐車場を設ければよい。・・・>

これは絵画館前広場に関する議論になるが、1回目は現在室内球技場やバッティングセンターなどで営業している建物について「粗末な建物」と手厳しい評価。2回目は「絵画館前広場を大正15年に完成した当時のデザインに戻す」と云う提案であり、非常に大胆な内容。

この「絵画館前広場」の件については、実は当方も全く同見解であり、記述を発見した時に驚くと同時に「さすが!」と感嘆。しかし、この部分はマスコミやブログなどでも取り上げられているのを見たことがない。一例を挙げると、新国立問題を追いかけてきている東京新聞で槇氏提言を受けての2013年9月24日記事がある。
青山通りから真っすぐに左右二列ずつ並ぶイチョウ並木。三百メートルにわたって続くその並木道を抜けた先に石造りの聖徳記念絵画館が見える。都心なのに高層ビルが視界に入らない、伸びやかな光景がここにある。>

これを現しているのが冒頭の写真になる。しかし、ご存じの方も多いと思うが、槇氏が強く批判している通り、実際は雰囲気の良い並木道を歩いて突き当たった場所からの光景が以下写真の様になっている。
イメージ 2

本来絵画館へ続く道があるはずがフェンスで止められていて、「立入らないで下さい」の注意書き。左手には槇氏が「粗末な建物」と評した施設が並ぶ。高層ビルは視界に入らなくても、見えるのは絵画館へのアプローチになる直線通路がぶった切られて立入禁止というあり得ない光景。冒頭の写真はこれが見えないようになっている。

槇氏の真意までは分からないが、絵画館前広場の件には強いメッセージが込められていることは間違いない。景観問題の根源にもつながる可能性があると思えるので、明日以降更に検証していく予定。

以上
[追記]
昨日も記した見直し(再検討)整備計画の費用上限設定に関して記事が出た。
<遠藤オリンピック・パラリンピック担当大臣は22日夜、山形市で開かれた会合であいさつし、今月中をめどに策定する新しい国立競技場の整備計画について、総工費の上限は2000億円を下回るように設定したいという考えを示しました。

政府公式会議等ではない会合での発言なので観測気球かもしれないが、2000億円に近い金額の数字が今後正式に出るなら嵐の予感。国民感情的にはコンペ時の1300億円がまず基準になるだろうが、そこからは可動屋根・可動座席等が削除されているから仕様的にはコストが下がる方向。それが2000億円を下回ると云っても2000億円に近い数字が出たら、それが仮に1800億円でもこれまでの経過からして間違いなく揉める。なお民主党政権時に1300億円設定でコンペが行われているから、民主党は1300億円までは強く追求しにくい。その1300億円を超えたら、どのような展開になるか今のところ予測不能

追記以上