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 ”日本として「知性の放棄よりはゼロを」”

白紙見直し決定後、様々な組織が立ち上がったり急ピッチの展開を見せている。そんな中、担当大臣からマスコミに直接内幕が明かされるという異例の事態になっている。まず下村文科大臣。全文を検証したいぐらいだが一箇所だけ引用する。
実は、私が、新国立競技場の建設が困難に直面している事実についてJSCの河野一郎理事長から初めて説明を受けたのは、今年4月のことなのです。河野理事長から、「(竣工がラグビーW杯のみならず、オリンピックにも)間に合いません」「予算が大幅に掛かります。JSCだけでは対応は無理。文科省の力を貸してほしい」と実情を明かされ、愕然としました。>

誰がSOSを言い出したのか謎だったが、JSCの河野理事長だったようだ。ただ、もっと複雑な事情も当然あると思われるが、当方はゼネコンが公共事業で培った政界ルートでアプローチした可能性を考えていた。一応JSCトップが動いたということで最後は職責の一端を果たしたとも言えるが、それにしても遅すぎた。

次に五輪担当遠藤大臣も現状を率直かつ詳細に語っている。
9月上旬にはやり直しの国際コンペを始めなければ間に合いません。陸上とサッカー、ラグビーの国際基準を満たす施設と考えていますが、開閉式屋根を作る余裕も費用も厳しいですよね。ただ、観客席の一部しか屋根がなくとも、コンサートは開けるようにしておきたい。観客数もサッカー・ワールドカップの招致には8万人規模が必要ですが、国際オリンピック委員会(IOC)の基準は6万人。常時8万人が必要なのか。ただ座席を可動式とすれば、またコストがかさむのでないか…など、考えることはたくさんあります」>

「陸上とサッカー、ラグビー」共用は方針が既に出ていたが、8万人も依然検討対象になっているようである。これで8月末の整備計画決定は目論見通り行えるのだろうか。
しかも次のようにも述べている。
<一括発注は入札の回数が減り、工期だけでなく工費削減にもつながる。ただ、前回のようにデザインにこだわる余裕はないでしょうね
「デザインには余りこだわらない」と云う方向で考えているようである。これはまずい、まず過ぎる。ザハで懲りたし、これまでの経過から工期・工費優先はよく理解できる。ただ今や国内事情だけでなく、これだけ大きな騒動になったから海外も見ている。

「デザインにこだわらない」などと言ってしまったら、日本は本当に先進国なのかという声が出てくるだろう。確かに怪しい面も有るが、今まで長年培ってきた先進国としての矜持をここで投げ捨てるのもどうなのか。デザインや景観の美的センスというのは、知性の重要な発露だろう。それにこだわらないなら「知性の放棄」と同様に受け取られかねない。

特に首都という特別な場所である東京は、他の都市とは違うセンスを見せることも必要ではないか。具体例で言えば、日産スタジアムのスッキリしたデザインは横浜のあの場所だから成立すると個人的には思えて、仮に新国立の場所に日産スタジアムを持って来たらザハ案と比べられ、どのような評価になるか。
またアスリートからのヒヤリングなども続いているし、国民の声もネットで多数寄せられている。それらを整理し取り入れて8月末までに整備計画決定と云うのはやはり早過ぎる。

当方が考える当面の結論としては、「整備計画決定を9月末まで延ばして、『ゼロ』も含めた再検討を行うべき」と云うこと。その際には以前から述べてきているように、「ゼロオプション」を提言した河野太郎議員をリーダーとして与野党の中堅若手が結集したプロジェクトチームで、「ゼロ」を含めた整備計画の再検討と策定を行ってもらう。これをやっておけば与野党は対立だけでなく協調ができる。作るという結論になった場合でも1カ月分ぐらいの日程は充分取り返せるし。政治対立での瑣末なアラ探しによる工事進行への影響を低減する効果は大きい。

ただし、工期は再検証すると間に合わないというような結論になるかもしれない。その場合でも中堅若手議員はしがらみに囚われず、率直に実態を国民に知らせて五輪成功にはどうするのが良いか、国民と対話しつつ考えて貰う。また新国立に関して全くゼロではなく、五輪という期日にはこだわらないが皆に喜ばれる新競技場として、しっかり仕様やデザインを練り上げてから建てることも検討してもらいたいと思う。

これらは理想論かもしれないが、逆に現実論に走りすぎても前述のデザイン面や多様な要望整理などの課題が山積になる難しいプロジェクトになっている。まずは整備計画決定にこだわらず、今月末時点では「ゼロも含めた検討と中堅若手中心で進める方向性」を打ち出すのが良いと思われる。それが新しい日本の知性にも、つながるのではないか。与野党の党首クラスも彼らに任せる決断をしてもらいたい。

片隅ブログからの提言としては以上だが、それとは別に上記記事中の遠藤大臣の写真を見て少々驚いた。素晴らしい笑顔でお酒や料理を楽しんでおられる。記者も以下のように表現している。
「みんなに祝福される五輪でなければ意味がない」と大福顔で協力を迫られると断りづらい。
イメージ 1

今の困難な状況でのことだから、予想以上の大物で期待できるかもしれない。デザインも「こだわる余裕はない」と言いながら何とかしてしまうことも有り得るか。記者の「大福顔」と云うのも言い得て妙で、人間は運も重要だから大きな福を引き当ててしまうかもしれない。新国立問題は人間観察の観点からも見ていくことが出来そうだ。

また遠藤大臣は関係閣僚会議で話が出て安部総理からも会見で言及があった「日本らしさ」との関連か、次のような発言もされたそうだ。
国として招致した五輪だけに、遠藤さんは今度の大会を「日本五輪・パラリンピック」にしたいとも意気込む。新国立競技場の観客イスに国産木材を使ったり、大会の建物の1つを伝統的な木造建築で作れないかとも構想する。
この辺はデザイン面やぬくもり感などの効果は出るかも知れないが、工期等がどうなのか。なかなか難しい面も多そうである。

以上
[追記]
もしゼロの場合は開閉会式が問題になる。当方もまだ案はないが、候補として磯崎新氏の「皇居前広場二重橋前広場)」案が昨年出されている。広さ的にも交通の便などでも非常に魅力的な場所だが、やはり皇居に近すぎるし皇居という静謐な環境との調和で無理が有りそうに思う。
そうなると他のスタジアムと云うことにもなるが、開会式は招致の時公約したコンパクト五輪の「選手村から半径8km圏内」が望ましいだろう。公約は完全には守れなくなったが出来るだけ守る姿勢は重要。日産・埼玉・味の素の各スタジアムでは圏内に入らない。ちなみに東京ドームは充分入る。ただしリハーサルに半年ぐらい必要と云われているし、セキュリティ等の準備などもある。
その年の野球開催に支障が出る可能性が高くなる。これは前述の他スタジアムにした場合も同様にサッカー開催が影響を受ける。
イメージ 2

開会式は難問で、そのために新国立が五輪までに必要ということにもなって、ゼロが成立しない可能性も出てくる。このような点に関しても河野議員らはゼロオプション検討時にある程度の構想はあると思われ、期待したいところである(それが皇居前広場だと前述のように厳しいとは思うが)。

なお、磯崎新氏は昨年11月5日の意見表明で、ザハ案が修正された経緯を以下のように想定されておられたようである。
<コンペの選考発表以後、さまざまな立場からの意見が発表され、さらに実現のためのアセスメント、プログラムや予算の見直しなどがなされたあげくに、この修正案が作成されたと伝え聞いております。>
 
実際はコンペ表彰式段階で既にザハ側が主要な修整を実施済みだった事はこれまでお伝えした通り。ザハを見いだしたと云われる磯崎氏でさえ想定経緯が違っていたわけで、新国立問題で事実関係が正しく伝わっていない事例が又明らかになった。真相は容易に伝わらないものであると改めて実感。

追記以上