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黒子のバスケ事件判決と量刑

一昨日「黒子のバス事件」の判決が出た。4年6月実刑で求刑通りであった。
これで当方として以下の量刑並びを考えていた範疇に入ってくる。(遠隔操作事件は予想)

 (1)マルハニチロ事件(反省・謝罪有り)…3年6月(求刑4年6月)
 (2)遠隔操作事件(途中から反省・謝罪あり)…4年
 (3)黒子のバス事件(反省・謝罪なし)…4年6月(求刑4年6月)

つまり、本事件の量刑は4年と想定。ただし、求刑に関しては検察の思惑が読めないので不明。
どこから漏れたかは別にして、真犯人メールのスマホ発見情報漏れの大失敗を、結果的に佐藤氏がカバーした形になった恩義的なものを検察側がどう考えるか。
また、初適用と思われ、大阪犯行でも誤認逮捕者に適用どころか、所轄となる警視庁が聴取もできていなかった模様である「ハイジャック防止法第4条」違反容疑の扱いが焦点だろう。

これがこれまでの個人的見立てであったが、当方の量刑検討に新たな要素が二つ加わった。
一つは、8月19日記事で取り上げた「再犯加重」の件である。
これについては、その後も考えてみたが、記事で紹介した書込みの以下の部分が重要と思える。
論理だけからいうと、「もともと上限に達していないのだから、再犯加重してもそれより上に行くはずがない」 
となりそうだが、実務では「再犯加重の趣旨から考えて、量刑も重くすべき」というのが素朴な国民感情で あると思われ

本事件では「もともと上限に達していないのだから」の方が効いてくるのではないか。
ハイジャック防止法第4条の上限10年だけでも、本事件の求刑は達しないのではないかと思われるからである。
冒頭に記した他2事件と比較してみると、「56億円以上の損害金額」(マルハニチロ事件)、「全く謝罪・反省なし」(黒子のバス事件)という、本事件(遠隔操作事件)に比べて量刑が重くなる要素がある。

逆に本事件は再犯であること、当初は完全否認で保釈後に偽装メールを送るという悪質行為があったこと、などを考慮することになるだろう。しかし、他2事件も重大性があり、総合的に考えると3事件は(1)~(3)に記した量刑並びで妥当性があるのではないかというのが当方の見方。
つまり、ハイジャック防止法第4条の最長10年どころか、最終判決が4年程度とすれば、他2事件と同じ4年6月の求刑でもバランス的には有りえるということになってくる。
ただし、検察側はハイジャック防止法違反で起訴した意味を持たせるために、他2事件よりある程度は長い求刑にする可能性は高いと思う。しかし、やはり最終判決のバランスまで考える必要もあるだろうから、そう長くは出来ないのではないか。
例えば相当思い切って他2事件の2倍の求刑にしたとしても9年であり、ハイジャック防止法単独の上限にも届かない。再犯加重や併合による刑期上限の拡大を幾ら計算しても、実質無意味と当方は思っている。

ただ、再犯加重適用対象となるのは確実そうだから、それは情状として再犯の心証がどうなるかということだと思う。
再犯で心証が悪くなるのは当然だが、再犯加重で刑期上限をアップしても意味が無い場合はどうなるか。再犯間隔が例えば出所後5年1月(再犯加重適用)と4年11月(再犯加重無し)という、たかだか2ヶ月ぐらいの違いだったら、裁判官の心証にどの程度影響するかというような話になってくる。(本事件は再犯加重期間終了が、もし2012年8月だった場合には、6月の犯行は終了の2ヶ月前ということになる)
この辺は裁判官個別によっても考え方は違ってくると思うので、やはり「自由心証」ということになるだろう。

以上が再犯加重について考察してみた結果であるが、もう一つは雲取山証言が関係してくる可能性がある。
何故量刑にも関係してくるのかと思われる方がいるかもしれない。
上記(1)と(3)の事件の重大性は、ざっくり考えると同じぐらいではないかと当方は感じている。実際求刑が同じ4年6月であるから、プロである検察がそのような評価をしていることになる。
それでも判決は3年6月と4年6月で差が開いた。
この差の大部分は、反省・謝罪の有無という情状面での差ではないかと当方は思う。
本事件もハイジャック防止法違反の扱いを除けば、総合的な重大性は他2事件と同じぐらいではないかという見立てで、情状が「途中から反省・謝罪有り」のため、量刑は(1)と(3)の中間ぐらいに来るのではないかという推測を前述した。

しかし、雲取山がもし「虚偽証言」の場合(その可能性は高い)、反省していないということに直結しかねない。反省したと見せかけての虚偽だから、同じ反省なしでもその旨を正直に言っている「黒子のバスケ事件」より悪質と認定されても仕方がない。

「虚偽証言」は大きな問題であり、色々な所に絡んでくる。「協力者又は共犯者」の可能性はさておいても、情状面で裁判の根底に影響を与えかねない。
早急に本事件の法曹三者で検討を始めるべきと思う。

特に検察官は、虚偽証言をスルーしただけでなく、昨日書いたように「埋めた」という証言自体が虚偽であることを知っていた、或いは虚偽であることを容易に見抜けたにも関わらず、結果的に虚偽証言を見逃したということは、実質的には「虚偽への加担」と同等と見られても仕方がない。

後から発覚したら不祥事になりかねないことだから(既に当ブログで書いてしまっているが)、検察側も雲取山で12月1日片山氏が埋めてないことを認めて、片山氏の再取調べを行うとともに再捜査したほうが良いと思う。
或いは「埋めた」という証拠があるのなら、虚偽証言の意図を確認し、その理由と埋めた時刻や手順などの推定と裏付けを今後の公判で明らかにすべきである(今は片山氏に直接聞けるのだから確認は容易なはずである)。
また弁護側も後で情状最悪などにならないよう、証言訂正が必要ということであれば早急に行った方が良いと思う。或いはもっと深い真相などがあれば、片山氏が正直に話すように持って行って頂きたい。

なお、「虚偽」という言葉に違和感を持つ向きもあるかも知れないので、その点については次記事で記す。

以上