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第15回公判後記者会見2(抑圧を解く)

会見で佐藤氏が臨床心理士の長谷川氏の見解について言及している部分を抜粋。

<(4分頃~)
長谷川先生は既に何回かの感想的なことを書面にしたためて頂いていまして、それを裁判所に提出していまして、或る程度詳しいことは書いてあるんですけども、簡単に言うと「裁判所でずっと彼が述べてきていることというのは、或る意味では全部が本当のことではなくて、実際はちょっと取り繕っているような答えがあって、徐々にではあるけども抑圧というか、そういったものが解けて自分(長谷川氏)に対して実はこうだったんだということを言い始めているところもある。そういう意味では、今まで彼が法廷で述べてきたことが全てそのままのことではないと考えられるので、そういう抑圧を解いて実際のところを語らせる必要があるんじゃないか」ということをおっしゃいました。>

<(18分頃~質疑応答開始)
----法廷で話していることも事実ばかりではなくて・・・、どの辺が事実じゃなくてどの辺が本音を話していると見ればいいんでしょうか?(江川氏)
詳しい話は長谷川先生が聞いていらっしゃるんで、実は私も知らないんですけども、長谷川先生が言われたことである意味で当たっているのは、今日も含めてですけども被告人質問ということは事前にかなり念入りな打合せをした上で、こういうように聞くからそれについてどう答えるんだということをしてるんですが、答え自体が嘘だというようなことは基本的に無いわけですけども、ただ長谷川先生が言われるには「準備した質問に対して準備した答えは記憶力も良くて、かなり言えるんだけども、そうでない質問に対してどう答えていいか分からない」というようなこともある。

ただ、かなりハッキリしていることは、ドコモショップ事件ということについて、「別に特別な恨みがあったわけじゃないんだと、たまたま秋葉原だったから面白いから選んだんだ」と言ってるんですけども、「自分自身がトラブルが有ったことを偶然思い出しました」と云うようなことを言うんだけども、それだけじゃなくてやっぱり揉め事があったことは事実なので、ターゲットに選んだことの中には、そこ(ドコモショップ)との出来事があったんだということを長谷川先生には話し始めているらしい。
やはり、表面的に彼が理解している動機というものと、その底にあるものというのは違う。

長谷川先生の説明によると、三層あるそうですけども、一番表面的なところと、第二層のところがあるんだけども、第三層のところは彼自身も全く分かっていないようなところ。
それで弁護側は極端な言い方をすると第一層のところの非常に取り繕ったような答えを引き出しているかもしれないけども、今やっと第二層のところまで少しずつたどり着きつつある。
だけど本当のところは第三層の深い所にあるんだと。そこのところを解明しないといけないということを言われて、裁判所にはそういう趣旨の書面は出したんですけども、ということです>

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[当方感想]
(1)抑圧
長谷川氏は「抑圧があってまだ全部本当のことを話していない」という見立てのようである。「抑圧」の中身までは説明されていないが、真相を解明するためには抑圧を解いて真実ありのままの証言を得ることが必須。
「解くことが出来る(或いは出来そう)」という著名な専門家(長谷川氏)がおられるのだから、是非鑑定を行ってもらうべきだろう。
(2)却下と禍根
長谷川氏見解は書面で裁判所に提出済みと云うことで、それでも結果的に裁判所が情状鑑定申請却下したことは非常に残念。まだ却下理由が明らかでないとはいえ、「解明の糸口が見え始めた」と専門家が述べているのに、門前払いのような形は禍根を残すのではないか。
(3)雲取山証言の特異性
本当のことを話していない可能性の中で、雲取山の証言の詳細までは長谷川氏も分析していないと思われる。まだ「取り繕っている」部分があるとの見立てだが、雲取山証言は何を取り繕うのだろうか? その意図が今のところ推測できない。結局雲取山だけが非常に特殊な証言になっているように思える。これも含めて解明を期待したいが、心理鑑定も無しでは難しそうである。
(4)却下批判と控訴意向
情状鑑定が認められない場合、弁護側は私的鑑定は行わず、佐藤氏は今後の公判では裁判所や検察側を強く批判する姿勢に転じると宣言した。そして判決を聞いて納得行くものでなければ(多分そうなるだろうが)、控訴することも会見で表明した。これはやむを得ない対応と当方は思う。情状鑑定却下には今後マスコミ等の批判も出てくるだろう。
(5)費用や手間
正式な情状鑑定を行う費用と控訴審にかかる費用(裁判所や検察等)を比べたら、後者の方が国としてかかる費用は大きいのではないか。手間もかかることになる。裁判長がなぜ却下の判断をしたのか、国民としても明らかにしてもらいたい。そして、佐藤氏が述べていたように、すで国費も1億円を超える投入がされている特異な事件であり、この事件で情状鑑定を行ったからといって他の事件も全部鑑定必要とはならないだろう。
(6)裁判長の傾向
裁判所としては、むしろ情状鑑定やらない理由を探すほうが難しそうに思うのだが、やはり前例踏襲ということが大きいのだろうか。また、本事件の裁判長は保釈申請も却下しており、その流れかも知れない。ただし、保釈で結果的に真犯人メールが送信されたとはいえ、当時の状況では保釈許可の方が当然の判断であったと当方は感じたし、高裁も妥当な判定をしたと思う。(成りすましメール一本で揺らぐとしたら、そもそも検察側論証自体が問題)
その意味で情状鑑定却下は、本事件裁判長の考え方の傾向を表しているのではないかとも思われ、却下理由にもよるが判決にも今回の決定の影響が出てくることが考え得るだろう(裁判官は3人いるがNo2の陪席は今年になって交代しており、判断には裁判長の意向のウェイトが大きいと推察される)。

以上