ハイジャック防止法(航空機の強取等の処罰に関する法律)検討追加
(1)ハイジャックという犯罪の特殊性・・・大勢の人質を取って機体ごと外国に行かれてしまう
(2)航空機という乗り物の特殊性・・・止まったら落ちるし、落ちたらまず助からないので危機が切迫しやすい
これに更に9・11後の影響が加わって、この法律は重みを増したと云えるだろう。
(3)テロ対策・・・9・11米国同時多発テロで航空機が乗っ取られテロの手段として使用された
このような経緯がある中で、片山氏は公判で以下の様な証言をしている。
< ーーNY行きにしたのは?
9.11のテロがあったので、テロにはより過敏に対応する地域と思った。>
正直な発言ではあるが、テロとの関連を重視すればハイジャック防止法は適用しやすくなるだろう。
ただし、紹介済みであるが大阪被害者によると「取り調べが始まって10日ほどして、JAL脅迫の事件もほのめかされた。」とのことである。
本当にハイジャック防止法という重罪適用必要有りの事案と考えていたなら、背後関係等の調査も必要で、JAL脅迫の聴取がこれほど軽く扱われるはずがない。また、その後も聴取されたかどうかは不明で、結果的にJAL脅迫での逮捕は行われていないのではないかと推測される。
これで適用は適切なのか。
さらに、指摘済みであるが「ハイジャック防止法第4条」は初適用ではないかと思われる。
このような状況で罪状認否やり直しで起訴事実を認めたとはいえ、量刑への影響が一番大きくなる可能性があるのだから法律論争無しというわけには行かないのではないか。
しかし、本事件の否認から全面自供への特異な経過で、どうしても攻めにくくなる弁護側はどうするか。
また、rec*lde**des*さんからコメントで頂いた「テロとハイジャックの関連資料について、警察庁、内閣官房の閣議決定資料」を眺めてみたが、当然のことながら本事件のような「単なるイタズラの犯行予告」については全く言及されていない。
検討が抜け落ちていることが起きてしまったということになる。さてどう考えるのが適切なのか。
更に、紹介済みの黒バス事件とマルハニチロ事件では、人体への本格的被害は出なかったとは云え、食品に毒物混入が行われた。国民生活に対して影響が大きく、食品テロと云えるかも知れないような事件である。また、会社や従業員・関係者、地域経済などの損害も大きかった。
制定が古いことも課題が多くなる要因だろう。その後の社会情勢や技術の変化は大きい。
その上で、後年の1987年に制定された食品毒物混入防止法などの適用とどう整合性を取るのか。
(毒物混入防止法の正式名称は「流通食品への毒物の混入等の防止等に関する特別措置法」で、これも業務妨害罪の特別規定と解すことが出来る)
今回どのような論議が行われるか、あるいは阿吽の呼吸などで方針が大体決まって法廷での議論は余り行われないのか、
検察側・弁護側双方の対応が注目される。
以上