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「黒子のバスケ」事件との量刑比較

本事件の進行と重なる時期に世間を騒がせて昨年12月に犯人逮捕された「黒子のバスケ」事件の公判もすでに始まっている。
黒子の方は脅迫文が郵送主体だったというような違いはあるが、量刑に関係する部分は似ている点があるように思えたのでまとめてみた。
イメージ 1

特徴的なことは上表の注2にも記したが、以下記事のように黒子の方も業務妨害罪以外に「流通食品毒物混入防止法」というもっと重い罪に問われる可能性があった。
”回収の菓子からニコチン 初の毒物検出、被害なし”
<警視庁捜査1課はこれまでの威力業務妨害容疑に加え、刑罰の重い流通食品毒物混入防止法違反容疑の適用を視野に捜査している。>

最終的に起訴されなかったようだが、流通食品毒物混入防止法違反に問われていた場合の最長刑期は奇しくもハイジャック防止法と同じ10年。
結果的に両事件の量刑比較では、黒子のバスケ事件は業務妨害罪の併合罪で最長は4.5年。
遠隔操作事件の方はハイジャック防止法の最長10年に併合罪の1.5倍があって最終的には最長15年になる。
両事件を分けるポイントは、業務妨害罪以外にもっと重い法律違反の適用があるかどうかの違いになる。

黒子の方の毒物混入を上記記事で更に詳細に見てみると、被害はなく、混入量は致死量の100分の1程度、「毒入り危険」などと書かれたシールが貼られていた等の状況がある。
しかし、毒物が混入されたことは事実である。(硫化水素もあるがそれは置いておく)
これと遠隔操作事件のハイジャック防止適用を比べるとどうか。
爆破予告は行われたが、「進路変更せよ」とか「引き返せ」などの指示はなく、実際に引き返したのはJALの判断である。
また、爆破をやめる条件はオウム関連受刑者全員の釈放であるが、数が多すぎるし仮に釈放してもそれを通知して交渉する相手さえ書いてないのだから、フライト中という限られた時間内に対応することは全く無理な話。
つまり、イタズラと判断する以外に無い内容ではないか。

実際には人それぞれで受け止め方は色々あると思うが、このような状況があった上で黒子のバスケ事件は適用法令上から求刑最長が4.5年になる。
遠隔操作事件ではハイジャック防止法違反の起訴があるが、事件全体の比較として黒子を大幅に超える求刑がありうるか、或いは出来うるか。
まずは黒子の方が先の求刑になると想定されるので、どのような求刑になるかは本事件にも潜在的なバランス面での影響があるのではないかと個人的に考えている。

以上
[追記]
江川氏傍聴メモでJAL機長の証言は次のようになっている。
<社内でカテゴリー2(信憑性が高い、もしくは信憑性は低いものの何らかの措置を行う)と判断したと報告を受けた。メールの内容を読んでもらったが、本当かもしれないが、いたずらのようにも思えた。>

まず、内規と思われるカテゴリー2というのは信憑性が高いのか低いのか分からない書き方になっているようである。このような曖昧な規定を作っている方が心配になる(笑)
また機長は「メールの内容を読んでもらったが、本当かもしれないが、いたずらのようにも思えた」ということで、少しは「本当」の可能性を考えたのだろうか。江川氏は「機長らしく落ち着いた口調」と書いているが、冷静な判断で「少しは本当かもしれないと思った」ということなら判断力も心配になってきた。

勿論会社も機長も慎重を期すのは分かるが、予定変更して引き返すのも安全上のリスクが無いとは言えないのではないか。(「燃料の残量を伝え、フライトプランの再作成」や「最大着陸重量を超えていたので、途中で燃料を投棄した。 」というような処置もしたようである)

引き返したのは米国の航空管制やテロ対策などとの関係による要因もあったというような報道も見たが、そのような要素も含めて全体的なリスクをどこまで検討して処置を決めたのか。またこのような事態を前から想定して対応策を決めてあったのかどうか。特にテロ対策に敏感な米国との調整はどうなっていたのか。もしやってなかったら怠慢という以外にないし、調整してあったとしたらイタズラと判断するしか無いような内容で爆発物や不審な乗客も見つからなくても引き返す取り決めになっていたのだろうか?。

機長は次のようにも言っている。
<こういうことはあってはならない。二度とこういうことが起きないように、と思う。 >
しかし、「起きないように」と思うだけでは対策や改善は進まない。
日本を代表する航空会社として、少なくとも本事件を教訓にしてもっと緻密かつ合理的な対応規定に変わっていることを信じたい。

追記以上