前科時の量刑比較
昨日は本事件の量刑に関して他事件と比較してみたが、本事件の前段階として前科の事件も重要と考えているので、前科時の量刑比較も行ってみる。
比較対象は当ブログ昨年11月15日の以下記事にある事件である。
”「イヴ」との関連性はあるのか?”
この事件の犯人である「イヴ」或いは「グール」こと小野某(「O」)という人物は、犯行予告を繰り返していて、2005年から昨年2013年まで以下のように4回逮捕されている。
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(1)2005年1月犯行…懲役1年3月、執行猶予3年
「O」は今年1月中学の出身校に侵入し、「先生を殺す」などと書いた紙を校内に張るなどしたとして、建造物侵入と脅迫罪に問われ、3月に懲役1年3月、執行猶予3年の有罪判決を受けていた。
(2)2005年7月犯行…、懲役1年6月の実刑判決
東京都品川区の無職「O」は7月9日、インターネットの掲示板「2ちゃんねる」に、自分が卒業した品川区立小学校の実名を挙げ、「学校に乱入して子供たちを皆殺しにします」などと書き込み、同小の業務を妨害。警視庁大井署に威力業務妨害容疑で逮捕された。
(3)2010年11月犯行
「小学校に乗り込み、鉄パイプで児童殺す」と書き込み 容疑の25歳男逮捕 神奈川県警
(4)2013年9月犯行
警視庁町田署は22日、JR町田駅の爆破を予告する電話をかけたとして、
同署によると「今は話したくない」と供述している。
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特に注目されるのが(1)と(2)で、両方とも片山氏前科事件と同じ2005年に起きている。
大きな違いは、「O」の場合は(1)の初犯時に執行猶予がついているが、片山氏の場合は初犯でも実刑1年6月判決だったこと。
この際の服役で片山氏は回避性人格障害とされていた状態から大きく改善が見られたのは事実であろう。
しかし、「O」と同様の小学校対象だけでなく、音楽会社関係者への脅迫や名誉毀損もあったとはいえ、何故初犯で実刑1年6月という厳しい判決だったのか。しかもその判決に控訴しなかった事情もまだよく分からない。
結果として服役に対しては悪感情が無かったとしても、初犯で実刑判決だったことに関して恨みのようなものは無いのだろうか。この辺は動機に絡んでくるので重要であり、解明が進むことを期待したい。
なお、上記(2)の犯行の裁判を阿曽山大噴火氏が傍聴した記録がある。
”2ちゃん犯行予告男は弁護士泣かせ?”
http://web.archive.org/web/20060724181502/http://www.nikkansports.com/ns/general/column/asozan007.html
「O」は犯行を繰り返しており、この法廷でのやり取りを見ても相当精神的に病んでいるようである。片山氏はそこまでは行っていないと思われるが、その分もっと特殊な心理状態の可能性がありそうに思う。やはり、精神鑑定(心理鑑定)は重要になるだろう。
また江川氏傍聴メモによると心理鑑定に対して検察側は以下のように述べているとのこと。
<検察側が「必要性も相当性もない」として反対意見を述べた。検察側によれば、「被告人の行動は、何とかして罪を逃れようとする卑劣な行動として十分理解可能」「心理鑑定を行わなくても、裁判所は再犯や更生可能性について判断できる」などとしてしている。>
このような意見は検察側の常套句のようだが、日本の司法当局は犯罪者の心理的傾向や類型などのデータベース化をどう考えているのだろうか。
データーベースは有るのか無いのか。無いとしたら問題と思うし、有るとしたら本事件は鑑定を行ってデータベースに追加すべき事例だろう。
以上
[追記]
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片山氏の場合も初犯から併合罪であり、黒子もそれと同様に求刑3年で判決も同じく1年6月程度になるか。或いは人的被害は無かったとはいえリアルでの毒物混入・硫化水素があり、公判陳述でも反省・謝罪が見られないようなので求刑が3年を超えたり、実刑2年判決も有りうるか。
本事件での片山氏は、2回目の犯行であることや誤認逮捕意図、保釈後の証拠隠滅やそれでバレるまでの完全否認など更に情状が悪いことが考えられる。仮に業務妨害・ウィルス供用という最長3年刑の併合だけ考えた場合も、黒子より重くなって懲役3年程度の実刑もありそうに思う。
後は、やはりハイジャック防止法違反の扱い次第と云うことになってくるだろう。
昨日も書いたように色々見方は有るだろうが、少なくとも当方が見る限りにおいてはJAL側の対応も妥当と言えるものだったかどうか疑問も有る。
また基本的に本事件の犯行がハイジャック防止法違反に相当するのかという論議も有りうるだろう。そもそも本来の立法趣旨であるハイジャックやそれに類するような直接的行為などは全く行っておらず、イタズラと容易に分かるレベルの犯行予告のみである。
本事件の裁判における名称は「航空機の強取等の処罰に関する法律違反等 平成25年合(わ)第48号等」であるが、「航空機の強取等」には違和感を感じる人も多いだろう。
「強取」は機体を対象にしており、それに「等」が付いたらイタズラの犯行予告まで拡張するのか。一般的な業務妨害罪で処罰できないのか。
どこまでこの法律を適用できるかは論点にならざるを得ないだろう。
これまでは有罪か無罪かで争われてきたから、個別法令適用の是非については争点になっていなかったが、状況は大きく変わった。
豪腕佐藤氏が完全守勢側に回って、どのような対応で検察側と渡り合うか注目される。
追記以上