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立証構造

本記事は内容的に昨日の続きになるが、公判において検察側は開発痕跡がファイルスラック領域で見つかったことを重視していた。それに関する当方見解を記す。

ファイルスラック領域に痕跡が残っていたから、そのPCで開発されたと推認される」というのが検察側の基本的主張。
しかし、当方としてはそもそも「遠隔操作でVSによるソフト開発が長期に渡って行われていたという話自体が荒唐無稽」ということを検察は強く主張すべきだったと思う。
「開発されたかどうか」では技術的詳細に入りすぎる。
検察側が開発の証拠を提出しても、弁護側も技術者が出てきて反論するから、最終的に技術に詳しくない人にとっては何を言っているか良く分からなくなる。
IT技術開発とは無縁である肝心の裁判官もそうなってくるだろう。

別に真犯人がいて、そんな手間のかかる面倒なことをする動機があるか?」という論点なら、技術に詳しくなくても裁判官が考える中立的な常識で判断しやすくなる。
ただし、周りから感心を持って見ている人には様々な考え方もあるだろう。
しかし、裁判であるから裁判官に納得してもらえば良い。
裁判官に技術面の論議をジャッジさせるよりは、裁判官が合理的に考えて「そのような真犯人が存在するか否か?」の命題に持っていく方が検察側としては適切だったと思う。

なお、ファイルスラック領域に関して、佐藤氏が以下のように指摘していたことは、検察側の立証構造の問題点を突いていたことになる。
<検察側が公判が始まってから「ファイルスラック領域にiesys開発の痕跡が残っていた」という点を犯人性の最大の根拠にし始めたと指摘し、「公判前整理手続きでは全く主張していなかった。>

検察側はもっと簡単に立証できると思っていたところに難航し始めて、ファイルスラック領域で見つかった履歴に活路を見出そうと途中から考えたのではないか。
しかし、前述のように「そもそも遠隔操作による開発という主張には無理がある」ということを前面に出した上で、更に技術面も含めた立証を組み立てるべきだった。
結局本事件では検察側の立証構造に色々問題があって難航していたところを、片山氏の抜けの多い行動で最後に救われたという構図になるだろう。(見方によっては真犯人メールの前までは無罪になる目もあったのではないか。当方はその見方)

以上