Webアプリケーションとの違い
昨日記事の江川氏と片山氏の質疑で、当方として一番ピンときたのが以下の部分。
< (5)今まで片山さんはどのようなプログラムを作って来たんですか?
→逮捕される前の3年間ぐらいは大体はWebアプリケーションのシステムで、サーバー側で動く方のプログラムだったんです。>
ただ、片山氏派遣先での情報が少なかったこともあって、ネットでもこれまでこの違いを指摘する見解は見たことがなく、当方も正直盲点であった。
違いを概略図にしてみた。
今回のiesysを中核としたトロイは片山氏の言うように「一つのシステム」となっている。
そのために開発されたソフトは、PCで動くiesys.exeやCryptTool.exeである。
以上のトロイ構成に対して、Webアプリケーションの方は出来上がっているシステムの上でサーバーアプリケーションソフトを作ることになる。(PC側のソフトもJavaScriptなどで作る場合はあるが、片山氏はサーバー側をやっていたと言っている)。
結果的に、今回のトロイの方が格段に難しい開発と思われ、システム設計の能力も必要となる。
片山氏もそのような趣旨を述べているし、業務経験としても「システム構築を担当したことはなく、しかも何十人もの体制の歯車の一つだった」と言っている。
この違いは技術的に見ると非常に大きい。
しかも、本来業務の「それなりの成果物」の存在があるとすれば、同時に開発していることになり、そのような更に困難と思われる所業を片山氏ができたのだろうか?
ただ、技術者は様々な考え方が持った人がいて、難しいかどうかさえ同意しない人もいるかもしれないので、今は一応個人的見解としておくが、
もう一つ個人的見解を付け加えると”警察・検察のサイバー捜査官も難度が高いことは分かっている”と思う。
これぐらいも分からないようなら、サイバー捜査官などやってもらっては困るレベル。
そして、片山氏が出来たかどうかは、内心では困難と見ているか、或いはそれを考えないようにしているか。
その上で今のような公判進行を行っているのは、「都合の悪いことは隠す」という定番手法が使われている可能性がありそう。
もしそうであれば、そのような検察側の姿勢に対抗するために、弁護側に(併せて裁判所・検察にも)以下の提言を行いたいと思う。
-------------------------------
(1)同僚証言者への追加質問
以前記事で紹介済みであるが、同僚の調書は片山氏の話で以下のようになっているとのこと。(片山氏はややオーバーに言っていそうだが、調書も作文や誘導が有り得る)
この同僚に上図のような全体状況を見せて、「片山氏がこのトロイシステムを一人で考えて約一ヶ月弱で作れると思いますか?」と改めて聞いてみるべきと思う。
想定回答としては、「おそらく出来ないと思う」と言うか、言葉を濁して「出来るか出来ないか分からない」というようなことで、「出来ると思います」とは言わないと見る。
(片山氏をよく知っている同僚なら、江川氏インタビューで片山氏が答えた技術的能力が正しい場合、それを大体知っていて、「出来る」とはとても言わないと思われる。また片山氏をよく知らない同僚なら証言の価値は下がってしまうのは当然)
「出来ると思います」と言う回答が出なければ俄然弁護側有利。
同僚も技術者であり片山氏を知っている人が「出来る」と言えないのに、もし有罪判決出そうとすると技術開発を全く知らない裁判官が「被告人には開発できる能力と環境があった」と推認する必要がある。
これだけ裁判の進行が広く知られてしまうと、幾ら自由心証が許されていても無理な推認は批判を免れないから困難ではないかと当方は推察している。
(2)検察側証人に「開発可否」の見解を求める
同僚だけでなく、iesys解析を担当したサイバー捜査官にもう一度来てもらうか、文書で「1ヶ月弱で作れたと考えるか?」と正式に聞いてみるのは更に効果的と思う。
「作れたと推測できる」という回答が明確に出せなかったら、この裁判はもはや無罪決定相当と当方は見る。
作れたかどうか検察側が明言できないものを、裁判官が勝手に認定など有り得ないからである。
また、「作れたと推測できる」という回答が出たら、「では開発工程はどうなってましたか?証拠や証言とともに説明してください」と問いただせば、今までの対応からすれば出てくる訳がないと思う。
しかも開発の証拠や証言と称するものがあっても取調で本人に確認してないのだから、有効な裏付けがないことは今からでも分かってしまう(笑)
開発問題から攻めたら、もう詰んでいるようなものではないだろうか。
それが、昨日書いた「こつこつ開発の問題をやってきて良かった」と云う意味で、詰みが見えたということである。
(ただし、当方も率直に言って開発痕跡との矛盾が今は全く説明できていない。しかし、検察側が説明できなければ白黒決着付かずになって推定無罪で詰み)
(3)真相究明
それでも本事件はもはや白黒だけでなく、関心のある国民からは真相解明が期待されているだろう。
そのためには、やはり公判の進行を一旦停めるべきと思う。
そして期日間整理手続というやり方があるようなので、それを開いて「開発の痕跡」と「開発できたかどうか?」の問題を併せて集中論議してもらう。
その際、検察側・弁護側とも一旦以下のように双方譲って論点を絞る。
・検察側…開発工程を検証の対象にすることに同意する
・弁護側…「片山氏PC等が遠隔操作されていた」という主張を保留にして持ち出さない
これは、「遠隔操作されていた」という想定は、可能性が広がりすぎて論議が収束しないのは明らかだから一旦それ無しで考えてみるということ、及び検察側も正面から開発問題に取り組んでもらうというのが趣旨である。
この条件で検証してみて真相解明に取り組んでもらいたいと思う。
それをやらないで先に進むのは、次項で説明する問題により禍根を残すことになるだろう。
(4)本事件の前半・後半問題
この問題は昨年からずっと考えてきたものであるが、、似たような考えをお持ちの方もおられるだろう。
概要を表にまとめてみた。
一目瞭然で前半は犯罪、後半は犯罪ではない。
よって前半での大きな矛盾点を集中論議もせずに先に進むことは、後半の犯罪では無い事案を大きな根拠にして白黒を決める可能性が出てきて、事件の本質から逸脱する危険性がある。
それなら、犯行声明メールも全部は信用出来ないことになるのは明らか。
しかし、検察側の単独犯の主張は、基本的に犯行声明メールで犯人が告白した一連の犯行の内容を根拠にしている(ドコモショップのみ除く)。
犯人の書いたことで信用出来ない部分があるなら、事件の前半と後半で実行者が違う可能性も否定できなくなるのではないか。
前半を実行した人物が全情報を後半実行者に渡すか、後半実行者が独自に前半実行者の情報を入手したか。
「大阪平野母子殺人事件」最高裁判決で現場状況からは怨恨の可能性が推認されるにも関わらず、「宅配便や郵便配達を装った通り魔の可能性」まで考慮せよという判示があるのだから、一見有り得そうになくても様々な可能性を検討しなければならない。
よって、前半部分での大きな矛盾をそのままにして先(後半)に進むのは大きな問題がある。
-------------------------------
提言以上であるが、現行システムの強固さを考えれば、特に(3)(4)などは荒唐無稽となるだろう。
又(1)(2)の再質問の手続き等の詳細は未把握である。
それでも、個人ブログの特性を活かして当方が考える「本来とるべき道」を個人メモとしても書いていきたいと思っている。
なお、「開発問題で本事件が詰む可能性がある」ことと、「開発痕跡との矛盾」は今後更に追求予定。
以上