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自由心証主義と東電OL事件

昨日一審と上級審で判断が異なった重要事件例として「東電OL事件」を挙げたが、自由心証主義との関連でこの事件を更に考察する。

この事件で最終的にゴビンダさんが無罪になったことは大きなニュースになり、皆さんご存知の通りである。
ただ、報道された再審無罪理由は、主に新たなDNA鑑定が出たことだったと思う。
しかし、知っている方もおられると思うが、そのような新証拠が出る前に1審の東京地裁は無罪判決を出していたのである。
それを、東京高裁が何ら新証拠も無かったのに完全にひっくり返して有罪無期懲役判決を出し、最高裁でも確定した。

この経過の中で、1審無罪なのにそのまま勾留を求めた検察の請求を一旦はねつけたのが当時の木谷裁判官である。
それを再度の請求に対して勾留を認め、更に控訴審の裁判長として逆転有罪判決を出したのがT裁判官。
この人物は足利事件でも高裁裁判長として無期懲役を支持して控訴棄却し、冤罪を防げなかった。(その他にも色々冤罪事件に絡んでいる)
それでも、東電OL事件は一審無罪から特に新証拠もないのに逆転無期懲役判決であり、間違いなくこの人物が冤罪を作り出した責任者ということになる。
ネット上に地裁と高裁の判決文や解説がある。
興味がある方は時間はかかるが読んで見ることをお勧めしたい。例えばこれの中に判決文がある。

地裁判決文は証拠をよく吟味して論理を組み立てて妥当な無罪判決を出している。
(ただ、1審判決も途中までは有罪かと思ってしまうような書き方があって、やや不明朗な面もある)
それを高裁では、結果的に捻じ曲げて、逆転有罪にしてしまった。
自由心証主義ではここまで曲解レベルの正反対の結論でも許されてしまうという実例になっている。

更にもう一つポイントが有る。当時の地裁裁判長に関してWikiに以下のように書かれている。(Wikiでは実名)
< 12月にO裁判長が八王子支部に異動となり、この点につき佐野眞一は左遷に遭ったと指摘している。その後、O裁判長は福井地方裁判所などを経て、依願退官した。>

調べてみたら2000年4月に東京地裁で裁判長として無罪判決を出した後、同じ年の12月に八王子支部に異動となっている。同じ12月には高裁の逆転有罪判決が出ている。
東京高裁判事も務め、東京地裁裁判長だった人が支部へ飛ばされ、しかも支部長になるとかの昇格も無いのでは当然左遷と見て良いだろう。時期的にも無罪判決の懲罰人事であろう。最終的に一度も東京に戻れず退官。
この処遇も恐ろしい話で、正しい判決を出した人物のほうが左遷されたのである。

翻って本事件について考えてみると、裁判官の方々にはどのようなバイアスがかかっているのだろうか?が気になって来る。
佐藤氏も以前言っておられたが、これで無罪なら「警察検察はいくつ首を差し出せば足りるのか」という事態になることは必至。
ただ、ゆうちゃんさんもコメントされていたが、警視総監は今年1月に交代済みなどということもあるし、検察トップも昨年のうちに交代済み。今年も判決が出る前には色々異動があるだろう。
それで裁判所や裁判官にかかるプレッシャーがどのようになるか。

結局昨日今日と書いてみて、つくづく思うのは本事件が裁判員裁判の対象ではない残念さである。
裁判員であれば、裁判所の人事も関係ない。

更に一番重要なことは、本事件ではシロクロだけでなく、他にも色々問題があるということである。
2秒250文字の誤認逮捕から始まって、続く大阪のK氏聴取はJAL機事件当日なのに府警・警視庁報告にJAL機関連の調査結果なし。初動をちゃんと対処していれば、その後の誤認逮捕は無かったかも知れない。

被疑者逮捕に至る経過では情報漏れの為に本来必要な任意捜査が行われず、逮捕した後も黙秘ではないのに取調せず。
更に基本的に全体が一体の事件で捜査は殆ど出来ていたにもかかわらず、個別事案で逮捕を繰り返し勾留を長引かせたし、証拠隠滅の恐れという曖昧な主張で保釈どころか肉親の接見さえ未だ認めない。

其の上で何度でも繰り返すが、肝心の遠隔操作が「東京都内その周辺、インターネットに接続したPC、実行日時は特定しない」という主張のまま。
シロにする捜査の基本であるアリバイ調査は、沢山のデジタル証拠における日時があるのに調べたという話は出て来ていない(弁護側からは一件提起されたが、それ以外に対象は多数ある)。
しかも、本来根本的に重要な動機の解明は、多分公判でも殆ど触れられないのではないか。

これで「猫に首輪を付けた」ということで、全部をひっくるめて検察の主張を認めて有罪にできる??? しかも雲取山は12月1日「頃」だし、1月1日埋まっていたとすれば大捜索ミスもやってしまっている。
「関連ワードの検索がある」などの件も、弁護側の「遠隔操作されていたのではないか?」という主張に真摯に対応して、綿密に調査して確実な反論ができているのか。

このような色々疑問がある状態で、検察側の主張に沿って警察・検察の数々の不手際は棚に上げ、事件全体の解明が出来ていなくても、とにかく有罪を宣告して終結という決定に裁判員だったら持って行くだろうか。
6人の一般国民の判断が見たかったが、さて職業裁判官の方たちはどんな判決を下すのだろうか。
(公判始まる前から気が早いかとは思ったが、問題点の数々は今でも明らかなので根本的な疑問として事前に書いてみた)

以上