第5回公判前整理手続後弁護団記者会見2(複数犯説)
記者会見内容でポイントになると思われる論点を文字起こしして考察を加えていく。
本日は「複数犯説」について検察が言及した件。
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(会見10分12秒頃から文字起こし)
(以下で「情を知らない」と云う言葉が出てくるが、「事情を知らない」と考えれば良いと思われる)
被疑者が雲取山に登ったのは昨年の12月1日ということは我々はかねてから認めてきた。
12月1日登山の主張と証拠も検察官によって提出されている。
ということは、12月1日に埋めたという証拠がないからだ。
実際に検察官が開示した証拠の中にもそのようなものは全くない。
それで実は前回平光検事が、「被疑者がUSBメモリを埋めた人物でないとしても--私達は被疑者がUSBメモリを雲取山山頂に埋めたと証明できなかった場合はそれだけで犯人でなくなるのではないかと言ったのだが--共犯者か情を知らない第三者をして埋めさせた可能性が残る」と今日明言した。
(佐藤弁護士の発言では平光検事が発言したのが「今日」か「前回」かは不明)
実は前回裁判長から本件について--我々も問題にしたことですが--「単独犯か複数犯なのかについて検察官の方できちんとした立証を考えているのか?」と質問されたが、検察官は「何もその点について立証の予定はない」。
(検察側の)主張は明確に単独犯の主張がなされている。
だけども、今のようなことを今日平光検事が口にした。
そして検察官いわく「誰も共犯者とは言っていません、情を知らない第三者をして埋めさせた可能性がある」と言った。
だけど皆さん、これは被疑者もすぐ私に「えっ」と言って、私も本人はこう言ってますと言いましたが、常識で考えて共犯者だったら名乗り出ないというのは分かると思うが、情を知らない第三者に被疑者が「雲取山の山頂にUSBメモリを埋めてくれ」と云うようなことを言ったとしたら、これだけ世間に知られていることだから「(頼まれて埋めたのは)自分だよ」ということは当然名乗り出なければいけないじゃないですか。
それ以外の事実があるとすれば今の点は埋められるという感じですよね。(=被疑者が埋めた人物と立証できなくても他の事実でカバーできる)
何らかの(事実がある)可能性があるということだと思います。
そういうことで検察官は「補うことが出来ると考えている」ということを言いました。
裁判長の方から「そうは言うけども、その点がもし立証できなかったとすれば、大きく有罪の立証が違ってくる」と云うような認識も示されました。
私達はかねてから雲取山のUSBの問題は、検察官立証のアキレス腱の一つだと主張してきたけども、正にそのことが今日裏付けられたということです。
(13分41秒頃まで)
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[考察]
複数犯説は当方にとって今回の会見で明らかにされた事実における大きな驚きだった。
(検察側が云う「情を知らない」関係者だと複数「犯」にはならないが、本考察ではそれも含めて便宜的に「複数犯」と呼ぶことする)
基本的に否認事件においては、弁護側が検察側に被疑者無罪につながる色々な可能性についての説明を求めることがある。
だが、可能性の少な過ぎるものは検察は受け入れないし、裁判所もそれを是認する。
ただ、検察側が全て門前払いにすることも難しいから、ある程度は弁護側の要求に応えざるを得ない。
本事件に照らしてみると、弁護側が検察側に説明を求めるのは以下の2点の可能性があったと思われる。
・被疑者のPCが遠隔操作で覗かれていた可能性
・複数犯の可能性
これに9月9日付弁護側書面で「2ch事件」が加わった。
それで検察に説明を求める優先順位は以下のようになるはずであったと考えられる。
①被疑者PCが遠隔操作で覗かれていた可能性
②2ch事件が本事件と同一犯である可能性
③複数犯の可能性
一般的に要求を全部呑ませることは難しいので、弁護側は①~③の説明要求を行なって調整後①と②の説明提出を検察側に認めさせることが出来るのではないかと当方は推測していた。
そうしたら何と検察側から③の可能性を持ち出してきた。
これで裁判所は①~③の説明(①と②は可能性の否定説明)が充分でないと、検察側の主張をすんなり認めることは出来なくなるだろう。
(本来は③も検察側は否定すると思われたのに、自ら可能性があると言い出して俄然話がややこしくなってきた)
検察側は何故自らを窮地に持って行こうとしているのか、本当に不思議。
ずっと単独犯で主張を構築してきて、複数犯の可能性を今頃持ちだしたら、主張の論理構成がガタガタにならないのだろうか。
以上