訴因に関して3
(訴因に関して2の続き)
訴因について、なるべく本質から辿るために基盤となる刑事訴訟法の条文を見てみる。
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第二百五十六条 公訴の提起は、起訴状を提出してこれをしなければならない。
○2 起訴状には、左の事項を記載しなければならない。
一 被告人の氏名その他被告人を特定するに足りる事項
二 公訴事実
三 罪名
○3 公訴事実は、訴因を明示してこれを記載しなければならない。訴因を明示するには、できる限り日時、場所及び方法を以て罪となるべき事実を特定してこれをしなければならない。
○4 罪名は、適用すべき罰条を示してこれを記載しなければならない。但し、罰条の記載の誤は、被告人の防禦に実質的な不利益を生ずる虞がない限り、公訴提起の効力に影響を及ぼさない。
○5 数個の訴因及び罰条は、予備的に又は択一的にこれを記載することができる。
○6 起訴状には、裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類その他の物を添附し、又はその内容を引用してはならない。
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ポイントは以下の二つと思われる。
○3 公訴事実は、訴因を明示してこれを記載しなければならない。訴因を明示するには、できる限り日時、場所及び方法を以て罪となるべき事実を特定してこれをしなければならない。
→これに関して本事件では、3月22日までに「犯罪となるべき事実」は特定され、被疑者や弁護人に伝えられていたであろうか。
本事件での「犯罪となるべき事実」の根本は遠隔操作による犯行予告書込みであり、起訴するにはそれを被疑者が行なったと推測できる合理的理由が必要であろう。
その理由を示さないで起訴できるのか? 今回の起訴は正にその理由が明らかにされないままの起訴ではなかったか。
弁護側はラストメッセージと同様に検察の圧力があっても跳ね除けて、被疑者の了解を得て起訴状の内容開示する方法をご検討願いたいと思う。
○6 起訴状には、裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類その他の物を添附し、又はその内容を引用してはならない。
→これが「起訴状一本主義」と云われるものの根拠である。ネット上の辞書では以下のように解説されている。
<検察官が公訴を提起する際、裁判所に起訴状だけを提出し、裁判官に事件についての予断をいだかせるような書類・証拠物などを提出してはならないという原則。>
起訴状以外は出してはいけないという制限であり、起訴状にはある程度まで犯人と推測できる理由を書くことは許されると思われるのに、今回の事件では全く書かれていなかったようだ。
しかも犯人性まで書いた証明予定事実記載書が提出されたのは7月10日で、3月22日起訴から3.5ヶ月以上もかかっている。
このような状態での起訴は有効と言えるのだろうか? 当方は甚だ疑問に感じる。起訴の有効性から改めて洗い出すべき事件ではないかと思う。
以上