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第4回公判前整理手続後記者会見1

昨日第4回公判前整理手続後の記者会見ビデオが公開された。また当ブログにもこのところ様々なコメントを頂いている。
それでどれから考察していくか検討して、まずは一次情報をベースにするのが良いだろうと考え、
我々が入手できる一次情報である記者会見の文字起こしを出来るだけやってみることにした。
本日は冒頭部分で、主に検察側からの三通の書面の説明になっている。
その後ラストメッセージ添付に関する検察側の責任所在追求あり(この件は以下の箇所以外に続きあるので明日記載予定)
現時点での当方の若干の考察も付ける。

[佐藤弁護士の話]
今日第4回目の公判前整理手続がありましたので、その説明をします。
検察官の方から主張のし残りみたいなものなのですが、新たに証明予定事実記載書面が出て、これは最後に残っていた起訴事実についての犯罪事実の主張とそれに関する証拠で特に言うべきことは無し。

それで争点に関係しては、8月2日付で弁護側の方で、”弁護側の主張”、”検察官の主張への反論”、”求釈明”を行って証拠開示を請求する60ページに及ぶ書面を提出した。
後で言及しますが、この書面には犯人から送られてきたラストメッセージというものを添付している。
8月の6日か7日に皆さんにも一部匿名化したような形で書面を配布した。

前回の公判前整理手続で弁護側が行った主張を文書化したのもがこの書面ですが、この提出を受けて8月16日か遅くとも20日までに検察官の方で回答するということになっていた。
実際には8月20日に検察官から三通の書面が出て、”弁護人が求めていた求釈明について回答すると云う書面”、”検察官の意見書”、”証拠開示請求に対する回答書”というのが示された。

順次説明すると、弁護側の求釈明についての回答書というのは、弁護側は8月2日付けの書面で全部で26項目の釈明を求めていたが、その内2項目だけは釈明をして、それ以外は釈明の要なしとの回答。
1点目で検察官が釈明したのは、雲取山山頂に被疑者がUSBメモリを埋めたとの主張がされていたが、その時期が明記されていなかったので、それは一体いつだと主張するのか?という問題について、
検察官は「平成24年の12月1日頃である」と主張するとの回答。

2点目は被疑者が1月3日に江の島でグレイという猫に触れたことは認めていて、グレイの写真を撮ったことも認めているが、検察官によるとその回数が3回で、
その写真を撮影した時の画角、つまり猫と被疑者の位置関係が犯人が送ってきた3枚の写真と一致していると主張している。
この回数は犯人が3回しか写していないことを前提にしているように思えたので、3回に限る主張なのか?、或いは被疑者は3回しか撮影していないという主張なのか?と聞いた。
この点について「3回に限定する趣旨ではない」という答えが返ってきた。
それ以外については釈明の要がないと云うことだった。

それから検察官の意見書と題する書面は、「.弁護側が8月2日付で出した書面は、主張と事実が渾然一体として書かれているので検察官としてなかなか理解するのが難しい。
そういう書面だと不正確なので検察側の主張と弁護側の主張の対立点の確認が困難だ。今後はそういう点を整理して書いてほしい」とのこと。

かつ刑事訴訟法では、 まず検察官が証明予定事実というのを提出して証拠を開示することにしている。
それを踏まえて被告側は類型証拠の開示請求をして、その開示を得た後弁護側の主張をした場合は、それが弁護側の予定主張になって、それに関連する主張関連証拠の開示請求ということになる。
こういう三段階になる。

しかし、弁護側はかねてから検察官が証明予定事実を出す前に先行的に予定主張を行うことにしたが、検察側は「それは刑事訴訟法が予定していることではないから、予定主張にも当たらない」とハッキリ言っていた。
それで現時点ではそういうものが存在しないので主張関連証拠の請求もなされていないという前提で検察側の書面が書かれている。
類型証拠については検察官の請求証拠に続いてその信用性を判断するのに必要な証拠が類型証拠となっているので、「その開示請求についてはキチンと書面で明らかにして下さい」検察側は言っていた。

それからもう一つは、「弁護側は本件の争点というのは犯人性だと述べてきているが、検察官が証明予定事実として明らかにしたものの中には、被害事実というか、犯人がこういうことを行ったということも有るので、これに関しては基本的に争わないのか?ということと、その点の証拠については同意するのか?についても意見をはっきりさせてもらいたい」と検察側から求められた。

三番目の開示請求の回答書は、「類型証拠の開示請求がなされていて、若干その趣旨がわからないところも有るが、任意にすでに開示した証拠以外のものを開示します」ということで検察側から20日に何点かの証拠は開示された。

今日の議論は、検察官から以上のような説明がなされた後、滝沢検事が問題にされたのは弁護側が8月2日に提出した書類にラストメッセージを添付したこと。
「これをマスコミに配布したのか?」と聞かれて、私の方は「匿名化した上でラストメッセージを付けた形で配布した」ということを言って認めた。
「それを判断したのは誰か?」ということで、「私、佐藤です」と答えたところ、「それ以外の弁護人はどうだ?」と聞いてきたので、何を聞いているんだ?ということで、最近話題の目的外使用の責任の所在のことを言うのなら、「その責任は佐藤にある」と云うように答えたところ、
「佐藤さんは分かっているからその他の弁護人はどうか?」と聞かれて、「私の方でそういうことについてはお答えしません」と言った。
このような議論を行った。

それで「何故開示証拠をマスコミに流したのか?」と言われた。
「私の方では、マスコミにラストメッセージを配布することを目的としているわけではなく、弁護人の予定主張の趣旨を明らかにするために添付する必要があると考えた」と答えた。

(以上で冒頭から約9分経過まで)
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「若干考察]
 ・検察側は相変わらず「小出し」作戦のようである。秘密主義の方が有罪獲得には有利と考えているのかも知れないが、佐藤氏の情報公開に押されっぱなしのように見える。
  検察も対抗して記者会見を開くべきと思う。
  更に、情報公開のもっと高度な目的として、有罪無罪の論争だけでなく、”国民の知る権利”を重視する必要がある。
  国民は単なるゴシップとして知りたいのではなく、裁判員として裁判に参加する機会が現実にあるのだから、実際の裁判からも司法の知識を学べるようにすることは必須である。
  裁判員制度が導入されて大分経つのに、今回の検察側は”国民の司法意識と知識の向上に資する”という観点がすっぽり抜けていて、まだ新しい時代に対応できていないと感じる。
 ・検察側から「弁護側は犯人性が争点としているが、被害事実とその証拠は争わないで同意するか?」という投げかけがあった。
  これは、例えば「ハイジャック防止法違反」の事実は認めるのか?というようなことと想定される。
   つまり、被疑者が無罪になれば、どんな容疑を掛けられていようと全部無しになるから、無罪を勝ち取れると分かっていれば容疑が何であっても気にすることはない。
  しかし、有罪にされる可能性が少しでもあるなら、特にハイジャック防止法は罰則が重いので適用を争っておく方が有利という判断もあり得る。
  そうなると完全無罪主張しながら、犯人ではないのに犯人の立場に立って、例えばハイジャック防止法は今回の犯行には適用することは困難という主張をすることになる。
  或いはウィルス供用罪でも、被害者の最大の被害は警察・検察の誤認逮捕や自白誘導による冤罪ということは明らかで、警察・検察の関係者を証人にバンバン呼んで、
  250字2秒問題や少年院に行かなくて済むというような自白誘導がなかったかなどを法廷で追求して、相殺によって犯人の責任を減らすことが出来る可能性がある。
  (これは是非やってもらいたいが)
  CSRFの逮捕後2日の告白文送付の真偽などでも悪質性の判断に影響与える可能性がある。犯行宣言メールも犯行告白して誤認逮捕者の開放を意図しており情状酌量の余地も考えられる。
  (精神的不調による責任能力の問題は今は除いておく)
  無罪主張と一見矛盾しかねないこの問題を、佐藤弁護士がどう捌くか当方は個人的に注目している。
 ・ラストメッセージ配布の証拠目的外使用指摘に関する件は、昨日も書いたのとまだ記者会見でも続きで言及があるので別途考察。
  なお、他にも刑事訴訟法に基づく指摘を検察側が行っているが、元々検察側は起訴段階から刑事訴訟法の訴因特定における「出来るだけ」の部分を恣意的解釈している疑いなど、検察の方が今回無理なことをやっている方がより問題と思われ、これも後日考察予定。

以上