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第三回公判前整理手続後弁護団記者会見

7月18日の弁護団記者会見を見た。色々な事実が明らかにされているが、中でも当方がまず衝撃を受けたのは以下の2点。

(1)江ノ島猫に被疑者が触っていた正確な時刻が明らかにされ、首輪が付いている最初の写真の撮影時刻に更に近づいた
  →被疑者が猫に触れていた時刻は、今まで3時前後の約2分間とされていたが、正確には3時9分~11分であり、被疑者が猫から離れて約5分後には猫に首輪が付いた写真があることになる。
    ただし、首輪の付いていない写真の最後の時刻は今のところ2時54分のままのようなので、被疑者が首輪に気が付かなかったとしたら、それより前に何者か(真犯人)により首輪が付けられた可能性は残る。
    しかし、当ブログの「江ノ島の謎3」でも書いたが、猫好きの被疑者が膝に乗せたりしてるのに、グレイと白の毛色に対して非常に目立つ派手なピンクの首輪に気が付かないとは考えにくいと思う。
   その上で、被疑者が離れた約5分後に首輪が付いた写真があるというのは、相当不利な証拠であることは間違いない。
   だが、監視カメラ映像が不鮮明で、かつ検察側が「被疑者が両手を使って何かしているように見える」という場面は、弁護側によると「被疑者はカメラに背を向けていた」姿勢だということである。
   結局被疑者が付けていないとあくまで主張すると、検察は完全な証明は困難と思われる。(付けている瞬間を直接目撃した証言や写真などが出てきたら別だが)

(2)検察側は「被疑者は6月末頃から8月20日頃にかけて、派遣先PCでiesys.exeを開発したが、その間派遣先の業務には殆ど従事していなかった」と主張している
  →当方にとっては前項の首輪装着時刻よりも、こちらのほうが衝撃が大きいぐらいの内容である。
    当ブログ「C#出来るか出来ないかに関して」(5月23日)において以下のように記した

     ・・・
     開発期間も重要である。
     被疑者がC#出来るか出来ないか、トロイ作れたか作れないかの議論においても、
     開発期間まで考慮した見解はほとんど見たことがない。
     ・・・
     仕事と違って幾ら作っても一銭にもならないというソフトなので、犯人としても
     興味以外にインセンティブの無いものに極端に長い時間を掛けるとは考えにくいと思う。
     ・・・
     作成期間に関しては、個人的に横浜市HPにCSRFによる書込を行った前後から、
     大阪市HPにトロイで書込を行なった間の約1ヶ月程度ではないかと仮定している。
     トロイの構想は以前から持っていたとしても、実際に作りこんだのはCSRFで成功したが、
     もっと高機能のものを作ってみたいという動機で作り始め、約1ヶ月で出来たと見る。
     ・・・
     ネット上の議論で、相当優秀な技術者と思われる内容を書き込んでる人に、
     「今回のトロイは自分ならどれぐらいで作れると思いますか?」と聞いてみたところ、
     「それだけに専念する条件で2~3週間ぐらいと思われる」という答えが得られた。
     それ以外には元SEという人から「専念したら約一ヶ月で動くものは作れると思う」という
     答えももらった。(当方もこの元SEと云う人と同じような見解であるが、実際はもっとかかるかも)

   当方はこの推測を早くからしていたため、被疑者が会社で勤務しながら開発を行える分量と期間ではないということが大きな理由の一つとなって、被疑者は犯人ではないと予想したという経緯がある。
   しかし、「会社の業務に殆ど従事していなかった」となると全く話が変わってくる。
   派遣先で勤務時間中に殆どフルにトロイ開発していたのなら、「トロイの開発期間は約1ヶ月程度ではないか」という予想に合致してくる。
   (基本開発1ヶ月程度として、8月以降も改良があったので、検察見立ての6月末から2ヶ月程度という期間に合致する)

   だが、まさか派遣で行っている会社で、その会社の業務に殆ど従事せずに2ヶ月も別のことにほぼ専念できたとは驚きである。
   さすがにこれは全く予想外。俄には信じられないが、こんな会社が本当にあるのだろうか。
   しかも7月8月どころか9月も遠隔操作を行なっているので、ほぼ3ヶ月程度は業務を殆ど行なっていないということになろう。
   仮に色々特殊事情があってこのような異常と思える状態が生まれたにしても、2ヶ月或いは3ヶ月程度という長期間であるから、
   派遣先会社の同僚や管理職なども容易に気が付いていたのは間違いない

   当然警察・検察は派遣先に事情聴取して、逮捕前の内偵段階でこの情報は掴んでいたはずである。
   その派遣先からは9月で去っているから、被疑者に気づかれずに聴取することは容易であり、関係者も隠す必要はない。
   つまり、警察・検察はこの重要事実を今年初めから7月10日まで伏せていたことになる。
   前項の江ノ島猫の監視カメラ映像や装着時間帯も含めて、何という秘密主義であろう。弁護団の情報公開姿勢と対称的である。

以上が衝撃的事実2点の現時点での感想であるが、特に(2)については記者会見ビデオの該当部分を見なおして明日更に記したいと思う。

なお、本事件では当方も予想の不一致が発生したが、その原因を自己考察してみたら、送検後は検察の担当であるが、検察の情報隠蔽が激しすぎて、「まさか検察側が自らに非常に有利な情報や証拠まで抱え込んで出さないとは想定できなかった」ということが理由としてあげられる。してやられたという感じである。
(逆に警察は「捜査関係者」として、新聞等にリークを行なっていたようだが、これは確度が低いという問題があった。しかし、検察はリークも殆ど無かったと思われる)
検察がもっと早く出さなければならなかった説明や証拠がようやく出てきて、上記の開発期間の予想のように合致し出した感じがしている。

当方はしてやられたが、では検察は自らに有利な情報も隠蔽したことが良かったかというと、決してそうではないと思う。いや、それどころか客観的に見て大失敗であったと思う。
本来検察がやるべきだったことを少々考えて見ると、まず3月末の上本検事の勾留理由開示意見書で「(被疑者が)江ノ島の猫に首輪を付けた」という断定的表現になっている。
よって、この時点では3時16分の写真が入手できていたことが考えられる。
もしそうであったら、装着想定時間帯は約5分に絞られ、更に「警察の撮影アングル実験でも写真を撮ったのは被疑者と考えられる」という今になってやっている説明を、もっと早くストレートに行うべきであった。

そしてその証拠となる監視カメラ映像や3時16分の写真などは、5月の証明予定事実記載書面提出時や公判前整理手続で物的証拠として開示すべきだった。
これらで世間の印象は大きく違っていたはずである。
また、C#によるウィルス作成についても、遅くとも3月末の起訴前ぐらいには「派遣先の業務に殆ど従事していなかった」ことを、こちらは状況証拠なのでお得意のリークで流せばよかった。

このような流れなら、世間一般に対しても被疑者クロの心証を形成して、もっと優位に、或いはもっと容易に検察側は公判に向けて手続を進められていたと思う。
東京地検担当なのだから、名称に「地方」と付いても実質は日本の中枢の組織であり、佐藤弁護士ら弁護団が情報公開でやってきたら、エース検事でも立てて堂々と対抗してもらいたかった。

そして、ここまで作戦ミスしてしまうと、真実がどうかというだけでなく、裁判としてどうなるのかという観点が出てきてしまう。
現在の状況を客観的かつ卒直に言い表すと、「真実追求面では被疑者不利だが、裁判の行方については検察側も楽観視出来ない」と当方は考える。(楽観視出来ないのは、証拠の問題より検察の作戦ミスや隠蔽姿勢の影響が大きいと見る。ただし、証拠面でも肝心の遠隔操作の証拠は依然出ていないようだし、元旦メールや日曜日の遠隔操作のアリバイ問題などはあるので、別途検討予定)
真実と裁判、この二つの観点からの見方が今後を占う上で重要になってくると思う。今後随時考察していきたい。

以上