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逮捕時の謎の考察1

今日は第二回公判前整理手続が行われたが、前記事に記したように検察は6月末で捜査終結予定と述べたそうで、これまでどおり犯人性につながるストーリーや証拠等は何も出なかったという状況が予想される。

それで初心に帰るという訳でもないが、本日は逮捕時の謎を検証してみたい。
当方が考える謎は大きく二つ。
  謎(1) 監視カメラの映像に被疑者と猫はどのように映っているのか?
     (被疑者が浮かんだのは監視カメラ映像と思われるので、その映像の内容は重要)
 謎(2) 逮捕の決め手は実際は何だったのか?
          (被疑者が浮かんだのは監視カメラでも、逮捕の決め手はどんなことだったのか)

逮捕時の警視庁捜査1課長の会見という記事がある。本事件は当局の会見が少ないと思われるので貴重である。
記事の日付は2013.2.10 13:06となっていて、午前中逮捕で当日記者会見したものを速報している。記事中には以下の捜査1課長との質疑がある。
--首輪を付けたのはいつか
 「(ネコが発見された2日前の)1月3日午後3時ごろ。防犯カメラに映っていたが、手元までは映っていない」
--片山容疑者は首輪を付けたと言っているのか
「遠隔操作についてはやっていないと言っている。首輪を付けたかどうかというのは今回の逮捕事実の中には入っていない」

防犯カメラに手元までは映っていない」と捜査責任者が明言しているのである。
「逮捕の決め手は首輪を付けている映像がある」と当初報道されたが、後になってそのような映像は無いということがわかってきた。それで「誤報だ!」と問題になったという経過があった。以下のような検証を行なっているサイトも有る。
“遠隔操作 首輪つけた瞬間画像「存在疑わしい」”

誤報は明らかであるが、捜査1課長が当日記者会見で「手元の映像はない」と公式発言してるにも関わらず、「江の島の防犯カメラには猫に首輪を付ける様子が映っており」(読売新聞)、「遠隔操作ウイルス事件で逮捕された容疑者がネコに首輪を付けた映像が写っていた防犯カメラ」(産経新聞)、「不審な男が猫に首輪を取り付ける前後の様子が写っていた」(朝日新聞)などと報道したのは余りにもレベルが低すぎる。

特に捜査1課長の会見を律義に報じて、全体的にも本事件の報道ではいい仕事をしてると思える産経新聞までもが、自社報道を見てないとしか思えない誤報をしてるのは残念である。

監視カメラの件では、産経新聞はもう一つ疑問な報道がある。
6月13日当ブログ記事「監視カメラ画角に関して」で紹介した以下の記事である。
「追い詰めたのは最新鋭防犯カメラ」2013/02/11
この中には幾つかの事実誤認があるようだ。

江ノ島の監視カメラはPanasonic製であり、同社の導入事例紹介資料がある。
“江の島振興連絡協議会様 江の島防犯カメラシステム”
導入事例にはカメラ品番(DG-SW395)も載っており、以下のPanasonicのカタログから性能等が分かる。

それらと産経新聞の記事を見比べると以下の様な点が違う。
・同じメーカーの一般的な防犯カメラの画素数は3メガピクセル
 →DG-SW395は1.3メガピクセルである。3メガピクセルは同社のDG-SW438/458などの魚眼レンズ搭載の製品。産経新聞の記事だとDG-SW395が3メガピクセルという誤解を与える。
・特に人通りの多い場所に設置された3台は360度を見渡せる半球状
 →DG-SW395は360°に近いが実際は350°であり、魚眼レンズ搭載ではなくカメラが回転するタイプである。
もちろん350°を360°と表現するのは一般の方々に分かりやすくするためにも全く問題ないが、魚眼レンズ付きのようにそのままでもほぼ全周映るのではなく、カメラを回転させなければならないことは重要である。
そして当方が現場で見たときは明らかに回転していなかったのである。つまり、固定して使っており、半球状ではあるが記事のような360°見渡せる使い方ではないのである。

なお、DG-SW395の仕様は最大回転速度300°/秒であるが、実際には完全な回転型でなく350°の範囲内で往復する構造のようである。
現場は公園側180°が林なので監視する必要性は極めて低いと思われる。
そのため残りの180°でカメラを往復させると1秒間に約1往復程度となるだろう。
しかし、実際に見たら往復(以降分かりやすくするために回転と表現)させてなかったのである。

また、1月3日のように混んでいる時は回転させていたという可能性はありえる。
だが、回転させると一つの場所の映像を撮影する頻度が下がる。(180°を撮影する場合、前述のように最大速度で1秒間に1往復であり、1秒間に2回同じところがセンターに来ることになる。カメラ固定ならセンターも固定で連続して撮れる)
カメラのレンズ口が向いていた通路も幅は広くないので、回転して撮る必要性は感じられないし、重要な通行人の撮影頻度が下がらない方が良い。
捜査関係者も誤解があると思われるが、それを鵜呑みにして報道する姿勢はやはり問題であろう。現地確認や取材をしっかり行うべきである。
(前述のように産経新聞は本事件の報道でいい仕事をしており、更に頑張って頂きたい)

なお、Panasonicの資料を参考に再度必要画角を検証してみる。
DG-SW395カタログより
仕様で、回転させない場合の水平画角は最大55.2°(ワイド側)となっている。
またレンズ口と思われる部分が構造図にあり、当方が現地で半球状カバーを透かして見えたのはレンズ口であって、それが向いていた方向(通路の方向)が撮影方向であると考えて良いと思われる。
イメージ 1



 
導入事例内の写真より
まず、前述の誤報検証サイトの中にある新聞報道に監視カメラの写真があって、導入事例内の写真も同じ位置であり、このカメラに被疑者が映っていたことで間違いないと考えて良い。(前回当方が特定したのも同じカメラである)
写真にコメントや説明線などを入れたが、通路の幅はそう広くはないので、撮影範囲は固定でも問題ないと思われるし、回転による通路部分映像のコマ数低下や消費電力、故障なども考えたら、固定で使う方が合理的。
回転機能は何かあって必要がある時だけ使うことも考えられる。
(技術者としての観点から、システム担当した会社はこの場所においてはまず間違いなく固定で使ってると予想する。また実際に見ても回転してないわけだし、混んでる時ほど通路を行き交う多くの人々をきちんと撮るために固定が有利になると考えられるので、1月3日であっても回転させていたとは考えにくいと思う)
イメージ 2













 
そして写真の監視カメラと猫の位置を見てみると、本当に猫の位置まで映るか疑問がやはり出てくる。
前回の画角検討で通路方向中心にして猫の位置を映すためには水平画角約90°必要と算出したが、実際のカメラは固定では水平画角最大55.2°が仕様なので、猫の位置まで映すのは非常に厳しそうである。

以上が本日の謎(1)“監視カメラの映像に被疑者と猫はどのように映っているのか?“に関する当方の現在の予測である。(予測が当たってるかそうでないかは、今後出てくることを期待したい証拠映像で検証)
ただ、被疑者手元(及び手元が映ってないと多分猫も)が映っていないにしても、被疑者が浮かんだのだから何らかの映像が監視カメラの記録にあることは間違いない。
被疑者自身も勾留請求開示の陳述で「(該当の)猫に触ったり、膝に乗せたりした」と公式に発言している。
また、警察も「手元は映っていない」と最初から捜査1課長が公式に会見で言っていたわけである。

よってとにかくどんな形でも被疑者が映っていたら猫の周囲にいた事は証明できるわけで、警察としては問題ないと思われる。
当局が出し渋っているとしたら、表向きの理由の「捜査中」は映像解析はとっくに終わっていて実質関係ないから、映像を見た人が「何だこの程度しか映ってないのか?」という受け止めをすることを恐れているぐらいしか考えられない。
しかし、繰り返しになるが、被疑者が映ってさえいれば虚偽の証拠ではないのだから、変に勘ぐられないよう早く出すべきであろう。

謎(2)は明日考察とする。

(続く)