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「ウイルス作成罪は立件せず」に関する考察

コメントで幾つかご質問を貰っているので、順番は相前後するが出来るものは当方見解を
お答えして行こうと思う。
まずは、以下のような「ウィルス作成罪立件せず」の報道に関連した質問。
>警察の捜査打ち切り、ウイルス作成を立件できなかったことを受けて、
>警察・検察の完全敗北という見方がネットで広まっていますが、どのようにお考えですか?

これについては、6月11日記事「ウィルス作成罪と本事件の関連考察」ですでに考察を書いたのだが、
基本趣旨が論点が沢山あることを示すものだったので、もっと絞って再度書こうと思う。

当方の考える一番のポイントは、”正式発表もないため検察の思惑は明らかではないが、
本事件の主任弁護士(佐藤氏)がウィルス作成罪による立件に関して、明確に発言しているので
それを重視すべき"ということ、

6月11日の記事の際に文字起こしした佐藤弁護士発言を再掲する。
(6月6日のニコ生の番組「成瀬久美の「何でも聞いちゃうぞ!」【PC遠隔操作事件】 」より)

  「(ウィルス作成罪は)今後立件するという報道はされていて可能性はあるが、
  私が思うには既に今までの犯行の手口に全部iesys.exeを作って使ったと書いてある
  から、それでわざわざ起訴したりするようなことは絶対ない。
  ちょっと報道されてるだけ。私たちは「それが作れるはずが無いでしょ」と言っている。
  むしろ起訴してもらっても良い。それを立証してもらわなければいけない。
  検察の方がそんな重荷を更に背負うことはしないでしょう」


この発言の中で「既に今までの犯行の手口に全部iesys.exeを作って使ったと書いてある」
の部分を特に注目して頂きたい。
検察はウィルス作成罪では立件しなくても、「iesys.exeを作って使った」と主張していることを、
担当弁護士が明らかにしているのである。

検察は有罪立証するためには、自らの主張を立証しなければならないことは当然である。
よって「iesys.exeを使った」だけでなく、「iesys.exeを作った」と書いて有ることにも立証責任があり、
「弁護側は今後その証明を求める」と担当弁護士が言ってると云うことなのである。

「検察はウィルス作成罪では立件しなくても、作ったことの立証は求められる」
これが佐藤弁護士発言から導かれるポイントである。

また素朴な疑問として出てくるであろう「何故ウィルス作成罪で立件しないのか?」、「ウィルス作成罪を
適用できなくて犯行の証明ができるのか?」というような問いに対する答えも(検察内部の詳細な事情が
どうなってるのかは別にして)基本的には同時に出ている。

 「作った」ことは、それを使用して遠隔操作で犯行予告を行なったという犯罪と一体をなしており、
その犯罪事実全体を証明するためには、「作った」と主張したらその証明も必要になることは明らか。
よってウィルス作成罪単体での立件は特に必要なく、それなしでも作成を含めた犯行全体の証明
や反論は、業務妨害罪と供用罪及びハイジャック防止法違反の審理の中で行うというのが、
立件しなかった検察側とそれが当然と考えていた弁護側の一致した基本理解であり、
問いに対する実質的な答えにもなっているであろう。

以上が本事件とウィルス作成罪との関わりあいになる。
それに対して、一般論としての「ウィルス作成罪」という方面から考えて、
「何故ウィルス作成罪が適用されなかったのか?」という疑問が出て来ていると思われる。
これは主に今回のトロイソフトと一般的に今まで考えられてきたウィルスソフトとの特性の違いが大きい
ためである。これに関しては記事を改めて又述べることにする。

なお、報道で以下の様なことが書かれている件については、ここで補足しておく。
”ウイルス作成については「関与は疑われるが、本人の供述がない」(捜査幹部)として、
現時点での立件を見送った”

これは大変おかしな内容で、犯人からトロイやフリーソフトソースコードまで送られてきているのだから、
犯人が作成したことは特に証明する必要も無いぐらいである。
今までも本人供述ほぼゼロで何件も起訴しているのに、ソースコードという明白な物証があるのにも関わらず
供述がないという理由で立件しないなどという話は全く通用しない。
今回はマスコミの報道もずっと変なままである(佐藤弁護士も記者会見で憤りを表明してた場面がある)。

仮に、本当に犯人が書いたソフトかどうかと云う点を追求されたとしても、トロイの操作説明書も告白メールに
付いていたような点でも挙げて説明すれば、裁判官の心証は得られる。
最終的には裁判官の判断であるから、犯人が作成したことを認めてもらうにはそう苦労はないと考える。

実際にも10月の告白メールにある以下の文章を示すだけでも、「メールを書いた犯人がトロイを作成した」と
いう主張は認められるであろう。
自分で一から開発したと述べているし、内容は明らかになっていないが「操作マニュアル」という項目まである。
検察は詳細内容も示せるのであるから、「自分が一から開発したと述べ、操作マニュアルまで書ける人物は
作成者である」という主張を裁判官の心証で認めてもらうことは充分可能。
(因みに、「私が一から開発したものです。」の記述は自供と同じ。この点では否認ではないのだから、
 実はこれだけでも作成認定は容易なのであり、「ウィルス作成罪立件せず」自体は「警察・検察の完全敗北」
 と云うようなものではないと考える
 ・・・他の特に「未だ犯行場所特定できず」は完全敗北を示唆していると云えるであろう)

"弁護士 落合洋司 (東京弁護士会) の 「日々是好日」”より抜粋
 ■トロイ(ウィルス)について
 既成の亜種ではなく、私が一から開発したものです。
 まだ公表されていませんが、「iesys.exe」が実行ファイル名です。
 「したらば掲示板」を通じて命令受信や結果出力処理を行います。
 報道のとおりキーロガー機能もついていて、キー入力収集データもしたらばに書き込みます。
 画面キャプチャやPC内のファイルを任意のURLにPOST送信する機能もあります。
↓操作マニュアル
(落合氏によって操作マニュアルのURLは省略されている)

以上