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第二回公判前整理手続に向かっての進行

昨日「エア起訴」であると書いたが、エア起訴でも手続は進んでおり、
6月21日(金)に第二回公判前整理手続が予定されている。

公判前整理手続について、良い資料を見つけたので紹介する。
本家本元の検察庁の資料である。
裁判員制度裁判員裁判における検察の基本方針~ - 検察庁
この中に以下の資料がある。
裁判員裁判における検察の基本方針」全文
裁判員裁判における検察の基本方針」概略図

裁判員裁判における公判前整理手続が上記全文のP32から説明されている。
今回は裁判員裁判の対象ではないが、整理手続の基本的考え方は同様であろう。
長いので、一箇所だけ基本的要点を抜き出す。
「検察官としては,公訴提起の時点で構築した的確な立証構造を踏まえ,
 争点整理の基礎となる検察官の立証予定事実を証明予定事実記載書面によって
 簡潔に示すとともに,誠実かつ適切な証拠開示を通じ,被告人側の予定主張が
 明らかとなるよう被告人側及び裁判所に働き掛けなければならない。」

今回に照らしてみれば、証明予定事実記載書面に実行行為性も犯人性も書かれておらず、
裁判長が「異例、異常」と言う事態で争点整理どころか争点自体が示されていない。
証拠開示も調書黒塗り部分ぐらいで、ほとんど進んでいない。
検察庁自らの基本方針から、いきなり大きく逸脱しているのである。
ただ、昨日の「エア起訴」で書いたように、検察は(冤罪に加担したと後で非難されることを
出来るだけ避けるため)確信的に証拠を出さない方針で進めているものと推察される。
よって、幾ら批判しても無駄で、所謂将棋の穴熊戦法である。

しかし、対局者双方しかいない将棋と違って、訴訟には裁判官がいる。
検察も裁判官からの指示や命令などがあれば、一応は従う必要がある。
そこで、今後の展開として重要なのが弁護側が裁判所に申立や請求を行なっている事項である。
これを裁判所が受け入れて、検察に指示・命令したら検察も応じざるをえない。

5月28日記者会見での佐藤弁護士は以下のように発言している。
1. 5月27日弁護人は「釈明命令申立書」を裁判所に提出した
 (1)本件では被疑者がC#がプログラムを書ける事が大前提。
   検察官はそういう主張をするのかどうか。
   主張するなら、どういう事実と証拠に基づいて立証するのか明らかにせよ。
 (2)1月3日に江ノ島で猫の首に首輪を着けたと主張するのか。
   主張するなら、どういう事実と証拠に基づいて立証するのか明らかにせよ。
2. 同時に証拠開示請求も行なった
 (1)被疑者のプログラム言語能力に関して
   自宅及び勤務先PCからC#でプログラムを書くことが出来るという
   ことについての何か手がかりらしいものが得られたかどうか。或いは、
   そのことについて同僚、知人、友人から調書を取っている場合、それの開示。
 (2)犯行時に使用したコンピュータ、犯行場所の特定
 (3)メールに添付された雲取山山頂の写真
 (4)江ノ島の猫に関するもの・・・防犯カメラ映像、一般人が撮った可能性がある
    被疑者や猫の写真など、被疑者の携帯電話に残っていたという猫の写真

検察は少なくともこの中から部分的にでも、釈明や開示に応じざるを得ないと思われる。
第二回公判前整理手続でも、争点にできるような実行行為性や犯人性の根拠を
出さない場合は、裁判所も「異例、異常」と言うだけでは済ませられなくなり、
弁護側が再度求めるであろう公訴棄却や手続打切り・公判設定、証拠開示請求などの
要請にゼロ回答とは行かなくなる可能性が高まるからである。

よって、現時点の予想では検察は証拠を絞って出してくると考える。
候補として一番考えられるのは、江ノ島の監視カメラ映像。
これは証拠としては中立的なものでもあり、冤罪を生むようなものではないから出しやすい。
ただ、有罪立証につながるようなものであるかは定かではないというだけである。

それ以外では、出しやすいのは雲取山の写真。これは既にメモリが発見されてしまっていて、
写真がネットから流用したものでも、大きな影響は無いと思われる。
(影の位置などからの撮影時期特定等を避けた可能性がある)

C#に関しては、周辺関係者の証言は出る可能性もありそう。
ただし、これも検察側の主張に有利かどうかはわからない。
被疑者が「C#出来ない」とか「C#出来ないと思う」というような証言の場合に出せるかどうか。
(被疑者不利や当たり障りの無いものだけ選んで出すことが可能か・・・後でバレるとまずいから困難?)

犯行場所と使用コンピュータの特定は、犯行立証に関わる基本的事項であり、未だ特定されて
ないのが異常なのだが、それだけに検察は捜査中を盾に明かさないことが考えられる。

今後どのような(影響の少ない)証拠を開示しつつ、裁判所を納得させて整理手続を続行させるか、
検察にとって思案の日々が続くのではないか。