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取調べを行わない検察の謎

本日は「取調べを行わない検察の謎」がテーマであるが、その解明に入る前に(長めの)前置きを記す。

「satoru,net」さんのサイトから「遠隔操作ウイルス事件の犯行予告内容まとめテキスト」
を参照させて頂き、解放同盟への予告内容を以下に示す。
  ■2012/8/27 部落解放同盟犯行予告メール
  タイトル:○○事件の犯人は○○○○。・・・
  被害者ぶっている極悪殺人鬼の○○○○を・・・

(◯◯の部分はリンク先参照)
○○事件というのは、1960年代に起きた事件で、今も再審請求が行われている有名な事件である。
冤罪かどうかについては詳しく調べてないのでコメントできないが、少なくともこの有名な事件で
有罪とされた方をこれほど罵るような文言を書きこむのは、「自分が過去に冤罪に巻き込まれて
人生の大幅な軌道修正をさせられた」という趣旨の動機が猫の首輪のメモリの中にあったという話と、
心情的に大きな矛盾となり犯人が巻き込まれた冤罪が発端という動機に強い疑義を持たせるものとなる。
" 今回の事件では、猫の首輪につけられていた記憶媒体に「以前、事件に巻き込まれたせいで、
 無実にもかかわらず、人生の大幅な軌道修正をさせられた」と書き込まれており")

解放同盟への犯行予告は、6日付記事「犯行の動機(謎の解明Ⅴ)」でも述べたように、犯人に思想性が
見られない証拠にもなっており、「冤罪が発端」という犯人主張への疑義と併せ、動機解明のために重要である。
これを更に考えてみると、警察や検察は思想性や冤罪(かも知れない)事件の情報などは山のように
持っていて、一番詳しいはずである。
つまり、当方が気付くようなことは警察・検察はとっくに気付いている。

また、犯人が10月の犯行告白メールで、動機を以下のように書いている。
  ■私の目的
  「犯行予告で世間を騒がすこと」、
  「無実の人を陥れて影でほくそ笑むこと」などではなく、
  「警察・検察を嵌めてやりたかった、醜態を晒させたかった」という動機が100%です。
  なので、ある程度のタイミングで誰かにこの告白を送って、捕まった人たちを助けるつもりでした

これには前述のメモリに入っていた冤罪の話は書かれておらず、後から冤罪の話を付け加えたことになり、
犯人は真の動機を隠そうとしているようにも見える。
更に、警察・検察からしたら、犯行予告への対応に関して、今回のトロイによる「メールフォーム書込」、
2ch書込」、「メール」、「2ch多レス書込、アンカー付書込」という手法のバリエーションのどれであっても
対応が大きく変わるようなことがないのは、自分たちのことであるからよく分かるはずである。
(トロイでも書込み先の選択によって手法の変遷があることは、「犯行の動機(謎の解明Ⅱ)」などで説明済。
警察・検察を嵌めるためなら、そんなに沢山のバージョンを開発する必要はないし、実際警察・検察が最後
まで起訴に時間が掛かったのは最初のCSRFによる事件であった。また、告白メールにあるように誤認逮捕を
意図しないなら、クイズメールのようにTorによるフリーメールでも予告は可能ということになる)

つまり、「警察・検察を嵌める」、「冤罪の恨みを晴らす」という動機に関しては、薄々か確信かは分からないが、
警察・検察は逮捕段階でも既に疑問を持っていたのではないだろうか。
そうなると、「真の動機は他にある」、或いは「技術的興味」という動機にもある程度気づいていたのではないかと
いうのが当方の推測である。

ここまでが前置き。続いて本日のテーマの推測を行う。
ただし、検察の内部が一般人に分かるはずもないので、どうしても推測の積み重ねになる。
よって当方の憶測と捉えていただいて結構で、最終的には各自ご判断いただきたいと思う。
(当方としては相当確信しているが)

1月中旬からの内偵捜査と2月10日の逮捕から程なくして、周辺の聞き込みなどから、被疑者が技術的興味を
持ってオリジナルの構想でトロイを作り上げ、遠隔操作による多数の犯行を完遂できる人物像や環境に
合致しないことが警察・検察、、特に検察には明らかになっていたのではないかと考える。

検察として、立件は無理筋だが警察が逮捕してしまったからどうしてもやらなければいけなくなっていた時に、
弁護団と被疑者が「可視化しないと取調べは受けない」と通告してきた。
そうなると、まず本件は裁判員裁判の事案ではないので可視化取調べは未導入であった。
また可視化しない従来型の取調べでも、IT技術に詳しくない取調官は現役ソフト技術者の被疑者に技術的な
内容で太刀打ち出来ないことは最初から危惧していたと思われる。
それを可視化してしまったら、取り調べ側の知識や理解力不足が記録で残ってしまうのでやりたくなかった。

このような理由で可視化を避けていたのではないかと思うが、もう一つ重大な理由があるのではないか。
それは前述のように「被疑者が犯人像に合わない」ということ。
検察はストーリーを作るといわれるが、被疑者は前科や江ノ島に行ったことなどを除けば、技術者としての技量も
技術的興味に取組む姿勢でも犯人像に合わなすぎて、ストーリーが作れなくて困っていたのではないか。

そこに「可視化しないと取り調べには応じない」と言ってきたので、渡りに船で実は検察側の都合から取調べを
やらないようになった。これが当方が考える真相であり、「取調べを行わない検察の謎」に対する答えである。

しかし、取調を行わないと、公判維持どころか公判に入ることさえ出来ない事態につながる。
実際初回起訴分の公判前整理手続第1回が先月22日に行われたが、検察側は公判であれば冒頭陳述に
当たるという「証明予定事実記載書」に実行行為性も犯人性も記載しないという、異例・異常な対応に出て来た。
つまり、公判に入れないのと同様の状況が、整理手続の段階で起きてしまっているのである。

取調が必須な具体例もあげてみる。
まず、当ブロク5月17日記事「日曜日のアリバイ」や「もう一つのアリバイ(元旦メール)」を検察側が崩して、
被疑者が遠隔操作可能で可能であったことを示さなければいけないが、そのためには該当時刻やその前後の
行動を確認することが必須である。
会社にはいない時間帯だから、まず本人の自己申告が一番基礎になるが、取調を行なっていないから
本人から何も聞けていないことになる。公判で初めて聞いても、どうやってアリバイ崩すのか。

また、5月8日に三重の事件で再逮捕されているが、この事件は唯一被害者PCからトロイが発見された事件で
あり、かつ携帯ショップへのアンカー付き書込みで(したらば掲示板アクセスやTorでの遅延を除く)リアルタイム
遠隔操作であることが明白という重要な事件である。

今や当然のようにこの事件でも取調は全く行われなかったが、会社にいる時間帯でのリアルタイム操作で、
被疑者がやってないという場合には、「その時間帯に何をしていたのか」と取調で確認するのは必須になる。
その上で同僚の証言やアクセスログなどから、被疑者の供述が虚偽で実際は遠隔操作を行なっていたことを
立証するという流れになる。それなのに取調を全くしないのは実質的に立証を放棄していると考えざるを得ない。

5月8日逮捕という時期も重要であり、5月5日毎日新聞に以下の記事が出た。
"最高検:「可視化は犯罪立証に有効」提言を全国の地検に”

毎日新聞以外はあまり報じていないようなので、内容の真偽ははっきりしないが、裁判員裁判以外の事案にも
可視化の機運が高まっていることは間違いないだろう。
その中で本事件を担当する東京地検は、全国の検察の中枢的立場にあるだろうから、先駆的な取組を行うには
適切な部署であろう。
つまり、最高検提言の記事が出た後で、可視化の導入試行を先行して始めても良い立場にあると思われる。
(例えば全面可視化にはまだ抵抗があっても、週1~2回は可視化取調を行うようなことが考えられる)

にもかかわらず、全くやる気配もないのはどういうことか。
検察側が本事件を立証できる証拠を持っていないし、もはや立証するつもりもないことが明らかになるから、
可視化を理由に取調を行なわない状態を続けている。
こう考えるのが一番合理的というのが当方の推測である。

以上が検察の謎の解析であり、検察の残念な体質が明らかになったと考える。
このような事態が白日のもとに晒され来たのは、弁護団と被疑者の「可視化しないと取り調べには応じない」と
いうキッパリした姿勢によるものであり、密室のやり取りに持ち込ませなかったのは大きな成果であると感じる。
(元から立証することが出来ない取調では、検察は冤罪を創りだすつもりはなかったとしても、
どんな方向に行くか分からなかったであろう。被疑者にとっては非常に辛い勾留状態だが、
何とか無事で過ごして公判に臨んで頂きたい。また出来るだけ早い公判開始を期待したい。
それと家族の接見禁止は一刻も早く解くよう裁判所が判断すべきであると強く思う)

このままで行くと、検察はまだ当分「捜査継続」を盾に”実行行為性や犯人性”の証拠を出さずに粘るのでは
ないだろうか。
ただし、それでは検察の担当者も相当苦しいと思うし、上層部の決断を望みたいところである。
裁判所がそろそろ待ったを掛ける期待もあるが、その前に検察が自ら考え方を変えていいただきたいと思う。
(6月6日ニコ生「何でも聞いちゃうぞ!」【PC遠隔操作事件】で、 佐藤弁護士が「検察が言っている捜査終了
 時期の7月中旬までが、検事総長の退任予定時期に重なる」と言っておられたが、まさかそのようなことの
 関連性がないことを日本の司法の信頼性のために祈りたい)