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公判前整理手続きと公訴棄却の申立

本日は公判前整理手続きの第一回が行われたが、確たる証拠はやはり出なかったようである。
逆に検察は「遅ければ7月中旬まで捜査が必要なため、事件について具体的な主張をするには
まだ時間がかかる」と答えるなど、よく起訴ができたと思えるような状況になってきた。
(予想できた事態ではあるが)

また、弁護側は公訴棄却を求めたそうである。
「弁護側、公訴棄却求める=PC遠隔操作で公判前手続き―東京地裁
"起訴状で犯行場所は「東京都内またはその周辺」とされている。
この点について弁護側は、訴因を明示して記載すべきだとする刑事訴訟法
違反していると主張した”

刑事訴訟法256条は以下のようになっている。
第二百五十六条  公訴の提起は、起訴状を提出してこれをしなければならない。 
○2  起訴状には、左の事項を記載しなければならない。 
一  被告人の氏名その他被告人を特定するに足りる事項 
二  公訴事実 
三  罪名 
○3  公訴事実は、訴因を明示してこれを記載しなければならない。
 訴因を明示するには、できる限り日時、場所及び方法を以て罪となるべき事実を
 特定してこれをしなければならない。 

刑事訴訟法のこの規定は非常に明確である。 
この中の「できる限り」は、例えば「殺害の事実はあるが、 
遺体が別の場所に遺棄されていて、かつ被告が否認していて 
明確な殺害場所が特定できない場合」などと解釈すべき言い回し。 
日本語の文脈の読解からすれば当然そうなる。 

しかし、日本の司法の世界では、「できる限り」を単なる努力目標程度にしか考えず、
更にもっと恣意的に「出そうと思ったら出す」みたいな運用になっているのではないか。

特に今回の事件では、被害者のPCから犯行予告書込は行われたが、実際の犯行は
犯人が別の場所で行なった遠隔操作と云うことになる。
その犯罪事実を構成する「別の場所=犯行場所」を特定しないようでは、
犯行の立証さえ困難となろう。

それが公判前整理手続きで示されないどころか、起訴状にも「東京都内またはその周辺」と、
特定には程遠い記述になっているということで、公訴棄却を求めるのは充分理がある。
(実際に公訴棄却申立書を東京地裁に提出したとのこと)
検察側が一週間以内に今後の整理手続の進め方に対する意見を提出することになったようであるが、
それぐらいの期間で状況が大きく変わる可能性は小さく、更なる引き延ばしも考えられる。
それを察して、弁護側は公判の早期開始も求めたとのこと。

このような状態では、裁判所は英断を持って、まず公訴棄却を認めて被告を釈放し、
検察側には現在捜査中の三重の事件に集中することを促すのが現実解かもしれない。
そうすれば検察側は7月まで捜査ができるし、被疑者は釈放されて公判に備えられる。
ハイジャック防止法違反も棄却となるが、検察側は被疑者犯行を立証できるなら、
業務妨害罪以外にウィルス作成罪にも問えるから、厳罰が必要ならこの2つの併合罪で行える。

このやり方が妥当と思うが、検察側は公訴棄却されたら事件全体的にもほぼ負けそうな印象を与え、
メンツも潰れてしまうので、裁判所がそこまでやるかどうか。今後の成り行きに要注目。