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浸透率及び観測水位に関して

7月末の確認期限が更に近づいてきた。平田氏らと都がどのような結果を出してくるか。その検証の事前準備として、本日記事では「浸透率」と「観測水位」について、整理を実施してみた(観測水位は[追記]で記載)。

浸透率に関して、以前から紹介しているように、都公表資料で少なくとも2種類の資料が有り(A,Bとする)、浸透率想定は次のようになっている。
■資料A:「集中降雨時における地下水管理の検討」(第8回技術会議2008年12月)
  →「道路部:15%、緑地部:85%」
■資料B:「地下水管理システムの稼働状況」(第2回新専門家会議2016年11月)
  →道路部・緑地部区別無しで「8%」

この違いを考えてみると、まず資料Aの計算。
イメージ 2

次に資料Bの計算に関しては、次の説明がなされている。
----第2回新専門家会議 議事録抜粋開始----
地下水管理システムによる水をどのくらい処理するかというのは、多い少ないは多々あるのですけれども、③にございますように1日100㎥ということで計算をしてございます。
①の地下ピット部以外の土の部分を、土の間隙率、要は土と土の間に水がどのくらいあるかというのを、2割ぐらい土のすき間があると仮定して計算をしてみると、④水位低下速度と書いてございますけれども、1日3㎜から4~5㎜ぐらい減る量ということでございます。
雨が降った場合には敷地全体で8%の水が土の中に染みていくと仮定をしてございます。雨が降ったらその8%が浸透していくということもございます。
イメージ 1
----抜粋終了----

引用の最後に「浸透率8%」が記載されているが、表の①~④とは関係していない。①~④による計算で「水位低下速度4~3mm/日」が出ているが、それとは別に「降雨があると浸透率8%で地下水が増えて水位上昇要因になる」という趣旨。

低下と上昇の両方の要因を併せると変動が複雑になって、「AP+1.8mになるまでの期間を単純に計算することは適切でない」という(妥当かどうかは別にして)都側の見解になっている。(但し、低下速度計算は合っているのだろうか? しかし、もし合っていなくても8%は別の数値)

次に浸透率「8%」という数字自体について検討。参考になる情報として、2016年11月の2者による連続したTwitterがある(Twitter1,2とする)。
----Twitter引用開始----
farpost」 2016年11月13日 (Twitter1
専門家会議で都は降水の浸透率は8%で想定と説明。以前の道路で15%、緑地部で85%という想定に対しかなり低いが、これは地下水管理システムの断面図の通り緑地部の雨水は全て砕石層下の遮水層により浸透しないからと考えられる。
8%だと降雨による年間の水位上昇は22-35cm程度である。

Kontan_Bigcat」  2016年11月14日 (Twitter2)
返信先: @farpostingさん 
ビデオを確認したら「敷地全体の8%」と言っているようなのですが、これは建物を含めた面積? それとも外構面積?
----引用終了----

まずTwitter1では、「緑地部の雨水の全ては遮水層により浸透しないと考えられる」としている。当初の緑地部浸透率85%想定の後に、遮水層が追加されて浸透率が8%想定に下がったと見ておられると思われる。

それに補足してTwitter2では、「敷地全体の8%」ではないかとしておられる。上記第2回専門家会議の議事録では、当該部分は以下のように説明されている。
雨が降った場合には敷地全体で8%の水が土の中に染みていくと仮定をしてございます。雨が降ったらその8%が浸透していくということもございます>
→「敷地全体で8%の浸透」の仮定になっている。

結果的に以下の論理になると思われる。
(1)道路部は浸透率15%と仮定
(2)緑地部は2層構成になり、1層目は浸透率85%だが、2層目経由では最終的に15%仮定
(3)建物部は0%仮定で、全体の約半分程度が建物部
(4)道路部+緑地部+建物部の全体としての浸透率は、半分を占める建物部を0とすると、道路部と緑地部の15%が約半分になって8%と仮定
→Twitter2も、これが言いたいと思われ、当方も同様の考察になり、「8%」の説明としては妥当と考える(最終的には都の説明が必要)。

但し、上記議事録記述のように、都も「8%は仮定」としている。そして元の道路部浸透率15%自体が、国交省の資料からの机上の概算であり、「流出率80~90%(=浸透率20~10%)を単純平均して15%と仮定した」という、ザックリしたもの(苦笑)

もちろん豊洲市場の実測値ではなく、実地で証明された値ではない。但し、実測が難しいことも当然だが、先ず数値を仮定しておいて、それが他の実測値(例えば水位上昇や低下の値など)と整合性が取れていれば、仮定が概ね正しいと見ることは可能。しかし、豊洲市場では、実態と都の目論見とで大きな乖離が発生しており、仮定に間違いが有ったと考えざるを得ない状況。

それも当然と言えて、上記国交省数値で、例えば浸透率の範囲で一番低い方を取れば、10%(=0.1)と仮定される。その半分は5%であり、上記都の計算で8%→5%にすれば浸透量は大幅に違ってくる。

都側も、例えば「第3回土壌汚染対策工事と地下水管理に関する協議会」(2013年5月)において、<実際には、アスファルトで舗装されているところで 15%も雨水がしみ込むということはないのですけれども、余裕を見た設定をしている>との説明有り。この時の内容は重要と思われるので、長くなるが引用。

----第3回地下水協議会 議事録抜粋開始----
○永井課長 環境対策担当課長でございます。 
第3回の本協議会では、このシステムの最も大切な機能、地下水位を一定に保つ水位管理の機能について詳しくご説明いたします。新市場用地は、先ほど対策概念図でお示ししたとおり、底は不透水層、周囲は遮水壁で仕切られていますので、基本的には水が入ってくるというのは地表面からの雨水だけということになります。 
 
資料3の雨水排水の計画内容の平面図(下図)をごらんください。用地の大半は市場建物が占めておりまして、建物の屋根に降った雨は下水道管に流れます。用地の地下に雨がしみ込むというのは、緑でお示ししました緑地の部分と灰色で示した外周道路、クリーム色で示した場内通路などの舗装に限られます。用地全体から見ますとごく限られた部分になります。 
イメージ 3

 舗装と緑地でも雨のしみ込み方が違います。資料左の図(上図左下)をごらんください。舗装でも、降った雨のうちの 15%は地中にしみ込むという設定をしております。実際には、アスファルトで舗装されているところで 15%も雨水がしみ込むということはないのですけれども、余裕を見た設定をしてございます。一方、緑地のほうは雨の 85%が地下にしみ込んでまいります。 


 右下の断面図(上図右下)をごらんください。技術会議の提言を絵にしたものでございます。日常維持する水位をA.P.+1.8mとして、集中的な豪雨のときにも地下水位がA.P.+2mよりも上に上がってこないようにしてございます。この管理水位の差は 20 ㎝ございますけれども、この間にある土の粒子のすき間の中に雨水が入り込むということで、用地全体で約 1.2 万m3もの水をためることができます。しみ込んだ雨というのは全て地下水になりますので、この断面図に出ておりますように、揚水ポンプで汲み上げるという計画でございます。 

 次の 22 ページをごらんください(下図)。このように技術会議の提言を踏まえた上で、システムをより安全・安心なものにするために、なるべく地下にしみ込む雨を抑制するということを今、計画しておるところでございます。雨は、市場建物に降ったものはほぼ全て、舗装の部分はその大半が図に示したように下水道管に自然に流れ込みます。
イメージ 4

ターゲットになるのは主に緑地でございまして、緑地の部分は、先ほど説明がありましたけれども、きれいな土と入れかえてございますので、その部分で地下水にしみ込んだ雨を集める層を設けて下水道管に導いていきます。こうすることによって、わざわざ地下の深いところまで雨水をしみ込ませてポンプで汲み出すということがなるべくないように計画を掲げてまいります。 
 ----抜粋終了----

都は、舗装部浸透率0.15は仮定である上に、実際は15%もしみこむことはないと表明。

これに対して、「0.15」で計算して辻褄が合うとの見解を示されている方もおられるが、一般人では数値の証明などは困難で、「計算してみただけ」という位置づけになってくる。まずは都に証明を求めることが先決。都でも容易では無いだろうが、出来得る限りの詳細な見解や根拠を示す責任あり。

以上で、分かりにくかった浸透率の経緯が相当整理できたと感じている。なお、上記Twitterのお二人は、当初から検討しておられて、「Kontan_Bigcat」氏はtogetterを作成。今でも非常に参考になる内容。

その中で「farpost」さんは次のように(結果的に海は違うと思われるが)外部との繋がりの可能性を、このように早くから提起しておられた。
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最近の豊洲の地下水位上昇は降雨の影響では無い可能性大。
都によると雨水浸透率は僅か8%。(添付イラストの通り、浸透対策により緑地への降雨は100%下水に流れるため)
この数字をもとに計算すると50mmの降雨による影響はせいぜい10mm程度。
実は豊洲の地下水は海水と行き来がある? 
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今後機会が有ったら、現在のご見解などをお伺いしたいと思う。

以上
[追記]
観測水位に関しても整理が必要と思えている。中でも根本は「観測井戸の集水構造」と思う。下図のように観測井戸の「有孔管」部は砕石層より下の「AP+2.0m以下」になる。

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これに対して、例えば参考としてKi氏のTwitterが有る(紫色部は当方追記)。
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上図で、緑地部はベントナイト混合土層(BN層とする)があり遮水されているので、それを境に水の動きが異なる、いわば2層式になっている(上層+下層とする)。

両層を貫通している井戸に対しては、上図で「ウェルポイント後の砂杭、又は観測井戸穴」とされている。しかし、注意すべきは、昨年10月高水位時にはWPは全く無く、例えば最高水位5.44mになった7-①井戸は、広い7街区緑地の唯一の観測井戸。

更に、上図のように有孔管はAP+2.0m以下であり、上層の水はBN層で遮水されて観測井戸に入らない。貫通する観測井戸も、基本的に上掲のφ50タイプと思われ直径5cm、もしφ300タイプでも直径30cm。これ1本で上層から下層へ、どれだけ影響が有って、5.44mという高水位になるか。

可能性の一つは、観測井戸の周囲に配置されている可能性がある砂層だが、観測井戸1本、直径は5cmの可能性が高い。別のタイプでも精々30cmになる。水の通り道としては、緑地全体に対して非常に小さいということになる。

これに関して水谷さんの「2つの水位」の存在を指摘するTwitterが有る(図の紫色部は当方追記)。
<緑地廻りの観測井戸の観測結果は人工粘土層で囲まれた内側の地下水位とは違うのでは?→地下水位は内側と外と2つの水位が計測される。プールに洗面器を浮かべた様なものだからプールの水位と洗面器の水位は違う。>

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→但し、2つの水位が存在しても、観測井戸の水位しか公表されておらず、これは下層の水位になる(上層の水位は測定しているかどうかも不明)。ここで問題となるのが、BN層の上端はAP+4.4m(水谷さんが都に確認)で、5.44mではBN層より上になっていることは確実。上層の水位はA,Bのどちらと考えればよいのだろうか?(但し、A,Bともに上層の水位で、上層・下層の「二つの水位」の話とは別なので注意願います)
■水位A(5.44mに近い値)
■水位B(数値不明)
⇒このような基本的なところさえ、明らかになっていないと思われる。少なくとも都の資料には見当たらない。

これは緑地以外でも、最初の頃から出ていた「宙水」の論議と通じるものがある。
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当初は観測井戸の集水用スリット(有孔管使用)の認識が確実でなかったことなども有って、「高水位は宙水の影響ではないか」という見解もあった。しかし、有孔管がAP+2.0m以下では、盛土層に仮に宙水があって、その中を観測井戸が通っていたとしても原理的に観測水位には影響しない。これからの類推では、前述の緑地上層の水は「宙水」のように考えることができると思われるが、それで何故高水位が発生するかは根本的な疑問で未解明。

このように水位問題検証には相当な紆余曲折があった。本文の「浸透率」もそうで、例えば現状でもKi氏のツィートが有る。
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グラフ中の計算(①~④は当方付与)
①年間平均雨量=1718mm
②道路浸透 1.718mx152366平米x0.15/365=107.6立米/日
③緑地浸透 1.718mx36194平米x0.85/365=144.8立米/日
④合計 252.4立米/日(3街区合計)
⇒これに対して、本文で紹介した以下を②③に加味して計算してみる

■都発言「アスファルト舗装で 15%も雨水がしみ込むということはない」
国交省資料からの浸透率10~20%(低い方をとると10%)
■緑地は2層通過後0.15と都は想定の模様
②道路浸透 1.718mx152366平米x0.1/365=71.7立米/日
③緑地浸透 1.718mx36194平米x0.15/365=25.6立米/日
④合計 97.3立米/日(3街区合計)
④は 252,4→97.3立米/日に大幅減少。前者で辻褄が合う説明が有ったら、後者では成立しなくなる。
Ki氏は前者を根拠に、「主に敷地内降雨(と揚水等)で敷地内水位は説明可能」とされているが、都の見解を反映した上記計算にしてみると、敷地内降雨より揚水量がずっと多いという結果になる。

しかし、一般人では浸透率等を詳細検討する術はなく、最終的には都が完了報告で水位問題に対して、どのような確認結果を出してくるかが注目される。

追記以上