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旧コンペでの応募案途中公開

本日は新コンペ応募案の公表が予定されている。それを報じる記事が先週末に各紙出ていたが、毎日新聞の例を挙げる。
遠藤利明・五輪担当相は11日の閣議後の記者会見で、設計・施工の一括公募に応じた事業者から提出された技術提案書を事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)のホームページで14日に公開することを明らかにした。・・・事業者の決定前の段階で提案書を公開するのは異例。>

他紙でも「決定前の公開は異例」としている記事が見られたが、実は旧コンペでも事前公開は行われていた。JSCが2012年10月30日に発表して翌31日には以下のケンプラッツ記事があり、ログイン無しで読めるもの。
これには11作品が外観・内観パース付きで掲載されている。最終審査(2次審査)は11月7日実施で最優秀賞がザハ案になり、11月15日の有識者会議で了承されて決定した。
新国立競技場コンペ、11点が最終審査に”2012/10/31 ケンプラッツ

最終審査までの間に読者アンケートも実施されザハ案が1位。
読者イチ押しは「ザハ」予想は「SANAA」、新国立コンペ”2012/11/07 ケンプラッツ(ログイン要)
<読者が選ぶ最優秀案は「ザハ・ハディド・アーキテクト」――。ケンプラッツが11月7日に行われる新国立競技場国際コンペの最終審査に先立って実施した、読者による独自審査の中間結果だ。1次審査を通過した11作品の外観、内観パースを基に投票してもらったところ、2位以下を大きく引き離した。
1位はザハ・ハディド・アーキテクト。152票(28%)と圧倒的な支持を集め、2位以下を引き離した。2位はSANAA + 日建設計で96票(18%)、3位はドレルゴットメ・タネで78票(14%)>

更に審査講評も公開されている。
ザハが選ばれた理由、新国立コンペの審査講評全文”2012/11/15  ケンプラッツ(ログイン要)
<11月15日午後5時過ぎ、新国立競技場の国際デザイン・コンクールの審査結果が発表された。最優秀賞に選ばれたのは、ザハ・ハディド・アーキテクト。なぜザハ案が選ばれたのか、会見で配布された審査講評を全文掲載する。(ケンプラッツ編集部)>

途中公開が「異例」と云うのは政府関係者の発言をそのまま流したと思われる。通常は異例であっても同じ建築物の前回コンペでは行われていたのだから、これは政府側のミスリードか誇大宣伝だろう。
(注追加:デザインだけでなく総工費なども公表することに関して「異例」と言っている可能性あり…本記事自己補足コメント参照)

マスコミ側も旧コンペについて議事録非公開や黒塗り等を叩いていたが、もともと審査講評は出ていたし、読者投票でも一位になった案が選ばれたことからしても、決定過程については概ね正当だったと言えるだろう。議事録は黒塗りも無しで公開した方が良かったとは思うが、火のないところにも煙を立てようとする姿勢はどうかと思うし、逆に突っ込みどころ満載で白紙化の真の原因かもしれない構造問題は未だに殆どスルー。

結局国民自らが正確な情報を得ようとしなければ、政府と報道機関の両方から誤魔化されるという実例。民主主義を適切に行っていくことは、なかなか難しいと改めて思う。
なお、新コンペでも短期間ではあるが各紙やネットでの模擬投票が行われることは確実。また政府も意見を公募するようで、それも一種の投票になるだろう。それらの結果が実際の選定に影響するのかしないのか、するとしたらどのような形になるのか、民意の扱いと云う点で非常に興味深い。(アスリートヒアリング等も行われるようだが、やはり影響が大きいのは世論だろう、ただしアスリートの意見が世論に影響を及ぼすことは考えられる)

以上
[追記]
以前にも書いたが、新コンペで一番気になっているのが「伊東豊雄」氏の立場。和泉氏の仕切りで最初から大成建設受注が鉄板だとすると、伊藤氏はやっていられないだろう。それでも高名な同氏が参加しているということは、もしかすると和泉氏の事前調整も伊藤氏までは及んでいないのだろうか。

ちなみに隈・伊東両氏の建築実績を写真で見た限りでは、まず隈氏の「和」の手法は巨大スタジアムという今まで全く経験していない対象に通じるのだろうかという気がした。その点では伊東氏の引き出しが多そうな発想力の方が上回るかも知れない。ただし、伊東氏もコンペ要項趣旨に合わせて「和」を取り入れるとは思うが、それでも造形力は相当ありそう。
また伊東氏は旧コンペの応募案が生真面目過ぎて、かつその後は改修案推しだったので、当方は良さが余り伝わって来なかった。しかし今回は改修案も含めれば巨大スタジアムを考えるのが3回目だから、良い作品が出てくる可能性も高まると思われる。

以上単なる門外漢のイメージではあるが、世論を形成する国民も建築の門外漢のほうが遥かに多い(笑) そのような中で、和泉氏は新コンペ審査委員にデザイン関係の専門家を入れていないし、デザインの良し悪しが有っても工期・工費など他項目の点数と総合判断で大成に落札させられると踏んでいるのかも知れない。だが伊東氏がその不利な状況に挑んで、気合を入れてインパクトの有るデザインを出してきたらどうなるか。門外漢が圧倒的に多い一般国民の世論が、デザインに大きく左右されることは自明。

他には竹中との調整で、工費や工期の面で大成に及ばない応募内容にしてあるか。もしそのような調整がなくガチンコ勝負によって竹中JVになったら、納期に間に合わない確率が相当上がるのではないか。スタンド中心の新計画では大成の方が準備済みというメリットが大きく、逆に竹中の方は得意分野の屋根仕様は簡略化され、大手ゼネコン3社によるJVで迅速な意思決定が出来るか等がデメリットとして懸念される。

結局は公開される内容を見ようということになるが、まずは国民の間でどれ位関心を呼ぶかが重要。もう半ば忘れていて余り関心を呼ばないか、或いは関心が再燃するか、個人的には後者の可能性も高いと思われる。後は今まで述べてきたように和泉氏の大成落札への仕切りが有るかどうかだが、もし伊東氏デザインの方に国民支持が多く集まって、その上で大成選定すれば世論との乖離問題が起きかねない。しかし、仕切るつもりがなければ審査委員会を見え見えの国交省営繕部人脈で固める必要もないのだから、結果的には大成に持って行くと思うが、当初方針を変えて途中公開することになった影響がどのように出てくるか。

追記以上