kensyou_jikenboのブログ

yahoo!ブログの同名ブログを移行しました

登場者検証1 「ZHA」

昨日100回に達したが、これまでの経過で様々な知見も得られたので、新たな観点から旧整備計画の登場人物や組織について「登場者」として検証を行っていく。本日は「ZHA」(ザハ・ハディド・アーキテクト)
(以下項目のうち、②については間違いが判明したので[追記]で訂正と新たな問題要因追加を実施しました…2016年1月15日)

まず日経アーキテクチャ10月10日号のZHA東京事務所「内山氏」インタビュー記事は情報が多い。改めて気付いて驚いたことがあったのでご紹介。
①ZHAは「プロジェクトに関わり続けること」が至上命題だった
<設計側としては「東京五輪後に見直さざるを得ない点が多いだろうな」という予感はあった。いずれにしても、ザハ・ハディド事務所として譲れなかった条件は、当初提案したデザインを守ることではなく、プロジェクトとの関わりを絶やさないことだった。そうした意味では、JSCや設計JVを含めて、私たちの希望するデザイン・コントロールはできていた。>
→端的に言うとZHAの姿勢は「とにかく商売優先」。「デザインを守ることではない」とはっきり言っている。当方は予想外だったが、皆さんはどのような印象をお持ちだろうか。「デザインが変わってしまった」とお嘆きの専門家も多かったが、ZHA自体はそのような発想ではなく、プロジェクト関与最優先の「超現実的」姿勢だった(笑)

そしてデザイン監修だけでは売上を充分上げられないから、設計への参加を求めた動きが由利氏記事にある以下状況だったと思われる。
<東京が招致に成功すると、ザハ氏はデザイン案採用だけにとどまらず、JSCに「設計にも関与させてほしい」と要求を突きつけたという。
 JSC広報室が説明する。「ザハ・ハディド・アーキテクツより基本設計を行いたいと申し出があったのは事実です。しかしながら公募型プロポーザルで選定することが決まっており、直接随意契約することは困難なためお断りしています」
 ところがそれでもザハ氏は納得せず、結局、JSCと基本設計の「デザイン監修業務」を契約することに成功する。>
→この場合の「デザイン監修業務」は名前とは異なり設計への参加になる。実際にも基本設計の前半をロンドンで行うことになり、ZHA+アラップが実質主導したと想定される。単なる監修より、設計に深く関与すればするほど、その後の段階でもZHAを外せなくなるから売上は上がっていく。お仲間のアラップも設計JVに加えさせ、後でドイツの事務所も呼び込んだ。稼ぐテクニックを備えた大した商売人である(笑)
日本側は当初からデザイン監修だけにしてもらって、後は自分たちでやるつもりだったと想定されるので大きく目算が狂ったことになる。当方だけでなくJSCも予想外だっただろう。結果的に日本型の発注システム、例えば「阿吽の呼吸」などで考えていたであろうJSCは、重要な基本設計の前半がロンドンになったことなども併せて、コントロールが上手く出来なくなっていたのではないか。(逆にZHA側は「コントロール出来ていた」と上記で内山氏が述べている)
これが迷走の直接的出発点になった可能性有りと現在考えている(迷走の背景は国際コンペやその前からの影響も有る)。つまり、由利氏記事にある「設計段階でいくら難点が顕わになっても、ザハ案が維持され続けた。そして『十分な構造計算を行った』と自負するアラップ社を前に、もはや日本の設計事務所は口出しできなかった」という事態が発生していたのではないか。なお日建設計の絡みもあると思うので明日検討予定。
----------------

次にZHAビデオから相当重大になるかもしれない疑問点を紹介。
②並行工事メリット主張図の疑問この項は間違いがあったため訂正…下の[追記]参照
下図右のビデオではベントとスタンド間に空間があるように見えるが、実施設計図(左)で見てみるとキールアーチとスタンド(常設部分)が重なる。しかもキールアーチ外周は全体に渡って重なっているようである。この関係だとするとベントとスタンドも当然重なる。

イメージ 1

ビデオではスタンド工事用にも空間が有るように見えてZHAの主張を裏付けているように受け取れる。だが実施設計図のように重なっていれば並行工事は無理な話。ビデオ図ぐらいの空間があってもなかなか難しいと思われるが、重なっていたら論外だろう。ZHAの重要な主張が崩れてしまう可能性がある。
「ビデオの並行工事図におけるスタンドの形が実際より丸いのではないか」と前から感じていて、今回実施設計図による検証で上図の関係が分かった。丸い方がスタンドの曲がりがキツくなるので、スタンド中央がキールアーチから離れて見えていると思われる。ZHAの意図等は別途検討するとして、まず皆さんにも見ていただいて当方の検証に間違いやご指摘等が有る場合はコメントをよろしく。

以上
[追記]
「②項の訂正と問題要因追加」
②項の左図でキールアーチのベントが観客席と重なることは正しいが、右図でベントとスタンドの隙間についても存在することが認識できた。これは右図のスタンドは上中段(2~6階)だけが描かれており、1階以下の下段スタンドは描かれておらず、それを考慮すると上中段スタンドとベントの間には下段スタンド分ぐらいの隙間が有ることになる。(下図左側図の薄い黄色で塗った部分)

イメージ 2

キールアーチと上段中段スタンドの並行工事」は行えるが、下段スタンド工事はベントを除去してから行うという段階的手順となって、「(全部ではないが)2~6階スタンドはキールアーチと並行工事が行える」というのがZHA側主張と想定される。(隙間は工事対象になる上中段スタンドの大きさと比較して余り広いスペースとは思えず、並行工事に十分かどうかは疑問だが、隙間自体は存在する)
よって当方が「キールアーチのベントとスタンドが重なるので並行工事は不可」としたのは、「全面的に不可ではなかった」という理由で誤りであったため、お詫びして訂正させていただく。

ただし、並行工事自体は上中段スタンドについても動線や作業スペースでの問題が有り、やはり無理と当方は考える。

イメージ 3
上図左側は以前に示した工事中の「動線」想定図である。左右(①③)のスタンド工区と中央(②)の屋根工区がベントで分断され移動が難しくなる。ベント下の通り抜けは上で高所作業をしているのだから危険。ベントが沢山立ってくると重機など大きなものも通行困難になる。敷地に対してスタンドがほぼ目一杯作られることになるため、スタンド外側の作業スペースも狭い。
また右側図の様にZHAビデオから推測される「並行工事箇所①~⑫」を考えてみると、動線は輻湊し作業スペースの確保も困難を極めるのではないか。更にベントによる動線分断が加わる。ZHAが主張する並行工事は画餅(絵に描いた餅)に過ぎないのではないか。

追記以上