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勤務状況とトロイ開発

江ノ島の話が続いていたが、他の件も取り混ぜて記載していく。
本日はトロイ開発の件。
江川氏の初公判傍聴記事に、本事件の当初からの大きな疑問点であった「トロイ作成想定時期の勤務状況・精神状態」について、遂に被告の口から語られた内容が記載されている。

5 月、6 月ごろから業務でスランプ状態に陥りました。前年11 月からそれまで作ってきたものを土台に、新しく上から言われたとおりの改修や機能追加していくことが私の仕事でしたが、「前に作った部分に機能変更したら全体がうまく動かなくなった」「新規に作る機能部分もどこから手をつけていいのかラチがあかない」といった具合です。
・・・
バグだらけだったとしても、私なりに作業を進めていたのであり、それなりの成果物は存在するのです。是非とも、当時の私の成果物が何だったのかを確認してほしいと思います。そうすれば、当時私がiesys.exeを開発作成していたのではないことが分かって頂けると思います。

この被疑者供述について考察した。
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①開発技術者にとって「成果物がある」というのは「サボって他のことをしていた」という指摘に対する最大のアリバイ証明のようなものである。

成果物がどういう形のもので、分量と出来栄えなどの詳細もまだ分からないが、「成果物が有ります。どうか確認して下さい」と言えるのは大きい。
特に今回は一ヶ月程度でトロイ開発したというのが検察主張だが、その開発にフルに集中してもなかなか難しいぐらいの開発ボリュームであろうというのが当方の見方である。

なお、トロイ開発期間が6月末~8月20日頃というのが検察想定だが、7月27日には第一回犯行用にiesys.exeをアップロードしている。
8月20日ぐらいまでと云うと開発期間が約2ヶ月程度と云うように見えてしまうので注意が必要。
犯人は検察見立てでも約1ヶ月で初回犯行に使ったiesys.exeを開発したことになるのである。

ただし、検察はiesys.exeの開発は「遅くとも6月末までには開始」としていて実際の開発開始時期は不明だが、当方はCSRF事件の後と推定しているので6月末と考えて良いと思っている。
約一ヶ月で開発して、更に同時並行で本来業務についてもそれなりに成果物を出していくとなると、これはほぼ無理と言って良いレベルではないかと考える。

②トロイ開発の「痕跡」の話はよく出るが、本来業務の方は隠す必要はないのだから開発や試行錯誤の「痕跡」はもっと沢山残るということになる。

被疑者は本来業務をしていたというのだから、それが嘘と証明するためには、警察・検察側は被疑者PCを調べて「トロイ開発の痕跡は沢山あるが、本来業務の開発痕跡は殆ど見られない」というところまで追い込んで調べていなければならない。
これが「シロにする捜査」の最低限レベルの実施であろう。
しかし、本来業務のことはスルーで、トロイ開発の痕跡(と称するもの)を見つけたから有罪が推認できるという主張なら、それだけで捜査手法としてアウトである。

③心の問題として、仕事が原因の精神的不調(スランプ)を、原因となった仕事と同様ジャンル(ソフト開発)でもっと困難なこと、つまり「業務で使用していない言語(C#)によるトロイソフトの短期開発」にチャレンジして紛らし、困難な方を短期間で達成してしまうなどという人がいるだろうか。

いたらそれこそ天才的な人になるだろうが、天才レベルやそこまで行かなくても非常に能力が高い人なら、被疑者が一人で任されていたという仕事は多分難なくこなして不調になどならないのではないか。
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現時点での考察は以上であるが、このように少し考えただけでも余りにも矛盾が多すぎる。
そんな中で判決を出すことになる裁判官は被疑者の心のなかを推察できるのだろうか。
というのは今後証言者として出て来ると思われる派遣先上司なども、「本来業務が進んでいなかった」とは言えても、「全くやっていなかった」とは言えないのではないかと当方は推測している。

当方が得ている南青山の派遣先に関するネット情報からは、不動産関係のソフトがメインで他は殆どやっていないように見受けられる。
また以前紹介したようにオフィスもそう広くないから、上司や同僚の目からずっと遠ざかっていることは不可能。
そのような状況で、メイン業務のソフト開発を担当して、殆どやっていない状態が長く見逃されるとはとても思えない。

結局本事件で有罪にするには、被疑者が「作る能力もないし、作れる状態でも無かった」と一貫して主張しているトロイ開発を、痕跡などの証拠から「被告人が作った」と裁判官が認定出来るかどうかにかかってくると個人的には思っている。
しかし、それは人の心の中を覗く作業になるが、裁判官は云わば神の目を持って心の中を見抜いて有罪に出来るのだろうか。
また鋭い目で有罪を見抜いたとして、そのような能力を持つ裁判官が「取調問題」や「シロにする捜査問題」などは余り見ないようにして、少し苦言を呈すぐらいで不問に付し、検察側主張を認めるという行動を取るのだろうか。
今回裁判官は技術的な内容に加えて心の問題もあるから非常に大変だと思う。

以上

[追記]
kensyou_jikenbo2の方は、当方が考える本事件の公判に関する問題点と、あるべき姿と考える内容について昨日までで大体書いたので当面休載。
適宜記して行く予定で、掲載した場合はこちらのブログで告知。
追記以上