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直接・間接について(続)

本日はいよいよ初公判。どのような情報が出て来るだろうか。

その前に昨日記事について更に検討したら色々根本的な疑問が出て来たので、本記事はそれらに関して当方の現時点における個人的メモを記述。(まとまっていないので、この記事は読み飛ばしかスルーして下さい)

1.「大阪平野母子殺人事件」において昨日Wiki記述を紹介したが、実際の最高裁の判決文とは肝心な部分で用語の違いがあった。最高裁判決文「間接事実」→Wiki記述「間接証拠」)
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[最高裁判決文]
事件名                殺人,現住建造物等放火被告事件
裁判年月日         2010(平成22)年4月27日
法廷名                最高裁判所第3小法廷
・・・
4 当裁判所の判断
しかしながら,第1審の事実認定に関する判断及びその事実認定を維持した原審の判断は,いずれも是認することができない。
すなわち,刑事裁判における有罪の認定に当たっては,合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の立証が必要であるところ,情況証拠によって事実認定をすべき場合であっても,直接証拠によって事実認定をする場合と比べて立証の程度に差があるわけではないが(最高裁平成19年(あ)第398号同年10月16日第1小法廷決定・刑集61巻7号677頁参照),直接証拠がないのであるから,情況証拠によって認められる間接事実中に,被告人が犯人でないとしたならば合理的に説明することができない(あるいは,少なくとも説明が極めて困難である)事実関係が含まれていることを要するものというべきである。
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[上記該当部分のWiki記述]
直接証拠がない事件で間接証拠のみで被告を有罪とする場合は従来の基準であった「合理的な疑いを差し込む余地がない程度」から「被告が犯人でないと説明のつかない事実が間接証拠に含まれている必要がある」として検察側により高度な立証が必要と指摘した。
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2.直接証拠と間接証拠の考え方
 ⅰ.佐藤氏が1月27日会見で示した間接証拠の例(表は当方作成)
イメージ 1

 ⅱ.前述の最高裁判決文には「間接事実」という言葉は80回も出て来るが、「直接事実」は一度も出てこない。直接証拠(7回)・間接証拠(3回)・情況証拠(9回)は出て来る。(裁判官意見含む)
もしかすると、最高裁は「直接事実と直接証拠」、「間接事実と情況証拠」の様に対応させている可能性がありそう。
  それを前述の表を改訂して表すと以下になる。
イメージ 2

  更に参考として、Wikiの「直接証拠・間接証拠」の記述を示す。
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(Wiki
  直接証拠
  主要事実を直接的に証明する証拠を、直接証拠という。刑事訴訟において、被害者・目撃者の犯行目撃証言や、被告人の自白は、犯行の事実についての直接証拠に当たる。
  間接証拠(情況証拠)
  間接事実(主要事実を推認させる事実)を証明する証拠を、間接証拠(情況証拠・状況証拠)という。例えば、刑事訴訟において、被告人を犯行時刻前後に犯行場付近で目撃したという証言や、動機の存在を示す証拠は、その証拠それ自体が直接要証事実を物語っているわけではないが、「被告人は犯行時刻前後に犯行現場付近にいた」、「被告人には動機があった」といった間接事実から、被告人がその犯行を行ったという要証事実を推認する根拠となるから、間接証拠となる。間接証拠は状況証拠とも呼ばれるが、状況証拠という語は間接事実を指す語として使われる場合もあるなど、多義的に用いられるため注意を要する。
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このWiki記述の内、間接証拠(情況証拠)の項の最後の部分にある「状況証拠という語は間接事実を指す語として使われる場合もある」を、前述のWiki記述も採用しているのかも知れない。
しかし、それでは「直接証拠」は「直接事実」を指すのか。
そして、最高裁も「間接証拠→間接事実」、「直接証拠→直接事実」としているのか?
もし、そうなら用語の混乱を避けるために定義しなおして整理すべきである。

また、佐藤氏が例として挙げた血染めの指紋や金銭トラブルを最高裁が間接事実と呼ぶなら、今回の江ノ島雲取山は間接事実であるが直接犯行である遠隔操作とは関係ないので、同じ間接事実という言葉を当てはめるだけで良いのか。

色々おかしな点があるが、まず間接証拠を情況証拠と言い換えるのが問題。同じなら用語は統一すべきである(情況証拠と状況証拠も最高裁が統一すべき…上記判決文は「状況証拠」の使用はゼロ)。
その上で整理すると、「直接証拠によって認められる直接事実」、「間接証拠によって認められる間接事実」ということになるが、これでは「直接と直接」、「間接と間接」が重なって冗長になる。
それを「情況証拠」と呼び変えたり、直接事実という言葉を使わないようにして回避しているとしたら、そのような中途半端なやり方は疑問。根本的に用語を見直すべきである。今のままでは裁判員を惑わすことになるだろう。
法律用語は細かく厳密に言葉を使い分けているが、これでは一番肝心な所で曖昧さがあることになる。

今後さらに検討してみたいと思う。
なお、大体問題点は分かってきた。一例として端的に言うと「直接証拠によって認められる間接事実」という用語の使い方は有るのか無いのか?(昨日の表③に当たる)
法曹界の方々はこの問いに対してどう答えるのだろうか。
もし「有る」と答えたら、最高裁の見解もそうなのか?という疑問が出る。
「無い」と答えたら、論理的に問題になってくると思われる。

例えば、証明方法において「直接証明と間接証明」という分け方が出来ると思うが、それに対応して「間接事実の直接証明と間接証明」という分類の仕方が無いと論理的におかしい。
そして「直接証明・間接証明」と「直接証拠・間接証拠」はどう対応するのか?或いは対応するのかしないのか?
まさか日本司法の最高峰「最高裁判所」の論理構築や用語の使用法がおかしいなどということはないと思うが(おかしい気もするが・・・)、疑問点をまとめて最高裁に質問してみようかと思う。
裁判員になる可能性がある一般人の事前心得の一環として聞けば、教えてくれる可能性もあるだろう。

ただ、本事件の決着が付かないと纏める時間が取りにくいが、決着は果たしていつになるのだろう。
(日本においておかしな論理がまかり通っている場合は、海外から考え方を持ってきたと時に換骨奪胎したり、不適切な用語翻訳があったりすることが多いので、海外事情まで調べる必要が出て来て時間がかかりそう)

以上