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28日の佐藤弁護士の説明に関して

佐藤弁護士は論理がしっかりしていて、頭脳超明晰と云うことがダイレクトに伝わってくる。
しかも発信力があるから、この人がいて今回の事件がより注目を浴びていると云って良いだろう。
今後も検察から出てくる証拠(と称するもの?)にどんどんツッコミを入れて行って
いただけるものと期待している。

ただ、28日の会見で気になったことも2点ほどあった。

佐藤弁護士は文科系ながら、パソコン黎明期にBASICで少しプログラムをやって
みたこともあると最初の頃の記者会見で紹介していて、技術的内容においても
概ね的確に説明しておられるのは見事であるといつも感心している。
しかし、やはりソフト開発の現場をよくお知りになっているという立場ではないので、
技術者の観点からすると、少し解釈が違うと感じられた内容があった。

一つ目は、被疑者のC#に対する能力に関することである。
佐藤弁護士は記者会見で以下のように述べている。

「弁解録取の調書で被疑者が述べたと書かれているのは次の様な内容である。
『業務はアプリケーション開発で、主に使用しているプログラミング言語JAVA
他に使ったことがあるのはC++C# で、C++はアプリケーション開発に使ったことがあり、
C#は他の人が作ったプログラムのテスト作業を行う時に使ったことがある』。
しかし、被疑者の言った正確な内容は『C#を読むことは出来るが、C#でプログラムを
書くことは出来ない』であり、これは調書に書かれていない」

これを分解すると、以下の二つの表現の問題になる。
(1)C#は他の人が作ったプログラムのテス作業を行う時に使ったことがある
(2)C#を読むことは出来るが、C#でプログラムを書くことは出来ない

佐藤弁護士は被疑者のC#に対する能力を表す際、以下の関係と理解しておられると推察する。
(1) > (2) ・・・(1)の表現の方が能力が高いと云う想定
これにより、「(1)の表現を調書に書いたのは、被疑者のC#の能力を高めに見せるためである」と
考えておられると思う。

しかし、ソフト開発の現場での能力評価は、一般的に以下のように受けとめられている。
(2) > (1)
これは、テスト作業の多くは、まだプログラミング能力が低い技術者の担当になる場合が
多いという事情からである。このように現場には特有の文化のようなものがある。

ただ、今回の場合はどちらの表現でも最終的には「被疑者のC#使用能力では今回のトロイを
作成するのは困難である」という主張になるので大きな問題になるとは思わないが、
ソフト開発現場の根本的な事情から来る話なので一応気にはなる点である。

2つ目は、アクセスログの件である。
佐藤弁護士は「(被疑者が)C#で開発してたら、(被疑者の)PCからC#で書いたプログラムが一つでも
見つかるでしょう」という趣旨のことを何度も強調しておられた。
PCの場合は途中経過などでもファイルなどが残ることを良く知っておられると思われるが、
他方「アクセスログが残っているでしょう」と云う話は一度も出なかった。
(アクセスログの話の方がやや専門的になるので、会見に来ている記者たちに合せて、
 今回は出さなかったのかも知れないが)

IPアドレスのことは当然知っておられると思うので、アクセスログもご存知で、
最終的にはアクセスログの件も正面から打ち出して来られると思われるが、
バックにどれぐらいネット関係のソフトに詳しい人が付いているのかがこれに関連して気になった。
検察・警察側には専門部署と専門捜査員も多数いるので、弁護側も能力の高い技術系の人が
付いて貰いたいものである。

なお、PCに残る証拠という点では、被疑者は12月初めころから休職していたので、
休職に入る際にPCを初期化したのかどうかという点が気になる。
この点は報道やネット上でも触れているのを見たことがない。

自宅PCは昨年Windows8が出たのに合わせて、インストールしたということで、
ある程度は初期化された部分があることになる(ドキュメント等は消えない)。
しかし、検察がトロイやフリーソフトを作成し、遠隔操作も行なったと見ているのは
派遣先PCのようなので、それが初期化されているか、されていたらどれぐらいかは
非常に重要になる。
アクセスログを消したり改ざんすることは派遣先のシステム担当者以外は困難であろうが、
自分が使用していたPCの中身に関してはある程度のことはやろうと思えば出来る。
ただ派遣先からの貸与であるから、どこまで制限があって、どこまでやっていたのか。
この辺の情報も今後出てくることを期待したい。