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警察報告書から見えてくるもの

昨年12月に昨日紹介の大阪府警を含む4都府県警察から検証報告書が公表されている。
その題名を列記する。
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横浜市立小学校に対する威力業務妨害被疑
事件における警察捜査の問題点等の検証結果
インターネットを利用した犯行予告
ウイルス供用事件の検証結果
3.警視庁
インターネットを利用した犯行予告事件に
おける警察捜査の問題点等について
インターネットを利用した犯行予告・ウイルス供用事件
伊勢神宮に対する威力業務妨害事件)の検証結果
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4都府県警察の内、大阪府警三重県警は題名に「ウィルス供用事件」と入っている。
この2つの警察における今回の事件の罪状は、犯行予告による「業務妨害罪」とその手段である遠隔操作に関する「ウィルス供用罪」となっていると考えられる。

そうなると、遠隔操作を行った犯人を逮捕してウィルス供用罪と業務妨害罪に問えば目的達成になる。
犯人から犯行声明が出ていて、遠隔操作を行ったと明記しているのだから供用罪にも容易に問える。
よってウィルス作成罪立件をこの2警察は特に求めなかった可能性があるのではないか。

ではどの警察がウィルス作成罪で立件するか。
神奈川県警はCSRF事件なのでトロイではないから別扱いになってウィルス作成罪担当は不適当。
では警視庁か。警視庁なら一番捜査能力はあるし、適任とは言えるだろうが、今回トロイを発見したのは三重県警と大阪府警である。
被疑者が東京住まいとはいえ、トロイを発見した両警察をさしおいて(警察内部論理的に)警視庁といえども出張れるか。
そう考えると警察側としては、「ウィルス供用罪で良いではないか」ということになりそう。

ウィルス作成罪をどうしてもやろうとしたらどうなるか。
警察は4警察合同捜査本部だったが、検察は東京地検に一本化されている。トロイも基本は共通だから、各警察は供用罪立件で充分としても、事件の重大性に鑑みてウィルス作成罪を東京地検が立件してくれるのが一番良い。
警察側からはすんなりここまで来そうだが、当の東京地検はどうか。
「合同捜査本部が作成罪まできっちり立証して送検してくれば当然やるが、中途半端な間接証拠ばかりで『後はよろしく』と言われても困る」という状況が考えられる。
それで検察側もウィルス作成罪の立件は見送る。
「ウィルス作成罪立件せず」の謎がこれで説明付くかもしれない。

このような流れで、本事件での検察と警察の関係も考えてみる。
合同捜査本部も解散して、検察側から見たらどこが窓口かよくわからなくなる可能性がある。
府警報告書で見えた信じられないぐらいの凄まじい縄張り主義を考えると、検察側も対応に困るのではないか。
また、同じ大阪男性による犯行とされながら、大阪市役所は府警・日航は警視庁と担当が分かれたようである。
しかし、三重男性の場合は、伊勢神宮だけでなく京都の任天堂三重県警だった模様。
合同捜査本部ではどういう担当になっていたのだろうか。

分かりにくさもあって検察側は警察に確認するのもやめて、弁護側が新たな事実や論点を持ち出してきてもとにかく手持ち証拠だけでやる。
警察を指揮できると云っても、実際は依頼してやって貰うことになるから追加捜査もやらない。
全くの独自捜査なんて特捜でも無いのに出来ない。
最終的に、手持ち証拠は警察が集めたものだから、それで立証できなければ警察側の証拠収集不足となる。
このように考えたら、検察側の姿勢や警察との関係の謎が説明付くのではないか。
個人的には理解出来てきた感じがしているが、憶測レベルで裏付けは困難であり、さて実際はどうだろうか。

なお、佐藤氏や木谷氏は経験や人脈を活かして、検察や警察の内情をある程度掴んでいるのではないだろうか。
今回の検察や警察の対応についてどのような情報が入っていて、どのような見方をしているのだろうか。

以上
「追記]
日航機予告に関しては、警視庁の以下の報告書でも全く触れられていない。
警視庁の報告は福岡男性の件のみである。
結局日航機予告の捜査はどうなったのか、警察の報告書では全くわからないことになる。
そして、大阪男性A氏は大阪市役所の件の業務妨害罪だけでの起訴である。
今の容疑者はハイジャック防止法違反罪でも起訴されて、その罰則規定が業務妨害罪より重いため保釈の適用規定も変わるし、最終的に求刑にも影響してくると思われる。
しかし、日航機予告の犯人でもあるとされたA氏はハイジャック防止法では逮捕報道も見当たらず、日航機予告では起訴どころか逮捕もされていない可能性大ということになる。不思議な話である。

また、警視庁の報告書のP2下方に以下の記述がある。
<9月27日(木)、甲さん(福岡男性)のパソコン内から、大阪府警察・三重県警察で捜査中の犯行予告事件で押収されたパソコンから発見された遠隔操作を可能とするウィルスと同名のプログラムの起動履歴を発見し、検察庁は、同日、甲さんを釈放した。>

昨日府警報告書に、<復元作業により「iesys.exe」という名称のファイルが存在した>という旨の記載があることを紹介した(「iesys.exe」そのものかどうかは不明)。
警視庁報告書では、「起動履歴」が発見されたとある。
iesys.exe」は「suica」コマンドで消去しても、色々痕跡を残すようである。

追記以上