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池田信夫氏らアゴラの面々と「合意形成」に関して

池田氏ブログにて以下の記述有り。
<「法律」と「条例」と「行政指導」と「合意事項」と「議会答弁」の区別がついていない>
→他の方のツィート等も含めた文脈から、多分当ブログへの記述と想定し、これについて書いてみる。ただし、深い内容になるので本日のところは「合意形成」を中心に取り上げる。

池田氏豊洲での「合意形成」に対して以下のツィートをしておられる。
池田信夫@ikedanob 反対派は科学的根拠も法的根拠もないことは認め、合意形成がなんちゃら信義則がなんちゃら言っているが、地元との合意をパーにして信義則を踏みにじったのは小池知事だ。>1月24日 
→この辺も含めて、豊洲の合意について整理しながら考察してみる。

1.合意形成と破棄に至る経緯の超概要
最終的な移転合意には、その基盤として安全性面で次のような約束があった。そして議会答弁や各種資料などで繰り返し実行を確約していた。
(1)操業由来汚染の完全除去
(2)法令を上回る二重三重の対策 
(3)指定解除

これは生鮮食料品を扱う巨大卸売市場であることと、深刻な汚染が明確になった用地という特殊条件を勘案し、行政が法令を上回る対応を約束することは、世論の納得を得られるであろう。(ちなみに都側は土対法だけでなく東京都条例等もあるから「法」と「法令」という用語が混在し、実際に中央市場HPに解説もある)
イメージ 1

都側も達成に自信があったから、議会や公表資料などで繰り返し実行を公約。その結果、反対する人がいても大方の納得性と業界との合意は得られて移転直前まで進行していた。

ただし、安全性面以外も含めて様々な課題があった。それらが都民に充分知らされていなかったという背景があり、都民の側も日常の多忙で行政の細かいところまで考えることは困難。そこに小池知事の就任という新たな事態が生まれた。

知事の立場は行政情報を詳しく知り得る。また小池氏は就任以前から共著書でも移転問題を取り上げていて、関心も情報も豊富だったと思われる。同氏から見ると移転問題は、まだまだ課題があった。中でも重要な安全性に関して、上記③から外れる「2年間モニタリング完了前に開場予定」という点に着目し延期を表明。また、単にモニタリング結果を待つだけでなく、市場問題PTの設置で幅広く検証を行うこととした。

2.破棄に対する小池氏の責任
前項のように経緯をまとめてみれば、延期判断には納得性があり、延期への世論の支持が高い理由も分かる。ただし、結果として「市場関係者との移転合意」を一方的に破棄する形になった。このことを池田氏は批判しておられると思う。

しかし、単に破棄だけでなく、責任を果たすために補償を約束。補償額等で納得が得られるかという課題は有るが、取組みは進んでいて提示も行われる段階に来ている。

ただ、池田氏は「合意をパーにしたのは小池知事」としているが、小池氏は③の約束を守ろうとしたわけである。よって根底にあるのは就任以前からの東京都側の責任で次項で述べる。

3.東京都の責任
延期表明後に、盛土問題の発覚とモニタリング分析値NGがあり、都側が①②も守っていなかった事が判明。約束が合意の前提だから、小池氏になる前から都側は実質的に合意破棄を行っていた。都側の責任はどうするのか?ということになる。結果的には小池氏指示で都側による2回の検証が行われ、責任者を挙げて処分が行われた。

しかし、業界と都側の信頼が大きく損なわれたダメージは、この処分ぐらいで回復するレベルではない。更に、約束違反の状態を解消する責任がある。しかし、まだ対応策が決定していない。

これに対して、池田氏主催アゴラから宇佐美氏や宮寺氏などによる(池田氏補強の)主張も出ている。例えば宇佐美氏のブログ。
<これに異論を唱える政治家や評論家は全て、何らかの政治的意図を持っていると言っても過言ではありません。ただこの問題は科学や法律を超えてすでに政争化しており、・・・>

「法律を超えて」というのは①~③の約束によるもので、それを「政争」という言葉で何か別の意図があるかのように匂わせるイメージ操作。確かに都議会でも各党各派の争いはあり、都知事も色々変わった。しかし、それらを経て残ってきた約束であり合意の基盤。移転で再合意取り付けようとするなら約束違反状態の対応も必須となる。次項で言及。

4.再合意形成
上記(1)~(3)を対応しようとすると、前記事で述べた以下のような課題が挙げられる。
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①換気追加…専門家会議が提言することは確実
②5街区砕石層…むき出しのままか?コンクリート敷設追加か?
③空間床コンクリート…防水にするのかしないのか?
④地下水管理システム…水位未達成、豪雨の時期も未経験で能力未確認
⑤盛土再汚染調査…砕石層超えの水位上昇による再汚染懸念に対して調査するか?
環境アセスメント…盛土有りで記載、やり直しの範囲・期間は?
⑦再モニタリング…基準超え箇所はモニタリング2年追加?2年クリヤは開業条件?
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池田氏・宇佐美氏・その他の「現状全肯定派」とでも云うべき人たちは、「問題・課題が無い」という立場になり、これらについて言及する必要がなく楽である。「安全は証明済」「盛土無しが正解」等の現状全肯定主張は現実の問題・課題無視の不誠実極まりない見解を正当化する手段になる。ここに彼らのカラクリがある。

それに対して①「換気追加」は既定方針だから、この点からでも考えてみれば欺瞞が分かる。
現状全肯定なのに換気追加はどう位置づけるか? 例えば「現状が正解だけど追加もOK」wなどと答えても②~⑦がある。②「5街区砕石層」・③「空間床コンクリート」は結構厄介。防水コンクリートの追加敷設が必要かどうか? 

やらないと、水位がなかなか下げられず能力未確認の④「地下水管理システム」が上手く行かなかった場合に、「また水が溜まるのか?」ということになる。追加したら工事費と期間が課題になる。更に換気も併せて、「追加対策が色々必要では根本的に大丈夫なのか?」と、現状の問題点に世論も気付いてくる。

結果的に「豊洲は未完成状態で、完成時期の目処も示しにくい中で、再合意可能か?」というのが当ブログの問題意識。都側への信頼が崩れている問題も大きいし、これだけ知られた状態では合意に当って業界だけでなく市場の最終顧客の意向でもある一般世論の納得性も必要。

翻ってアゴラでは、移転推進の論陣を張っている一人に維新「あだち康史」議員がおられる。次のように合意形成の重要さは認めているが、対応は知事としている。
<あだち康史@adachiyasushi 卸売業者との間で新たな合意形成をはかることは、都知事の仕事そのものだから、早く始めた方がいい、というのが私の考え。 いまの小池都知事は、まったく逆方向に動いてるようにしか見えない。> 1月24日  

小池氏に①~⑦等の課題を対応して、早期に農水大臣申請し承認得るよう求めていることになるだろうが、非常に難しい話。安全面以外にも市場PTで出て来ているような多数の課題が有る。当初からの反対も根強い。築地との比較はあり得るが、その場合は前述のように豊洲を完成状態に持っていける具体的方策と時期の明示が必要。

結果的に、多くの関係者を説得して移転での再合意形成は、今や誰がやっても困難ではないかと当ブログは見ている。それに対して、あだち氏やアゴラの面々は無理難題を押し付ける主張で、小池氏批判に結びつけることができる。万が一小池氏が移転を実現したら、「ほら言った通り」と手柄化できるw  どっちに転んでも上手い方法と思っているかも知れないが、都民・国民の目は鋭いですよ。

以上
[追記]
当方のTwitterの方に池田氏と森山氏のやり取りに関して次のツィートがあった。
<(池田氏が)森山氏に詰め寄って森山氏が返答をのらりくらり避けていたところを論じていただきたいと思っています。>1月25日

これのことだと思われる。
池田信夫@ikedanob 引っ越しに反対する自称「建築エコノミスト」の森山高至さんに「豊洲と築地のどっちが汚いんですか?」と質問したんですが、いまだに答えてくれません。こんな人が東京都の専門委員として知事にアドバイスするのは困ったものです。>

しかし、ツィート頂いた方も池田氏も「PT委員だからこそ答えられない質問」ということぐらい分からないのだろうか。余りにも自明すぎて論じるまでもないし、頭脳明晰な池田氏は一体どうしてしまったのか。

それとアゴラは豊洲問題に関して、今月だけでも池田氏・宇佐美氏・あだち氏・宮寺氏などの同じような論調の(拙劣な内容の)記事を掲載。設立当初の高邁な理念はどこに行ったのだろうか。
<当サイト(agora)は個人ブログではなく、複数の専門家による「言論の市場」を提供することによってウェブ上の言論を活性化し、専門家と一般市民をつなぐことをめざすものです>

活性化には複数の論調が必須だろう。「言論の市場」でPV数稼ぎの目玉として小池批判を絶賛展開中なのか。運営上の理由などもあるだろうが、著書の一読者として設立趣旨も大事にして頂くことを望みたい。

追記以上