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 隠れた真実4 「取調問題とアリバイ」 5「真犯人メールが無かったら」

■隠れた真実4  「取調問題とアリバイ」
当方は当初よりアクセスログと並んでアリバイに関心を持ってきた。
本事件はタイムスタンプの有る記録が多い。「したらば掲示板」アクセスのみならず、Dropbox2ch書込代行、google検索履歴、ファイル更新日時など種々あって数も膨大である。これらは基本的に手動なので、該当時刻にPCを操作できる環境にいる必要があるから、アリバイ成立可能日時も非常に多くなる。佐藤氏も言っていたように、一つでも成立すれば検察側立証は窮地に追い込まれることになった。

それに対して被告人がどのようなアリバイ主張を行うか注目していたら、結果的には鹿島合宿一つ。これでは余りにも少なすぎると考えていたら、何と合宿アリバイのSDカード更新日時が改ざんと、第17回公判で弁護側の野間氏から明かされた。
これには唖然としたが、アリバイ問題の重要性を再確認させてくれた。当方がこれもずっと指摘して来た取調問題と併せて考えると、それが更にはっきりする。

犯人である片山氏には当然ながら実際にはアリバイが全く無い。その状態で取調べが行われて、アリバイを一つ一つ尋ねられたらどうなるか。そのような場合の片山氏反応に関しては既に以下の野間氏発言がある。
”嘘(虚偽)の見分け方 ”2014/8/25
<----神保氏:片山氏とのやりとりで、説明に矛盾があったり、辻褄が合わないようなところは無かったか?
野間氏:アリバイを主張するようなところでも、何か言葉を濁すところが幾つかあり、そういうところはデータ上はあやしい方向、検察側に有利な方向で指し示しているのは幾つかあった。それは解消されなかった

つまり、もし取り調べが行われていて片山氏がアリバイを問われたら、最初は言葉を濁し、更に問われていったら、もはやずっと黙っているしかないだろう。
彼は自分の知っていることはよく話すし、公判でもよどみなく答えている。それがアリバイを聞かれたらだんまりでは落差が際立ってしまう。

しかも、「録音取調べが行われたら黙秘はしない」と宣言してしまっているのに、黙り続ける状態が録音されてしまう。これでは早晩白状するしか無いし、仮に持ちこたえても裁判官が録音を聞けば、黙秘ではないのに黙らざるを得ない状況ということで「やましいところがある」という心証を形成するのは当然である。
取り調べしてアリバイ追求すれば、間違いなく本事件は逮捕後早期に収束できた。録音取調べを拒んだ検察側の責任は大きい。

■隠れた真実5  「真犯人メールが無かったら」
「真犯人メールがなくて、あのまま裁判が続いていたら判決はどうなったか」という点では現在も意見が分かれていると思う。
「弁護側も全同意した数多くの証拠とそれまでの公判での検察側立証で有罪になっていた」という見方があるし、「それらの証拠や立証は有罪にするには不十分で無罪になったのではないか」という見方もある。
本事件を取り上げていた著名人では、江川氏は有罪になっていたという見方を示した。神保氏は裁判に出ていた証拠では有罪に出来ないという見方をシンポジウムで示していた。

当の片山氏は五分五分で、佐藤氏は当然無罪確信。当方は本年5月8日と9日記事で情勢検討を行ない、「公判が始まって証拠が出てきてからは、予想以上のデジタル証拠の多さでクロの可能性のほうが高くなった」という見解を示した上で、「被告人・弁護側はSDカード履歴による鹿島合宿以外にも、時刻偽装が困難なサーバーアクセス履歴等に対するアリバイがもっと必要」という具体的注目ポイントを挙げた。

ただし、当時の裁判の行方に対する情勢検討において、当方は5月で検察側立証が終了して次に弁護団の本格的反証が始まる予定だったことを踏まえて、以下の検察側主張2点に対する弁護側反証にも注目していた。
 (1)乙社での開発状況…iesys開発想定期間に殆ど業務をしていない
 (2)雲取山…12月1日「頃」に雲取山USBメモリを埋めた

(1)に関しては片山氏の初公判冒頭陳述で以下のような発言があった。
<検察官の証明予定事実にはそのあたりの期間、「業務にほとんど従事していなかった」とされていますが、決して遊んでいたわけではなく、あくまで本来の業務を試行錯誤したり、前のものを作り直して後退したりと、苦しんでいました。>
<バグだらけだったとしても、私なりに作業を進めていたのであり、それなりの成果物は存在するのです。是非とも、当時の私の成果物が何だったのかを確認してほしいと思います。そうすれば、当時私がiesys.exeを開発作成していたのではないことが分かって頂けると思います。>

これの裏付けとして、第17回公判で野間氏から乙社業務に関する調査報告があった。
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・検察側はSVN(バージョン管理システム)のログ行数が6月7月は少ないことを重要視しているが、元々SVNの行数は作業量に比例しないし、更に5月までは担当2人で6月から片山氏1人になったという事情がある
・実際にやっていたかどうかを見たら、JavaのログがPC内に残っていて、作業していたことは理解できた
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野間氏は「業務作業していたことを証明できる」と見たようである。更に片山氏の云う「それなりの成果物」の具体例を聞いて探せば、開発が進捗していたかどうかは別にしても、膠着状態での試行錯誤やテストの結果が出て来たのではないか。
検察側は乙社業務状況について、SVNログの表面上の変化などを過大視して実態と違う「業務を殆どやっていない」という主張をしていたことが推測され、野間氏が業務実行の証拠を出していくと窮地に追い込まれた可能性がある。
そうなってから「自宅でも開発していた」と言い出しても後付けになるし、自宅PCはクリ-ンアップされているから証拠は出ない。検察側は最初から、「被告人が証拠隠滅をしてあるので自宅PCに証拠は無いが、全体的状況から自宅でも開発していたと推認される」と言っておけば良かった。昨日書いたように「詭弁」ではなく、こういう「真っ当な論理」を主張すべきと思う。

(2)雲取山の方は、12月1日「頃」という曖昧な主張を検察側は続けていて、ヤマレコ写真や登山者聴取でも片山氏が12月1日に埋めた、或いは埋めることができたとは立証されなかったと推測される。
そして片山氏も保釈後会見で以下のように自信を見せており、これを崩せないと検察側は相当不利になると当方は見ていた。
<(無罪根拠で一番自信のあるのは)雲取山ですね。埋められなかった。スコップなんか持ってなかった。山頂に複数の人がいて、それなりに交流もあって、人が横で鍋出している所で穴を掘っていたら目立ちますよ。私が滞在してた3、40分に、最初は3人、多い時には6、7人にはなっていて、山頂で一人になったことはない。>

更に雲取山では山頂行動の真実が未だにはっきりしないことは、当ブログで詳細検証済み。少なくとも10:51写真に穴が写っているかどうかの検察側見解は求めるべきだったと思うが、実施されないまま結審になった。もし裁判があのまま続いていたら、警察・検察側は片山氏が40分程度も放置したという掘った穴も見つけられなかったのだから、被告人有利となっただろう。

以下の2点も当時は被告人・弁護側有利の証拠と見ることが出来ていた。
 (3)江ノ島セロテープDNA…片山氏以外のDNA付着(実際は偶然だった)
 (4)SDカード更新日付の合宿アリバイ…検察側が「改ざん可能性」の主張にとどまったなら被告人有利も考えられた(実際は改ざん履歴があった)

加えて、検察側立証の柱であったファイルスラックは(或る程度まで)反論可能と云うことも併せると、無罪もあり得たと当方は考えていた。
また世論も分かれていたから、裁判官としても検察側が(1)~(4)に明確な反証が出来ない場合は、それを残したまま裁判官の独自判断で有罪にすることは難しいと考えて、証拠・立証不十分で無罪にする判断はあり得たと思う。ただし、結局は自由心証によるということになる。

以上